市況・マーケット
~東急リバブル不動産鑑定士が見る~「令和2年 地価公示」
2020年5月27日
「令和2年地価公示」(令和2年1月1日時点の土地価格)が国土交通省より3月18日に発表されました。
【まとめ】
全国平均では、全用途平均が5年連続の上昇となり、上昇幅も4年連続で拡大し上昇基調を強めています。
三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれも、各圏域で上昇が継続し、東京圏及び大阪圏では上昇基調を強めています。
地方圏も全用途平均・住宅地は2年連続、商業地・工業地は3年連続の上昇と、いずれも上昇基調を強めています。
住宅地では、低金利等の継続的な施策が需要を下支えし、利便性や住環境の良い地域を中心に需要が堅調であること、商業地では堅調なオフィスの拡張・移転需要や訪日外国人増加、交通インフラ整備、再開発の進展によるホテルや店舗需要の高まりが要因として考えられます。
また、地方都市を含め鉄道駅周辺などではマンション需要との競合も見られ、こうした多様な需要が競合することにより地価が上昇したと考えられます。
※今回の地価公示は1月1日時点の土地価格です。新型コロナウイルスの感染拡大による経済、不動産市場への影響を反映していませんのでご注意ください。
I.令和2年地価公示の概要
令和2年 | 住宅地(前年) | 商業地(前年) |
---|---|---|
全国 | + 0.8%(+ 0.6%) | + 3.1%(+ 2.8%) |
三大都市圏 | + 1.1%(+ 1.0%) | + 5.4%(+ 5.1%) |
東京圏 | + 1.4%(+ 1.3%) | + 5.2%(+ 4.7%) |
大阪圏 | + 0.4%(+ 0.3%) | + 6.9%(+ 6.4%) |
名古屋圏 | + 1.1%(+ 1.2%) | + 4.1%(+ 4.7%) |
地方圏 | + 0.5%(+ 0.2%) | + 1.5%(+ 1.0%) |
- 東京圏:
- 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県内の首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町村の区域
- 大阪圏:
- 大阪府、兵庫県、京都府、奈良県内近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域
- 名古屋圏:
- 愛知県、三重県内の中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域
- 地方圏:
- 三大都市圏を除く地域
地価公示とは
地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和2年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。
※福島県においては、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内の7地点で調査を休止しています。
Ⅱ.トピックス
(1)住宅地・商業地ともに上昇率全国トップは前年に続き「北海道・倶知安町」
全国の住宅地で上昇率1位となったのは北海道・倶知安町(標準地番号:倶知安-3)で、上昇率は前年比+44.0%となりました。更に、商業地においても倶知安町(標準地番号:倶知安5-1)が前年比+57.5%で全国トップとなりました。
倶知安町は通年観光リゾートとして世界から注目を集めており、現在はオーストラリアや香港、シンガポールといった外国資本によるコンドミニアム建設が地価を上昇させています。また、ここ数年はこのようなリゾート施設で働く従業員の住宅需要も拡大しており地価を一層上昇させています。
(2)商業地をけん引する観光需要
商業地で上昇率が最も高かった地点は「北海道倶知安町」ですが、2位、4位に那覇市、5位に宮古島市などの沖縄県の地点が入り、3位に大阪市中央区の地点が入るなど、いずれも外国人観光客の増加を背景とした店舗の需要が根強く、40%超の上昇となりました。
ウィンターリゾートのみならず、ビーチリゾート、都市型観光地域など通年でのインバウンド需要の広がりを見せています。
(3)新駅開通による住宅地の価格上昇
港区の港南・芝浦地区では、高輪ゲートウェイ駅の暫定開業(令和2年3月)やリニア中央新幹線の開業(令和9年を予定)など、更なる利便性の向上が期待されることから、マンション用地に対する需要により地価が上昇しています。
高輪ゲートウェイ駅近くの地点(標準地番号:港-19)は東京圏の住宅地で最も高い14.0%の上昇を示しました。
(4)住宅地・商業地の最高価格
全国の住宅地の最高価格地点は東京都港区赤坂1丁目(標準地番号:港-4)で、価格は4,720,000円/㎡、上昇率は前年比+8.8%となりました。
一方、商業地の最高価格地点は東京都中央区銀座4丁目(標準地番号:中央5-22)で、価格は57,700,000円/㎡、上昇率は前年比+0.9%となりました。