ざっくり要約!
- マンション売却時の譲渡所得がプラスの場合は確定申告が必要
- 譲渡所得は「マンションの売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(最大3,000万円)」で計算する
毎年、多くの人が買い換え・住み替えなどで自宅マンションを売却していますが、その場合、基本的に確定申告が必要になります。
本記事では、自宅マンションを売却したときに確定申告が必要な場合の見分け方、税金の計算方法や注意点についてわかりやすく解説します。
記事サマリー
マンション売却後に確定申告が必要なのはどんな場合?
自宅マンションを売却した場合、利益が出るケースと損失が出るケースがあります。
マンションの売却による所得を「譲渡所得」と言いますが、所得の計算上、利益が出れば譲渡所得がプラスになり、反対に損失が出てしまうと譲渡所得がマイナスになります。譲渡所得がプラスになった場合は原則、確定申告が必要です。
確定申告の必要性については、次の3つのうち、どのケースにあてはまるかで判断します。
- 譲渡所得がプラスの場合は確定申告が必要
- 譲渡所得がゼロの場合は確定申告が不要
- 譲渡所得がマイナスの場合は確定申告をして得をすることもある
マンションの譲渡所得を計算する手順とは?
自宅マンションを売却したときの譲渡所得がプラスの場合は確定申告が必要です。この譲渡所得はどのように計算するのか、詳しく解説します。
マンション譲渡所得の算出方法
自宅マンションを売却したときの譲渡所得は次の計算式で算出します。
譲渡所得=マンションの売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(最大3,000万円)
取得費とは?建物の取得費は注意が必要
取得費とは、マンションの購入代金や購入時に支払った諸費用のことです。
主な取得費には次のような項目があります。
- マンションの購入価格
- 購入後の設備費や改良費
- 購入時の諸費用(登記費用、印紙税、仲介手数料など)
- 不動産取得税
親から相続したマンションの場合、取得費は親が購入したときの売買契約書など証明できるものがあれば、価格や諸費用の金額を引き継ぐことができます。また、マンションの購入価格がわからないときは、売却した価格の5%を取得費とします。
注意しなければいけないのは、取得費の計算上、建物の価格や設備費などは実際にかかった金額ではなく、そこから「減価償却費相当額」を差し引いた金額になるということです。
建物や設備は、年数が経つにしたがい徐々に価値が減っていきます。1年間の価値の減少分を「減価償却費」といい、毎年減価償却費分の価値が減少していきます。
鉄筋コンクリート造のマンションの場合、法定耐用年数は70年と決められています。減価償却費の計算では、70年後に取得価額の10%の価値が残るものとして、残り90%の70分の1を毎年の減価償却費とします。
実際に計算する際は、次の計算式を使います。
減価償却費=建物の取得価額×0.9×0.015
(0.015は法定耐用年数70年の定額法の償却率)
次に建物の取得価額から差し引く減価償却費相当額は、次の計算式で算出します。
減価償却費相当額=減価償却費×経過年数
(経過年数はマンションを所有していた年数。1年未満の端数は、6カ月以上は1年とし6カ月未満は切り捨て)
なお、マンションの価格は、土地と建物の合計額で表示されているので、それぞれの内訳がわからないことがあります。
新築マンションの場合は、売買契約書に消費税額が記載されているので、消費税額を消費税率で割ると建物価格が計算でき、建物価格と消費税の合計が建物の取得価額になります。
しかし、消費税導入前にマンションを購入した場合や、中古マンションを個人から購入した場合は消費税額がかかりません。このようなケースでは、国税庁のホームページにある「建物の標準的な建築価額表」に基づいて建物価格を算出する方法があります。
譲渡費用とは
譲渡費用とは、マンションを売却するために直接かかった経費のことをいいます。
主な譲渡費用には以下があります。
- 売却時に支払った仲介手数料
- 印紙税
- マンションを賃貸していた場合は入居者の立退き費用
3,000万円の特別控除とは
自宅マンションを売却したときに一定の要件を満たすと、譲渡益から最大3,000万円の特別控除を差し引くことができます。
これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
この特例が適用できる場合は、次の計算式で譲渡所得を算出します。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除・最大3,000万円
たとえば、自宅マンションを4,000万円で売却し、取得費が2,000万円、譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得は次のように計算します。
譲渡所得=4,000万円-(2,000万円+200万円)-特別控除1,800万円=0円
このケースでは、特別控除額は譲渡益と同じ1,800万円が上限になります。計算の結果、特別控除を差し引くと譲渡所得がゼロになるので、所得税はかかりません。
ただし、3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できません。そのため、マイホームを買換える場合には、どちらの控除を選択したほうが良いか十分に検討する必要があります。
確定申告が必要かどうか見分けるには?
続いて、確定申告を行うケース、行わなくてもよいケースについて順番に確認していきましょう。
(1)譲渡所得がプラスの場合は確定申告が必要
譲渡所得がプラスになる場合は確定申告が必要です。
たとえば、自宅マンションを7,000万円で売却し、取得価額が3,000万円、譲渡費用が200万円だった場合、以下のように、譲渡所得はプラスになります。
7,000万円―(3,000万円+200万円)―特別控除3,000万円=800万円
もし、特別控除差し引き前の譲渡益が3,000万円以下であれば、特別控除を差し引くことにより所得がゼロになり、所得税もかかりません。
ただし、特例を使った結果として譲渡所得がゼロになった場合でも、特別控除を差し引く前の譲渡所得がプラスになっていれば確定申告が必要です。
この他、「マイホームの買い換え特例」を適用した結果、所得税がかからなくなった場合も確定申告をしなければなりません。
(2)譲渡所得がゼロの場合は確定申告が不要
自宅マンションを売却して譲渡所得がゼロまたはマイナスになれば確定申告は不要です。
(3)譲渡損失がマイナスの場合は確定申告をして得することも
自宅マンションを売却して譲渡所得がマイナスになっても、確定申告をすることで得をすることがあります。一定の条件を満たしていれば、特例を利用して売却損の一部を取り戻せる場合があるのです。
1月1日現在で5年を超えて所有している自宅マンションを売却し、譲渡所得がマイナスになった場合、一定の要件を満たすとそのマイナス分を給与所得など他の所得から差し引くことができます。
たとえば、給与所得から譲渡所得のマイナス分を差し引いた結果、所得がゼロになった場合は、源泉徴収されていた所得税がすべて還付されます。さらに給与所得から引ききれないマイナス分がある場合は、売却した年および翌年以降の3年間マイナス分を差し引くことができます。
これを「マイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」といい、適用されるのは次の2つのケースです。
①自宅マンションを買い換えた場合
自宅マンションを売却して新しいマイホームに買い換える場合、自宅マンションの譲渡所得がマイナスになったときに適用できます。ただし、新しいマイホームを購入する際に一定の住宅ローンを利用するなどの条件があります。
②自宅マンションを買い換えない場合
住宅ローンが残っている自宅マンションを、住宅ローンの残高よりも低い金額で売却して譲渡損失が生じた場合に適用できます。
どちらの特例も、確定申告をすることによってはじめて受けることができます。
損をしたと思っていても譲渡所得がプラスの場合も
注意しなければならないのは、購入したマンションが値下がりした場合でも譲渡所得がプラスになるケースがあることです。
たとえば4,000万円(うち建物税込2,000万)で購入したマンションを、15年後に3,900万円で売却し、譲渡費用が150万円だった場合、一見250万円の損失があったように思えるかもしれません。しかし、15年間の減価償却費相当額は450万円となるため、取得費は4,000万円ではなく450万円を差引いた3,550万円になります。
この場合、譲渡所得の計算は以下のとおりです。
売却価格3,900万円-(取得費3,550万円+譲渡費用150万円)=200万円
このように、譲渡所得は200万円のプラスになるのです。
実際には、自宅マンションの場合は特別控除を差し引けるので税金はかかりませんが、前述したように「特例を使った結果として譲渡所得がゼロになった場合でも、特別控除を差し引く前の譲渡所得がプラス」のケースに該当するため、確定申告が必要になります。
延滞税や無申告加算などのリスクについて
確定申告をしなくてはいけないケースであるにもかかわらず、確定申告をしなかった場合は罰則があります。
確定申告の申告時期は、自宅マンションを売却した年の翌年2月16日から3月15日の間です。
もし期限内に申告をしないと、本来の税金の他に無申告加算税が課せられてしまいます。無申告加算税の税率は、本来の税金の50万円までの部分が15%、50万円を超える部分は20%です。その他に延滞税も納めなければなりません。そうならないためにも、期限内に申告することが大切です。
出典:譲渡所得目次一覧(居住用財産の譲渡所得の課税の特例)|国税庁
マンション売却後に確定申告をする手順とは?
マンション売却後に確定申告をする手順について以降順番に解説を記載ください
確定申告時の手続きの流れについて
マンションの譲渡所得の確定申告は、マンションを売却した年の翌年の2月16日から3月15日の間に行なう必要があります。
自分で確定申告を行う場合の手順は次の通りです。
①譲渡所得の計算
譲渡所得は、収入金額、取得費、譲渡費用の項目がわかれば計算できますが、そのためにはそれぞれの金額がわかる契約書や領収書が必要です。
②特例が受けられるかをチェック
国税庁のホームページにある「居住用財産を譲渡した場合の特例適用チェック表」を用いて確認するとスムーズです。
③申告書類に記入
確定申告書等に手書きで記入しても良いですが、国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」を利用し、手順に従って入力すると簡単に作成できます。
また、確定申告の時期が近づくと、役所や公民館などに確定申告相談会場が設けられます。親切に書き方を指導してくれるので利用してみるのも良いでしょう。
④申告書の提出
最後に、作成した申告書に必要書類を添えて税務署に提出すれば完了です。
なお、e-Taxを利用して申告する場合は、提出を省略できる書類もあります。
確定申告時に必要な書類について
マンションの譲渡所得の確定申告には次の書類を揃える必要があります。
(カッコ内は入手先、★は税務署でもらうか国税庁のホームページからダウンロード可能)
- 売却時の売買契約書
- 取得時の売買契約書か建築工事請負契約書
- 取得費の領収書
- 譲渡費用の領収書
- 譲渡した不動産の全部事項証明書(法務局)
- 給与所得者の場合は源泉徴収票(勤務先)
また、特例を受ける場合は、上記の書類のほか、それぞれの特例により提出が必要な書類があります。
3,000万円の特別控除の特例
①戸籍の附票など(本籍地の市区町村)
軽減税率の特例
①戸籍の附票など(本籍地の市区町村)
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例・マンションを買い換えた場合
- 戸籍の附票など(本籍地の市区町村)
- 買い換えたマイホームの売買契約書
- 買い換えたマイホームの全部事項証明書(法務局)
- 買い換えたマイホームの借入金残高証明書(借り入れた金融機関)
- 居住用資産の譲渡損失の明細書★
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書★
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例・マンションを買い換えない場合
- 戸籍の附票など(本籍地の市区町村)
- 売却したマイホームの売買契約日前日の借入金残高証明書(借り入れた金融機関)
- 特定居住用資産の譲渡損失の明細書★
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書★
そのほか準備しておくもの
マイナンバーカードがあれば、電子申告を行う際のログインが便利です。
不明な点があれば税務署や税理士に相談し、書類がきちんと揃っているかを確認してください。また、自分で確定申告をする時間がないという人は税理士に確定申告を依頼すると良いでしょう。
出典:
確定申告書等作成コーナー|国税庁
資産税(贈与税及び譲渡所得)関係 特例適用チェック表|国税庁
この記事のポイント
- マンション売却後に確定申告が必要なのはどんな場合ですか?
マンションの売却による所得を「譲渡所得」と呼びますが、所得の計算上、利益が出れば譲渡所得がプラスになり、反対に損失が出てしまうと譲渡所得がマイナスになります。譲渡所得がプラスになった場合は原則、確定申告が必要です。
詳しくは「マンション売却後に確定申告が必要なのはどんな場合?」をご覧ください。
- 確定申告が必要かどうか見分けるにはどうしたらいいですか?
基本的に譲渡所得がプラスになる場合は確定申告が必要ですが、注意が必要です。
もし、特別控除差し引き前の譲渡益が3,000万円以下であれば、特別控除を差し引くことにより所得がゼロになり、所得税もかかりません。
ただし、特例を使った結果として譲渡所得がゼロになった場合でも、特別控除を差し引く前の譲渡所得がプラスになっていれば確定申告が必要です。また、「マイホームの買い換え特例」を適用した結果、所得税がかからなくなった場合も確定申告をしなければなりません。
詳しくは「確定申告が必要かどうか見分けるには?」をご覧ください。
・法人向け「事業用不動産の売却・費用」に関する記事はこちら
事業用不動産の売却|手順や方法、費用・税金、ポイントなどを解説 | LIVABLE タイムズ
査定は手間がかかりそう。そんな人にはAI査定!
ご所有不動産(マンション・一戸建て・土地)を登録するだけでAIが査定価格を瞬時に算出いたします
スピードAI査定をしてみる