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アスベスト(石綿)は危険な素材?人体への影響と対策について解説

執筆者プロフィール

齋藤進一
建築士

やすらぎ介護福祉設計 代表
2004年から「ワンストップ型」介護福祉設計をめざし、各個人の障がいの症状に合わせた住宅設計・施工監理をはじめ、子育て世帯が安心して暮らせるユニバーサルな視点でのバリアフリーで、多くの人に安心とやすらぎを提供している。

ざっくり要約!

  • アスベストは天然に採取される繊維状の鉱物(けい酸マグネシウム)
  • アスベストを吸引すると肺がんなどの健康被害が起こる可能性がある

私達の住まいにおける健康被害と言えば「シックハウス症候群」を思い浮かべる方も多いと思います。シックハウスの原因は新建材から発散される化学物質(主にホルムアルデヒド)などで、2003年7月から建築基準法で規制されています。室内で生活していると眩暈・頭痛・咳がでる・息苦しい・目がチカチカする症状が代表です。
一方で、アスベスト(石綿)による健康被害はシックハウス症候群とは別のものになります。この記事では、アスベストがどのような素材でどこに使用され、建築業界ではどのような取り組みがされているかを解説していきます。

アスベスト(石綿)はどんな素材?

アスベストは別名「石綿(いしわた・せきめん)」と呼ばれ、天然に採取される繊維状の鉱物(けい酸マグネシウム)です。重量が軽く飛散しやすく吸引する恐れがあります。
それに対し、シックハウス症候群の原因であるホルムアルデヒドなどは「揮発性」なものです。

では、アスベストが建築物にどのような用途で使用されているか、また危険性について解説いたします。

具体的なアスベスト(石綿)の用途

アスベストは断熱材・不燃材・保温材等として以下のように使用されてきました。

1.吹き付けアスベスト
(石綿含有吹き付けロックウール等含む)⇒レベル1に該当(後述)
アスベスト、またはロックウールをセメントと水で混ぜ、吹き付け施工したもの

「おもに使用された場所」

  • マンション・ビルなど鉄骨の柱、梁、鉄板床裏(耐火被覆として)
  • 空調室、ボイラー室、昇降機機械室などの壁や天井等(吸音・断熱用として)
  • 工場や立体駐車場の鉄骨の柱、梁など(耐火被覆として)
筆者撮影
筆者撮影

2.アスベスト含有保温・断熱材など⇒レベル2に該当(後述)
含有するアスベスト重量が製品の重量の0.1パーセントを超えるもの

「おもに使用された場所」
・ボイラー、温水管など(熱を遮断するために使用されるアスベスト含有保温材)

3.アスベスト含有成形板など ⇒レベル3に該当(後述)
セメントなどで成形されたアスベスト含有建材
鋼板屋根材(折板屋根)の裏側にアスベストを貼ったもの

「おもに使用された場所」
・鉄骨の柱、梁(耐火被覆として板状に成形して貼りつけるアスベスト含有耐火被覆板)
・折板屋根(おおよそ2006年頃 までの一部の製品)
・石膏ボード、ケイ酸カルシウム板など(おおよそ2006年頃 までの一部の製品)
・窯業系サイディング(おおよそ2006年頃 までの一部の製品)
など
(参考 中野区環境部HP)

アスベスト(石綿)の危険性とは?

アスベストの危険性は人が飛散している粉じんを吸入してしまうことです。
現在は建物のリフォーム・解体時での飛散リスクに繋がります。
飛散の危険性レベルとして表記され、レベル1からレベル3に分けられます。
(レベル1が最も危険なレベルです)

レベル1(飛散性のレベルが一番高い)⇒吹き付けアスベスト
レベル2(飛散性のレベルが高い)⇒アスベスト含有保温・断熱材など
レベル3(飛散性のレベルが比較的低い)⇒アスベスト含有成形板など

これまであった健康被害の事例

アスベストを吸引してしまった際の健康被害には次の5つが挙げられます。

1.アスベスト肺
肺線維症(じん肺)という病気の1つ。アスベストの暴露によっておきた肺繊維症が特にアスベスト肺(石綿肺)と呼ばれています。
アスベスト粉じんを10年以上吸入した労働者に起こりやすく、潜伏期間は15~20年と言われています。

1. 肺がん
アスベストと肺がんの関係は十分に解明されていませんが、肺細胞に取り込まれたアスベスト繊維の物理的刺激によりがんが発生するとされています。

2. 中皮腫(胸膜・腹膜・心膜などにできる悪性腫瘍)
肺を取り囲む胸膜、腹部臓器を囲む腹膜等にできる悪性の腫瘍。年齢の若い時期にアスベストを吸い込んだ人のほうがより悪性中皮種になりやすいと知られています。

3. 良性石綿胸水
アスベストによる胸膜炎のこと。胸膜腔内に浸出液が生じるもので、半数近くは自覚症状がなく、症状がある場合はせき、呼吸困難の頻度が高いと言われています。

4. びまん性胸膜ひこう
アスベストによる胸膜炎が発症すると、それに引き続き胸膜が癒着して広範囲に硬くなり、肺のふくらみを障害し呼吸困難をきたします。
胸部レントゲン写真上で胸膜の肥厚を認められるようになると、この状態をびまん性胸膜肥厚と呼びます。

出典:アスベストQ&A 健康影響|東京都環境局

アスベスト(石綿)を吸い込んでしまったら?

一般の環境で生活をしていて、アスベストによる健康障害を起こす可能性があるか?
という疑問が読者の方に一番多いと思います。

・アスベストをどのくらい吸うと発病するか?
・アスベストの種類によって発症リスクに差があるか?
・アスベストを吸い込んでしまったかどうか分かるか?
・吸い込んだアスベストはどうなるのか?

などといった疑問についても詳しくは以下のQ&Aサイトを参ください。

アスベストQ&A|東京都環境局
アスベストに関するQ&A|厚生労働省

アスベスト(石綿)の現状と対策とは?

現在の建築物や設備施工においてアスベスト含有材を使用するのは違法です。では、日本における対策の変遷を追ってみましょう。

国内の対策について

アスベスト使用が禁止になったのは2006年でした。
そのため、それ以前の建築物においてはアスベストが含有した建材が部分的に使用されている可能性があります。

1975年(昭和50年)特定化学物質等障害予防規則改正
    アスベストの含有率が5パーセントを超えるような施工の禁止

1986年(昭和61年)ILO石綿条約の採択
    石綿の使用における安全に関する条約|国際労働機関

1995年(平成7年)労働安全衛生法施行令改正  特定化学物質等障害予防規則改正
    アスベストの含有率が1パーセントを超えるような施工の禁止

2006年(平成18年)労働安全衛生法施行令改正
    アスベスト全面禁止|厚生労働省

2021年(令和3年)「大気汚染防止法」の一部改正
    大気汚染防止法が改正されました|環境省

建築業界の取り組みについて

建築物のアスベストに関連する調査においては有資格者が行うようになります。
2023年10月以降に「建築物の事前調査を行う者の資格要件の新設」により、「建築物石綿含有建材調査者講習」が行われています。

引用:改正ポイント|厚生労働省

また、作業においては「石綿作業主任者技能講習修了者」や「石綿取り扱い作業従事者特別教育」受講者が行うことになります。

築年数の古い家屋を建て替えなどで解体する際は、解体改修工事業者さんが所定の手続きをされているかも確認しましょう。

解体改修工事の受注者(解体改修工事実施者)の皆さま (R4.1)|厚生労働省

この記事のポイント

アスベストとはなに?

アスベストは別名「石綿(いしわた・せきめん)」と呼ばれ、天然に採取される繊維状の鉱物(けい酸マグネシウム)です。重量が軽く飛散しやすいため、吸引する恐れがあります。
また、職業の関係などで長期間吸引し続けるといくつかの病気を起こす可能性があります。

詳しくは「アスベスト(石綿)はどんな素材?」をご覧ください。

アスベストはどう危険なの?

アスベストは人が飛散している粉じんを吸入してしまうことで健康被害が起きる危険性があります。現在は建物のリフォーム・解体時における飛散に吸入のリスクがあります。

詳しくは「アスベスト(石綿)の危険性とは?」をご覧ください。

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