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登記簿謄本の取得方法 オンラインでの方法についても解説

この記事の監修

大崎麻美
司法書士、FP技能士2級、宅地建物取引主任者、シニアライフマネージャー

日系エアラインのCAを経て30代で司法書士資格を取得。2012年あさみ司法書士事務所を設立。実需・収益不動産・商業に関する登記実務、終活のサポート業務を行う。2022年末より海外に移住。移住後は、実家じまいの情報発信サイト「実家じまい完全攻略ブログ」を運営。法律・不動産専門のライターとして活動。

住宅ローン控除のための確定申告や、住宅ローンの審査の際に「登記簿謄本」という言葉を初めて耳にする方も少なくないでしょう。登記簿謄本は「謄本」「登記事項証明書」など呼びかたも複数あり、どの書類のことなのか混乱しがちです。

本記事では「登記簿謄本」とは「どこで、どのように、いくらで取得できるのか」について説明します。取得時の注意点や取得できないケースについても解説します。最後までチェックしてスムーズに登記簿謄本を取得しましょう。

不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)とは何か?

不動産の登記簿謄本の説明をする前に、そもそも不動産登記とは何のことかを理解する必要があります。

不動産は重要な財産なので、これまでは法務局が帳簿(登記簿)にその所在や面積、所有者の住所や氏名を記載し管理していました。今ではコンピューターで管理をしています。そうすることで、不動産の取引の安全性や公正性を図っています。この帳簿(登記簿)に、不動産に関する様々な情報を記載する手続きを「登記」と呼びます。

この法務局が管理する帳簿=登記簿を複写したものが登記簿謄本です。登記簿謄本には、不動産に関する物理的な情報から、所有者の変遷など権利関係の情報が記載されています。つまり不動産の履歴書とも言える書類です。登記簿謄本を確認すれば、いつ建物が建ったのか、今の所有者がどこの誰なのか、相続によって不動産を取得したのか、売買によって取得したのかもわかります。「どこの銀行でいくらの住宅ローンを組んだかも記載されている」と聞くと、驚く方も多いでしょう。

登記簿謄本と登記事項証明書は同じ書類?

登記簿謄本の概要を説明しましたが、一方で登記事項証明書という呼び方を耳にすることがあります。では、登記簿謄本と登記事項証明書は異なる書類なのでしょうか。結論から言うと登記簿謄本と登記事項証明書が証明する内容は同じです。

元々、登記の内容は法務局にある帳簿に記載して管理をしていました。紙面でアナログに管理をしていたのです。この紙で管理していた帳簿の複写したものが「登記簿謄本」です。

しかし、現在は登記の内容をコンピューターで管理しています。そして、このコンピューターに記録された内容を、用紙に印刷したものが「登記事項証明書」です。

つまり、「登記簿謄本」も「登記事項証明書」も証明されている内容は全く同じものなのです。一目でわかる違いは、登記簿謄本は縦書き、登記事項証明書は横書きの書類という点です。

金融機関から「登記簿謄本」を用意するように言われたものの、法務局で発行された書類は「登記事項証明書」。それぞれ異なる呼称で言われると混乱してしまうことでしょう。その場合も、登記事項証明書を提出すれば大丈夫です。これは昔の名残で「登記事項証明書」を「登記簿謄本」と呼んでいるケースが多いために起こりうることなのです。一方、縦書きの「登記簿謄本」がなくなったかと言えばまだ存在しています。コンピューター化される前の登記の内容を確認する場合や、コンピューター化できなかった一部の不動産に関しては、「登記簿謄本」を取得します。

登記事項証明書(登記簿謄本)は4種類

登記事項証明書には、証明する内容によって4つの種類があります。

  1. 全部事項証明書
    不動産の登記の内容が全て記載されています。金融機関や官公庁に登記事項証明書を求められた場合は、全部事項証明書を提出しましょう。
  2. 現在事項証明書
    現時点で効力のある事項だけが記載された証明書です。以前の所有者の情報や、すでに抹消された抵当権の情報などは記載されていません。
  3. 一部事項証明書(何区何番事項証明書)
    不動産の登記の内容の一部を抜粋した証明書。複数の人が共有している不動産の、特定の人の権利関係のみを抜粋できます。私道部分で共有者が多数いる場合や、マンションの敷地に多数の共有者がいるような場合に請求します。ところで世帯数の多いマンションの、土地の全部事項証明書を請求するとどうなるでしょう。膨大な枚数のまるで雑誌のような登記事項証明書が発行されてしまいます。手数料も加算され、確認したい事項を探すのも一苦労です。注意点として、一部事項証明書はオンライン請求では取得ができません。窓口請求または郵送請求でのみ取得できます。
  4. 閉鎖事項証明書
    閉鎖事項証明書は既に閉鎖された登記記録を記載した証明書です。登記記録が閉鎖されるのは「建物が取り壊された時」や「土地を合筆し、地番がなくなった時」などです。1の全部事項証明書を取得しても記載されていない過去の登記記録を調べ、証明する場合に必要になります。

登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている内容は?

登記事項証明書(登記簿謄本)は、大きく次の4つに区分できます。

表題部不動産の物理的な情報不動産のスペック的な事項
土地=所在・地番・地目・地積
建物=所在・家屋番号・種類・構造・床面積
権利部(甲区)所有権に関する情報
仮登記・仮処分・差押に
関する情報等
所有者に関する内容
所有者の住所、氏名、所有者になった原因
過去の所有者も記載されている
権利部(乙区)抵当権(住宅ローン)情報
所有権以外の権利の情報等
主に抵当権に関する内容
金融機関の住所・商号
借入額や利息、損害金
債務者の住所・氏名など
共同担保目録同一の抵当権が設定された
不動産の情報
同一の抵当権が設定されている不動産の所在・地番・家屋番号

第三者が所有する不動産であっても、費用さえ払えば登記事項証明書を取得できます。所有者の住所氏名や住宅ローンの額など、詳細な内容まで公開されているため、不安になる方も多いかもしれません。なぜこのような、一見すると個人情報保護に逆行するような情報が公開されているのかといと、不動産取引の安全性と公正性を保つためなのです。

例として、あなたが不動産を購入しようとしていると仮定します。登記事項証明書に所有者の住所はなく、名前のみ記載されていた場合はどうでしょう。所有者だと信じていた人物が、同姓同名の他人で、本来の売主ではない可能性もでてきます。

売主から買主に名義を変更する所有権移転登記の際は、売主の印鑑証明書の提出が必要です。印鑑証明書には氏名・住所・生年月日が記載されています。印鑑証明書の氏名・住所と登記事項証明書の氏名・住所と実印の印影が完全に一致すれば、本物の売主であると確認ができます。

このように、登記事項証明書は安全で円滑な不動産取引のため、不動産に関する詳細な情報が記載され、誰でも取得・閲覧が可能となっているのです。

登記簿謄本を取得する方法

登記事項証明書の取得方法は3つの方法があります。それぞれのメリット・デメリットや取得にかかる時間を確認しましょう。

郵送申請をする方法

登記事項証明書は郵送で請求することができます。郵送申請のメリットは直接法務局に行かずに済み、法務局への交通費が不要なことです。一方デメリットは登記簿謄本が手元に届くまで時間がかかること、収入印紙を郵便局やコンビニ、法務局で購入する手間があることです。不明点を法務局の証明書係の方に相談ができないのもデメリットといえるでしょう。

必要事項を記入した登記事項証明書交付申請書、請求する登記事項証明書1通あたり600円の収入印紙、切手を貼った返信用封筒を法務局の証明書窓口宛に送付します。発送時間にもよりますが、おおよそ2~3日中に手元に登記事項証明書は到着します。ただし、法務局は土日祝日に閉庁しているため、土日祝日を挟む場合はさらに到着に日数がかかります。

窓口申請をする方法

窓口申請は最もオーソドックスでよく知られている方法です。窓口申請のメリットは即日で登記事項証明書を取得できること、疑問点も証明書係の方が対応してくれることです。デメリットは平日の8時30分~17時15分までに法務局で手続きをする必要があること、交通費がかかることです。

申請方法は必要事項を記載した、登記事項証明書交付申請書を証明書窓口に提出します。登記事項証明書交付申請書は法務局に置いてあります。法務局内にある印紙売り場で、1通600円×通数分の収入印紙を購入し手数料を納付します。法務局の混み具合にもよりますが、15~20分程度で登記事項証明書は発行されます。

オンラインで申請する方法

一番おすすめなのがオンラインで申請する方法です。「登記・信託オンライン請求システム」のかんたん証明書請求というメニューから申請します。メリットは通常1通600円の手数料が480円~500円と安くなること、法務局や郵便局へ行かずに済むため交通費もかかりません。デメリットは最初のユーザー登録だけが少々手間な点。とはいっても登録のみなら5分もあれば登録できてしまいます。

オンラインで登記事項証明書を取得する流れを確認しましょう。

  1. 「登記・信託オンライン申請システム 登記ねっと 信託ねっと」にアクセスし
    申請者情報の登録
  2. 申請者情報の登録完了後、ログイン
  3. メニューの中の「かんたん証明書請求」から請求書の作成・送信
    請求書作成時に登記事項証明書の受取り方法を選択
    ・希望の法務局窓口で受取り方法
    ・郵送により受取る方法(普通郵便または速達郵便)
  4. 手数料をインターネットバンキングやpay-easy(ペイジー)対応のATMで納付
    窓口受取りの場合の手数料 1通480円
    郵送受取りの場合の手数料 普通郵便1通500円 速達郵便1通760円
  5. 受取り方法を窓口受取とした場合は、希望した法務局窓口で受取
    その際は電子納付画面で「受取人の氏名・住所、通数、収納機関番号、納付番号。確認番号及び納付額」が記載された画面を印刷し窓口に持参する必要があります。

オンライン請求は平日8時30分~21:00まで申請ができます。ただし、17時15分の法務局閉庁後に申請されたものは翌開庁日の朝8時30分に受付がされます。そのため手数料の納付まで行えるのは、平日の17時15分前に申請が受付されたものになるため注意しましょう。

3つの請求方法の比較

登記事項証明書の請求方法3つを説明しました。それぞれ、かかるコストや登記事項証明書を取得できるまでの時間が異なります。

安さと利便性を重視する場合はオンライン請求がおすすめです。「とにかく今日登記事項証明書が必要」という場合は、窓口申請であれば即日受領が可能です。一部事項証明書や閉鎖登記簿謄本が必要な場合は窓口申請か郵送申請に限られます。

登記事項証明書の請求申請3パターンの比較 
申請方法費用受領方法取得までの目安
窓口申請1通600円窓口受領30分程度
郵送申請1通600円
+往復の郵送費
自宅・指定場所への郵送平日の場合2~3日
オンライン申請窓口受領1通480円
郵送受領1通500円
速達での受領760円
窓口受領窓口受領請求申請~納付までスムーズなら1時間
自宅・指定場所への郵送郵送 平日の場合2~3日
速達 平日の場合は翌日

筆者の経験ではコストが低く、手間のかからないオンライン申請を利用した割合が90%でした。慣れてしまえば、あっという間に手続きも完了しますのでぜひチャレンジしてみてください。

登記簿謄本で気をつけるべきポイントは?

登記事項証明書(登記簿謄本)の取得では、注意すべきポイントがいくつかあります。

登記事項証明書に有効期限はない

登記事項証明書(登記簿謄本)には有効期限はありません。しかし、月日が経過した登記事項証明書は、最新の権利関係や不動産の状況が記載されていない可能性があります。提出先がある場合はなるべく最新の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し提出しましょう。

不動産の地番と住所を混同してしまう

登記事項証明書(登記簿謄本)を請求する際は、不動産を特定して請求します。土地であれば、所在・地番、建物であれば所在、家屋番号で特定します。
請求時に勘違いしやすいのが、住所と地番を混同してしまうことです。○丁目○番○号といった住居表示がされた地域では地番と住所は異なります。地番に住所の番地を入れても正しい登記事項証明書は取得できないので注意が必要です。
地番が分からない場合は、登記済証(権利証)または登記識別情報の、不動産の表示という記載を確認しましょう。地番や家屋番号がわかります。登記済証や登記識別情報通知が手元にない場合は、該当の不動産を管轄する法務局へ行き、備え付けのブルーマップを使い地番を特定します。
法務局まで出向けば、証明書係の方に地番の特定を手伝ってもらうことができるでしょう。

登記事項証明書(登記簿謄本)にロックがかかっており取得できない

該当不動産が登記の申請中の場合は、登記事項証明書は取得できません。その場合は数日~2週間程度の期間を空けて再度請求をしましょう。申請中の登記が完了したタイミングで、登記事項証明書は取得できるようになります。通常、不動産の登記申請は申請日から法務局閉庁日を除く14日程度で完了します。

登記情報と登記事項証明書を間違えない

登記事項証明書(登記簿謄本)とは別のもので「登記情報」があります。登記情報は現時点の登記の内容を閲覧できるサービスです。PDF形式でダウンロードし印刷することができ、ネット謄本と呼ばれることもあります。登記事項証明書と記載される内容は同じですが、登記事項証明書にはある証明分や公印がありません。住宅ローン控除のためにする確定申告時や、金融機関の審査用に提出する書類は、「登記事項証明書(登記簿謄本)」で「登記情報」では足りません。必ず登記事項証明書を取得するように注意しましょう。

この記事のポイント

登記簿謄本ってなに?

登記簿謄本は、法務局が管理する「帳簿=登記簿」を複写したものです。
帳簿(登記簿)とは、法務局が不動産の所在や面積、所有者の住所や氏名を記載して管理しているもので、この帳簿(登記簿)に不動産に関する様々な情報を記載する手続きを「登記」と呼びます。

詳しくは「不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)とは何か?」をご確認ください。

登記事項証明書は登記簿謄本とは別もの?

登記簿謄本と似たもので、登記事項証明書という書類があります。名前は異なりますが、登記簿謄本も登記事項証明書も、それぞれの書類が証明する内容は同じです。

元々、登記の内容は法務局にある帳簿(紙面)に記載して管理をしていました。この紙で管理していた帳簿の複写したものが「登記簿謄本」です。 一方で、現在は登記の内容をコンピューターで管理しています。そして、このコンピューターに記録された内容を用紙に印刷したものが「登記事項証明書」です。 つまり、「登記簿謄本」も「登記事項証明書」も証明されている内容は全く同じものなのです。
一目でわかる違いは、登記簿謄本は縦書き、登記事項証明書は横書きの書類という点です。

詳しくは「登記簿謄本と登記事項証明書は同じ書類?」をご確認ください。

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