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IoTとは?住宅に導入するメリット・デメリットや注意点について

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

近年、最新技術を活用した「IoT住宅」を提供しているハウスメーカーが増えています。次世代住宅にはIoT住宅以外にも、「スマートハウス」や「スマートホーム」などがあり、それぞれ違いを知りたいと思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事ではIoTの意味や住宅に導入するメリット・デメリットなどを解説します。

IoTとは

IoTとは「Internet of Things」の略称で「インターネット回線を通じてモノをつなぐ」という意味があります。

IoT住宅とは、インターネット回線を通じてそれぞれの住宅設備をつなぎ「居住の快適性の向上」を目指した住宅のことです。住宅設備とは、例えばエアコン、玄関の電気錠、シャッター、照明、給湯器、インターフォン、ネットワークカメラ、太陽光発電、蓄電池などが挙げられます。

これらの住宅設備をネットワークにつなげて遠隔操作したり、AIで最適化を図ったり、気象情報と連動させたりすることで、居住の快適性を高めるのがIoT住宅です。

似たような言葉に「スマートハウス」があります。スマートハウスとは、エネルギーの需給の最適化を図り、主として「省エネ」を目的とする住宅のことです。

スマートハウスもIoTの技術を駆使していることが一般的ですので、広い意味ではIoT住宅の一つといえるでしょう。そのため、スマートハウスをIoT住宅として供しているハウスメーカーもあります。スマートハウスとIoT住宅の機能は、オーバーラップしている部分が年々増えており、両者を明確に区別することは難しくなってきているのが現状です。

また、「スマートホーム」という言葉も存在しますが、これは家庭内の電化製品や情報家電製品をネットワークでつないで一括管理し、快適なライフスタイルを実現する住宅のことです。IoT住宅とほぼ同義といえます。

住宅のIoT化でできること

IoT住宅はハウスメーカーによって企画や設備が異なり、さまざまな機能が備わっています。ここでは、住宅のIoT化で導入されている代表的な例をいくつか紹介します。

家電や設備を遠隔操作

多くのIoT住宅では、スマートフォンとの連動で家電や設備を遠隔操作できるようになっています。例えば、スマートフォンを使って外出先から家の鍵を開閉したり、お風呂にお湯を張ったり、エアコンを操作したりすることが可能です。

家電や設備同士の連携

家電や設備同士の連携が行われているIoT住宅もあります。例えば、スマートスピーカー(対話型AIスピーカー)と自動カーテン、照明、大型テレビを連携させることにより、スピーカーに向かって「映画を見たい」といえばカーテンが自動で閉まり、照明も暗くなって大型テレビで映画が再生されるといったこともできます。
そのほか、外出時に照明が自動で消され、お掃除ロボットが自動的に家の中を掃除し始めるというものもあります。

遠隔地からの見守り

スマホ連動をしているIoT住宅では、遠隔地からの見守りサービスを導入しているケースが多いです。見守りサービスを使えば、外出先から子どもの帰宅を確認したり、ペットの様子を見守ったりすることができます。

AIによるデータ蓄積・利用

IoT住宅の中にはAI(人工知能)を搭載し、AIが蓄積したデータを利用して家電の利便性向上や省エネ対策ができるものもあります。
例えば、AIが家の電力量情報と気象予測情報をもとに電子機器を自動で最適な設定にする、状況に合わせて太陽光発電で発電した電力を優先的に使って無駄を減らすといったことも可能です。

IoT住宅のメリット

IoT住宅には、快適性の向上や水道光熱費の削減などさまざまなメリットがあります。

家の中の快適性が上がる

IoT住宅の中には、気象情報と連動して室内の温度が最適できるようなシステムを搭載しているものもあり、家の中が過ごしやすくなります。例えば、暑い夏場でも帰宅前に家を冷やしておき、涼しい部屋に帰るといったこともできます。

共働きの家族には便利

IoT住宅は、共働きの家族に便利な機能も多いです。
会社にいながら子どもの帰宅を確認したり、不在時でも宅配便を受け取ったりすることができるシステムもあります。
外出先から照明を付けることも可能なので、外部に不在を悟らせないといった防犯対策もできます。

省エネによって水道光熱費を削減できる

IoT住宅では電力消費をモニタリングできるタイプもよくあります。
電力や水の消費量を「見える化」することで省エネ意識が高まり、水道光熱費を削減できるようになります。

IoT住宅のデメリット

IoT住宅にはメリットが多い一方で、デメリットもあります。

建築費の増加要因となる

IoT住宅はさまざまな設備が付加されるため、建築費の増加要因となります。
高度な設備が充実したIoT住宅は、通常の住宅よりも割高です。
よってIoT住宅を建てる際は、設計段階で不要な機能を落としてコストを削減できるかを事前に確認することもポイントとなります。

設備の連携が増えることで修繕の頻度が上がる可能性がある

設備が多機能となり他の設備との連携も増えれば、その分、設備が壊れるリスクも増えてしまいます。例えば、自動シャッターがAIスピーカーに反応しなくなるなどの事態が考えられます。

また、PCやスマホの変更やOSのバージョンアップに伴い、今まで使えていた連動アプリが使用できなくなることもあります。
スマホとの連携が強くなるほど、スマホの損傷や紛失が与える悪影響が大きくなる点もリスクといえるでしょう。

設備の廃棄や交換がしにくい

IoT住宅は家にあらかじめ備え付けられた設備が多いことが特徴です。
住宅に備え付けの設備は、廃棄や交換がしにくいという側面があります。例えば壁や天井に組み込まれている設備の場合、壊れても廃棄しにくいことが多いのです。
また、設備のメーカーや大きさが限定されてしまうことから、最新機種に交換しにくくなります。例えば夏場に突然エアコンが壊れてしまった場合、機種が限定されていると修理するのに時間がかかってしまうことも考えられます。

IoT住宅にする際の注意点

IoT住宅を建てる際の注意点について解説します。

自分が求めている方向性と合致するか吟味する

IoT住宅には一律に決まった仕様は存在せず、ハウスメーカーによって企画や方向性が異なります。
省エネを重視したタイプや、防災を重視したタイプ、家電の連携を重視したタイプなど、方向性はさまざまです。
IoT住宅を建てる場合、ハウスメーカーの提供するIoT住宅が自分の求めているものに合致するかを確認することが第一歩となります。

保証期間やアフターメンテナンス体制を確認する

IoT住宅は設備の多い住宅であるため、設備の保証期間やアフターメンテナンス体制をしっかりと確認することもポイントです。

新築住宅には品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって「住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分」に関しては10年間の保証がありますが、設備に関しては品確法の保証対象外となります。

保証期間は設備によって異なることも多いため、設備ごとに保証期間がどの程度あるかを確認しておくことが必要です。

また、設備が多機能・多連携となるIoT住宅では、設備の壊れる確率も高くなります。設備が壊れてしまった場合、ハウスメーカーに依頼すればすべて直してもらえるのか、または直接設備会社に頼むべきなのかを確認しておくことが望ましいです。

通常、住宅を建てると、竣工後に分厚い取扱説明書のファイルを受領します。
取扱説明書の中には保証書や修繕依頼の連絡先等の重要な内容も含まれていますので、しっかり保管しておくようにしましょう。

出典:住宅の品質確保の促進等に関する法律|国土交通省

IoT住宅を扱っているハウスメーカー

IoT住宅を扱っている代表的なハウスメーカーについて紹介します。IoT住宅を建てたいと考えている人は参考にしてください。

ハウスメーカー概要
大和ハウス工業「Daiwa Connect」というブランド名でIoT住宅を提供しています。「家事を楽にする」、「楽しい時間をつくる」、「家族を見守る」の3つをコンセプトとしています。Google アシスタントと連携しており、声でカーテンの開閉や、映画を再生できる点が特徴です。スマホと連動して遠隔で自宅にいる家族を見守ることもできます。
積水ハウス「プラットフォームハウス」というブランド名でIoT住宅を提供しています。「住まいとつながる、家族がつながる、新しい暮らし方」がコンセプトです。スマホとの連動が特徴で、帰宅・外出の通知や、エアコン・給湯のリモコン操作、ホームセキュリティ、住環境モニタリングなどを外出先から行うことができます。
旭化成ホームズ宅配の悩みを解決する「スマートクローク・ゲートウェイ」という機能を提供しています。新築の段階で鍵付きの置き配スペースを室内に設けておき、配達員に解除キーを送付することで外出時でも荷物を確実に受け取ることができるシステムです。徐々にIoT機能を拡大していくのが旭化成ホームズの特徴といえます。
積水化学工業「スマートハイム」というブランド名でIoT住宅を提供しています。主に省エネ機能に重点を置いており、スマートハウスに近い概念の住宅です。ZEH(ゼッチ)住宅※よりもさらに一歩進んだエネルギー自給自足型の住まいとなっており、AIスピーカーによる声の制御機能やスマホ連動機能の家事サポート機能も提供しています。
※ZEH(ゼッチ)住宅(net Zero Energy House):エネルギー収支をゼロ以下にする住宅のこと
パナソニックホームズ大手家電メーカーのパナソニックのグループ会社であるパナソニックホームズは、早くからIoT住宅に注力しているハウスメーカーの一つです。家事や防犯、防災、快適性に関し、IoTで解決できる機能はほとんど取り入れています。パナソニックの家電製品をフル活用できる点が特徴です。
住友林業「レジリエンスプラス」というブランド名でIoT住宅を提供しています。レジリエンスとは回復力や耐久力といった意味であり、災害に強い住宅にIoT機能がプラスされている点が特徴です。雨水タンクや蓄電池、半地下収納などを備えており、さらに室内外の様子をネットワークカメラで確認できるIoT機能が付いています。
ミサワホーム「LinkGates(リンクゲイツ)」というブランド名でIoT住宅を提供しています。「安心」「安全」「快適」「省エネ」の4つをIoTで実現している点が特徴です。AIが家に設置されている機器を自動で最適な設定に制御し、太陽光で発電した電気を最大限有効活用できる仕組みとなっています。
トヨタホームトヨタホームのIoT住宅は、スマホだけでなく車との連動機能がある点が最大の特徴です。トヨタの純正カーナビT-Connectを利用することで、車から家の機器を遠隔操作することができます。HEMS(ヘムス)※と呼ばれる省エネ住宅となっており、電気を作ってためることができる住宅です。
※HEMS(ヘムス/Home Energy Management Service):家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム

この記事のポイント

IoT住宅ってどんなもの?

インターネット回線を通じてそれぞれの住宅設備をつなぎ「居住の快適性の向上」を目指した住宅のことです。

エアコン、玄関の電気錠、シャッター、照明、給湯器、インターフォン、ネットワークカメラ、太陽光発電、蓄電池などをネットワークにつなげて遠隔操作したり、AIで最適化を図ったり、気象情報と連動させたりすることができます。

詳しくは「住宅のIoT化でできること」をご確認ください。

IoT住宅にする際の注意点は?

ハウスメーカーの提供するIoT住宅が自分の求めているものに合致するかを確認し、保証期間やアフターメンテナンスについても事前に調べておくことが重要です。

詳しくは「IoT住宅にする際の注意点」をご確認ください。

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