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マンション売却と賃貸どっちが得する?メリット・デメリット徹底比較

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 住宅ローン返済中の場合は原則として賃貸に出すことができない
  • 立地条件や築年数、持ち主の状況などによって賃貸・売却どちらが向いているか変わる

原則として住宅ローンを完済している人であれば、マンションを賃貸に出すことも可能です。賃貸に出せる状態の人は、売却すべきか賃貸に出すにすべきか迷っている方もいると思います。
一方で住宅ローンが返済中の人も、例外的に転勤等のやむを得ない事情があれば貸すことはできます。住宅ローンが返済中の人は、選択肢は狭いですが転勤時に貸すべきかどうか迷っている人も多いのではないでしょうか。

この記事では「マンションの売却と賃貸」について解説します。

マンション売却と賃貸どっちがお得?

一概にどちらがお得なのかは言い切れませんが、住宅ローン返済中の方は賃貸に出したときに得られる利益のほうが少なくなるでしょう。
ただし、住宅ローンを返済中の人は、原則としてマンションを貸し出すことはできません。
理由としては、銀行との金銭消費貸借契約の中で資金使途に反してしまうからです。
資金使途とは、貸したお金の使い道のことを指します。

住宅ローンの資金使途はマイホームの購入であり、賃貸物件の購入ではありません。
極端な話、住宅ローンを借りて購入したマンションをすぐに他人に貸せば、不動産投資を行っているのと同じといえます。

資金使途違反は、銀行に対する詐害行為(詐欺を行っているといこと)です。
銀行を騙して金利の安い住宅ローンを借り、不動産投資を行っているものとみなされてしまいます。
そのため、住宅ローンを返済中の人は、基本的に賃貸に出す選択肢はないということです。

一方で住宅ローンの返済中の人でも、転勤等の必要やむを得ない場合であれば、届出をすることで銀行は賃貸に出すことを認めてくれます。
転勤中の一時的な賃貸のことを「リロケーション」と呼びます。

リロケーションでは、定期借家契約と呼ばれる契約形態を用いることが一般的です。
定期借家契約とは更新がなく、契約期間終了時に確実に契約を終了できる契約になります。
借主は更新ができず確実に退去しなければならないことから、定期借家契約は借主にとって不利な契約です。
そのため、定期借家契約の家賃は通常の相場よりも安くなっています。

住宅ローンを返済中の人は転勤等であればリロケーションで貸すことはできますが、家賃が安くなってしまうことは知っておく必要があります。

なお、例外として住宅ローンを不動産投資ローンに借り換えれば、賃貸に出すことを認めてくれる銀行もあります。
一般的に不動産投資ローンは、住宅ローンよりも金利が高いです。
不動産投資ローンに借り換えて貸す場合は、金利等の諸条件を十分に確認することが望ましいといえます。

マンションを売却するメリット

マンションを売却するメリットについて解説します。

資産価値が比較的高い間に売れる

一般的にマンションは築年数が浅いうちの方が高く売れます。
仮に賃貸に出せば、貸している間は築年数が経過してしまいますので、将来、価格が下落するリスクが生まれます。
そのため、賃貸に出さずに今すぐ売るということは、資産価値が比較的高い間に売れるということです。

ただし、住宅ローンを完済しているマンションは築年数が古いことも多く、既に価格が下がりきっている場合があります。
価格が下がりきっている場合には、賃貸に出して数年後に売却しても、今と同じ金額で売れる可能性は残っています。

売却時に税制優遇を受けられる

一定の要件を満たすマイホームの売却では、節税ができる税制優遇措置があります。
そのため、マイホームのマンションであれば、税制優遇を受けられる点がメリットです。

ただし、マイホームであっても自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに売れば、その間、賃貸に供していたとしてもマイホームの売却特例は利用できます。
よって、少しだけ賃貸に出してすぐに売る場合には、税制優遇を受けられます。

一方で、例えば親から相続で引き継いだマンションはマイホームではないため、マイホームの税制優遇は利用できません。

貸せるマンションは住宅ローンが完済していることが原則的な条件であるため、親から相続した物件であることも多いと考えられます。

相続したマンションは、一定の要件を満たす人が相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した場合には、「取得費加算の特例」と呼ばれる節税特例を利用できます。

要件の1つに「その財産を取得した人に相続税が課税されていること」があります。
相続税が発生している人であれば利用できますが、相続税が発生していない人は利用できない特例です。

ローン完済期間を短縮できる

住宅ローンが残っている人が売却すれば、ローンを一括返済できるため、完済期間を短縮できるという点がメリットです。

そもそも住宅ローンが残っている人には原則として選択肢が売却しかありませんので、住宅ローンに関しては賃貸に出すことと比較できずメリットとは言えないかもしれません。

住宅ローンが残っている物件は、売買代金の入金と同時に住宅ローンを一括返済することが通常です。

マンションを売却するデメリット

マンションを売却するデメリットについて解説します。

売却がスムーズにできないこともある

売却はいざ売りに出してもスムーズに売れない点がデメリットです。
特に住宅ローンが完済している物件であれば、築年数が古いことが多いため、売却に苦戦してしまうこともよくあります。

マンションの場合、売れないまでの間、固定資産税や火災保険だけでなく、管理費や修繕積立金も発生するため、経済的な負担は重いです。
長期間売れないようであれば、価格を引き下げる等の見直しも必要となります。

資産を手放すことになる

立地が良くすぐに貸せるような物件であれば、売却によって資産を手放すことは惜しい気がします。

良い場所の物件であれば、将来、子どもや孫たちが自分で住みたいと思う可能性もあります。
子どもたちが利用するまで賃貸に出しておけば、資産を有効活用することができます。

マンションを賃貸にするメリット

マンションを賃貸に出す メリットについて解説します。

家賃収入を得ることができる

マンションを賃貸に出せば、家賃収入を得ることができます。
家賃収入は、毎月固定された金額が不労所得で入ってくるありがたいお金です。
長期間安定的に入る収入となるため、家賃収入は見通しや計画が立てやすいという特徴があります。

経費計上で節税効果を得られる

インターネット上には賃貸に出すと節税効果が得られると主張する人がいるようです。
この主張は間違いではありませんが、少し無理矢理な方便でもあるため、どう伝えるべきか困る内容です。

簡単にいうと、賃貸経営で赤字になるとその赤字を他の所得から減額でき、節税ができるという仕組みになります。
これは損益通算と呼ばれる制度です。

「賃貸経営が赤字になれば・・・」という条件付きであるため、赤字にならなければ生じないメリットとなります。
そもそも毎年赤字になるようであれば貸すメリットもありませんので、損益通算を目的に賃貸に出すことを選択するのは止めたほうが良いと思います。

ただし、たまたま何らかの理由で赤字になってしまった年があれば、損益通算をすることによって節税が可能です。
あくまでも副次的なメリットですので、赤字になったときに「そういえば節税できるという話があったな」と思い出して頂ければと思います。

転勤時は資産として運用できる

住宅ローンが残っている人は、転勤時に賃貸に出すことができます。
資産として運用もできますが、借主に自然と管理も担ってもらえる点がメリットです。

住宅は、結露やカビを生じさせないためにも定期的な換気が必要です。
また、排水管にある封水を蒸発させないためにも、定期的な排水が必要となります。
封水とは、S字型の排水管の中に溜まっている水であり、下水から上がってくる臭いを通さないための水です。
封水が蒸発してしまうと、家の中に下水臭がこもります。

借主が生活していれば、換気や排水が自然と行われ、住宅の価値が維持できます。
お金をもらいながら資産価値も落とさずに済む点がメリットです。

マンションを賃貸に出すデメリット

マンションを賃貸に出すデメリットについて解説します。

リフォームなどランニング費用発生

住宅ローンが完済している物件は古い物件であり、貸すためにリフォームを要することがあります。
売却であれば、買主が購入後にリフォームできるため、古い物件でも必ずしもリフォームは必要ではないことが多いです。

しかしながら、賃貸の場合、借主は所有者ではないため、入居後に自由にリフォームすることはできません。
リフォームできるのは所有者の貸主であるため、必要があれば貸主がリフォームしなければならなくなります。

また、貸主は所有者ですので、引き続き固定資産税や火災保険料、管理費、修繕積立金のランニング費用が発生します。

さらに、賃貸物件では貸主に修繕義務が課されます。
自然に壊れてしまった設備等に関しては、貸主の費用負担で直すことが必要です。

家賃収入自体の不安定さ

立地にもよりますが、借主が決まりにくい物件は家賃収入が不安定となってしまいます。
そもそも賃貸経営が難しい立地の物件は、売却に適しているといえます。

賃貸契約更新時のリスク発生

将来的に自分や子どもたちで使いたいという場合には、簡単に契約解除できないというリスクがあります。
一般的に住宅の賃貸で選択される契約の種類は普通借家契約と呼ばれる契約です。
普通借家契約とは更新ができる契約ですが、貸主側から簡単に更新拒絶をすることができません。

更新拒絶をするには、正当事由(借主を退去させるのに正当な理由のこと)と立ち退き料が必要です。
借主が出ないと言い張った場合、マンションを取り戻せずにトラブルになる可能性があります。

税制優遇が受けられない場合がある

賃貸に出した後、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却しなければマイホームの扱いとはならなくなるため、税制優遇が受けられなくなる点がデメリットです。
税制優遇に関しては、細かい要件があるため、しっかり確認することをおすすめします。

マンション売却と賃貸のメリット・デメリットを踏まえた上での選択

マンションを売却するのが適しているケース

以下のようなマンションが売却に適しています。

  • 住宅ローンを返済中の物件(ただし、転勤の場合を除く)
  • 立地の悪い物件(例えば、駅から徒歩10分超等)
  • 利用予定のない物件
  • 管理組合が機能しておらず、管理の状態が劣る物件
  • 築年数の著しく古い物件

マンションを賃貸するのが適しているケース

以下のようなマンションが賃貸に出すことが適しています。

  • 住宅ローンを完済した物件
  • 立地の良い物件(例えば、駅から徒歩10分以内等)
  • 転勤中に貸せる物件
  • 将来自分たちで利用する可能性のある物件
  • 築年数の浅い物件

この記事のポイント

マンションを賃貸に出さず売却するメリットは?

マンションの売却には主に下記3点のメリットがあります。

・資産価値が比較的高い間に売れる
一般的にマンションは築年数が浅いうちの方が高く売れます。
賃貸に出すと貸している間は築年数が経過してしまうため、賃貸に出さずに今すぐ売るということは資産価値が比較的高い間に売れるということです。

・売却時に税制優遇を受けられる
一定の要件を満たすマイホームの売却では、節税ができる税制優遇措置があります。
そのため、マイホームのマンションであれば税制優遇を受けることができます。

・ローン完済期間を短縮できる
住宅ローンが残っている人が売却すれば、ローンを一括返済できるため、完済期間を短縮できます。

詳しくは「マンションを売却するメリット」をご覧ください。

マンションは賃貸に出すのと売却するのとではどちらが得をする?

一概にどちらかが得をするとは言えませんが、前提として住宅ローンを返済中の人は基本的に賃貸の選択肢がありません。

リロケーションという形では賃貸に出すこともできますが、借主は更新ができず確実に退去しなければならないことから、定期借家契約は借主にとって不利な契約です。
そのため、定期借家契約の家賃は通常の相場よりも安くなっています。

住宅ローンを返済中の人は転勤等であればリロケーションで貸すことはできますが、家賃が安くなってしまうことは知っておきましょう。

詳しくは「マンション売却と賃貸どっちがお得?」をご覧ください。

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