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住宅ローン借り換えのタイミングとメリット・デメリットについて

執筆者プロフィール

海老原政子
ファイナンシャル・プランナー/住宅ローンアドバイザー

国内の生命保険会社にて生命保険募集人業務に携わるなかでライフプランの重要性に目覚め、生活者視点を活かしたFP業務を開始。千葉で、家計相談や執筆業務、個人・企業向けマネープランセミナーをおこなう。生命保険見直しや住宅ローンの借り換え、貯蓄ができない家計の体質改善アドバイスなど、わかりやすい情報提供が好評。

長い付き合いとなる住宅ローン。家を購入する際に金利やプランを吟味するのは当然のこととして、借りた後はどうでしょう?「毎月返済できているから」と住宅ローンに対する関心が薄れる方が少なくないように思います。

金利はナマモノです。利息を払ってお金を借りていることを忘れず、ときどきは他の金融機関の住宅ローン金利や特典情報などをチェックするようにしましょう。場合によっては、手元資金を使って繰り上げ返済するのではなく、その資金を使って住宅ローンの借り換えをしたほうが総合的に見て安上がりになるかもしれないからです。

住宅ローンの借り換えをするメリットとデメリット

住宅ローンの借り換えにはまとまった資金が必要となります。
借り換えのメリットやデメリットをしっかり確認してから検討するようにしましょう。

借り換えるメリット

住宅ローン借り換えの一番のメリットは、現在の融資金利より条件の良い金利に変えることで得られる、毎月の返済額の軽減です。

現在返済中の住宅ローンの残債が2,500万円、金利1.8%、残りの返済期間25年だったとしましょう。金利プランを変えず、別の金融機関で金利0.8%(▲1%)で借り換えることができたら、単純計算ですが、毎月の返済額は1万円以上軽減される見込みです(金利変更や諸費用考慮せず)。
固定費の1万円削減は長期的には大きな節約になります。毎月の家計にもゆとりが生まれ、貯蓄しやすくなるのではないでしょうか。

そして金利以外にも2つのメリットがあります。
1つは、金利プランを新たに選び直せることです。
住宅ローンの返済は長期にわたります。教育費がかかる時期の子育て世帯など、なるべく家計支出の変動を抑えたい時期もあると思います。そうしたご家庭にとっては、変動金利プランから金利固定期間10年型の住宅ローンに変えることで、子どもが高校・大学通学の期間、返済を固定して家計やりくりをしやすくする、このようなプランも検討可能です。

また、会社員から個人事業主になる方など働き方を大きく変える予定の方であれば、事業外のリスクはできるだけとりたくはないもの。事業を開始する前に、全期間固定金利の住宅ローンに借り換えることで、今後金利変動に関係なく我が家に住み続けられる安心を手に入れることができます。

もう1つは、住宅ローンの借り換えにより、団信の選び直しができることです。最近は、団体信用生命保険(以下、団信)の保障充実をうたう金融機関が増えました。

ワイド団信やがん保障付き団信、疾病保障付き団信など、保障のバリエーションが広がった昨今、住宅ローン借り換え後に加入中の生命保険の見直しを行うことで、住居費と生命保険料を合わせた家計改善が可能です。
これは借り換えした方だけではなく、新規に住宅ローンを組んだ方にも言えることです。保険の見直しがまだと言う人はぜひ見直してみましょう。

借り換えるデメリット

住宅ローンの借り換えにはデメリットもあります。
一番のデメリットはやはり、まとまったお金がないと実行できないことでしょう。

新たな金融機関とローン契約を結ぶにあたり、事務手数料や保証料、登記手続きにかかる司法書士報酬、印紙税や登録免許税などがかかります。さらに、現在の住宅ローン完済時の一括返済手数料や抵当権抹消にかかる手数料も考えておく必要があります。
借入金額次第ですが、数十万円単位の諸費用を見込んでおくべきでしょう。

現在の住宅ローンを組む際、借り入れ限度額の関係で夫婦合算した方は特に注意が必要です。妻が専業主婦になった、転職で夫の年収が下がったなど夫婦の働き方や世帯年収によっては住宅ローン審査に通らないことが考えられるからです。

同様に、持病をお持ちで団信加入が難しい方や、会社員から自営業になり働き方が大きく変わった場合も住宅ローン審査に通らない可能性があります。誰でも借りられるわけではなくローン審査があることをデメリットに挙げておいてもよいでしょう。

住宅ローンの借り換えをするまでの流れ

実際に住宅ローンを借り換える前提で、検討タイミングや住宅ローン金利プランを検討する手順などについて考えていくことにします。

借り換えのベストなタイミング

誰にとってもベストな住宅ローン借り換えタイミングというものはありません。
しかし、返済中の住宅ローンが「金利プランに起因するもの」と「ライフプランに起因するもの」があることから、この2つそれぞれのよい見直しタイミングがあると筆者は考えています。

金利プランに起因する見直しタイミングについて、プラン別に説明していきます。

まず10年固定や15年固定プランのように固定期間が決まっている金利プランを選択した方は、ぜひ、固定期間が終了する1年から半年ぐらい前に見直しすることをおすすめします。
住宅金融支援機構の調査結果によると、7割以上の方が変動金利タイプの住宅ローンを選んだとのこと。変動金利プランの方は、直近金利を重視して選んだ方が多いと推察します。

変動金利プランの方は基本的に半年に一度金利見直しがありますので、そのタイミングで見直しをするもよし。会社員の方でしたら、ボーナスが支給されて手元資金に余裕が生まれる5・6・7月、または11・12・1月あたりに検討するのが良いでしょう。
前倒しで検討すれば、その月の融資金利が期待した数字でなくとも、次月に再度検討することができるため、借り換えどきを見逃さずに済むと思います。

全期間固定金利プランの方も、決して住宅ローンの見直しをしなくてよいわけではありません。
固定金利は概ね10年物国債の利回りをベースに決まります。長い目でみれば、債券金利もそれなりの幅で動きます。「残債が1,000万円程度に減少するまで」または「残り返済期間が15年をきる」までは、年に一度程度、金利チェックを続けると安心ではないでしょうか。

住宅ローンの借り換えに適したタイミングをライフプランから考えることもできます。

たとえば、子どもの大学進学前や独立して家を出た時、退職時期が具体的になってきた時期などは住宅ローンの見直しの好機です。
前の項で触れましたので割愛しますが、転職や職位の変更、独立などで世帯の働き方が変わり家計収支に変化があった時も借り換えを検討する良い機会です。

人生の節目には大きなお金が動きます。
節目となる時期の2、3年前に、住宅ローンの残債や金利を確認する、残りの返済期間中に最後まで返せそうかどうか考える。こうした確認と合わせて、手元資金と相談しつつ住宅ローンの借り換えも検討してみる。このような流れで見直してみましょう。

金利プランの検討にあたっては、当初だけに適用される金利なのか、全期間適用される金利なのか。固定金利期間が決められたプランであれば、期間終了後に選べる金利プランの種類、および、その時に適用される金利優遇幅なども必ず確認するようにしましょう。

毎月の返済額はとても重要ですが、借り入れから完済するまでの総返済額(総利息)が抑えられるかどうかの視点でシミュレーションすることもお忘れなく。

出典:「【概要】住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2022 年4月調査)】」

住宅ローンの借り換えで気をつけるべきポイント

住宅ローンの借り換えで注意する点もあります。借金嫌いな方が往々にして陥りがちなのですが、手元資金がギリギリになるまで借入金額を下げることはあまりおすすめできません。

安定した職業についていても何十年も先まで収入が確約されているわけではありません。病気やけがで仕事を失う可能性もあるでしょう。
今後かかると考えられる費用、例えば教育資金や家のリフォーム・修繕費用、退職後のマネープランなどを視野に入れると、予備のお金が手元にあるほうが安心です。

少なくとも5,6年先の大きな出費はカバーできる、ゆとりを持った資金計画を立てるように心掛けてください。

この記事のポイント

住宅ローンを借り換えるメリットはあるの?

住宅ローン借り換えの一番のメリットは、現在の融資金利より条件の良い金利に変えることができる、つまり毎月の返済額を軽減できるという点です。

ほかにも、変動金利制から固定金利制へ、などのように金利プランを新たに選び直せること、住宅ローンの借り換えにより、団信の選び直しができることなどもメリットと言えるでしょう。

詳しくは「借り換えるメリット」をご覧ください。

借り換えをするときに気をつけるべきことは?

手元資金がギリギリになるまで借入金額を下げるのはあまりおすすめできません。
安定した職業についていても何十年も先まで収入が確約されているわけではなく、病気やけがで仕事を失う可能性もあるでしょう。今後かかるであろう教育資金や家のリフォーム・修繕費用、退職後のマネープランなどを視野に入れ、予備のお金を手元に残しておくことが大切です。

詳しくは「住宅ローンの借り換えで気をつけるべきポイント」をご覧ください。

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