市況・マーケット
~東急リバブル不動産鑑定士が見る~「令和3年 地価公示」
2021年4月16日
「令和3年地価公示」(令和3年1月1日時点の土地価格)が国土交通省より3月23日に発表されました。
【まとめ】
全国平均は、全用途平均で平成27年以来6年ぶりに下落に転じました。
用途別では、住宅地は平成28年以来5年ぶりに、商業地は平成26年以来7年ぶりに下落に転じ、工業地は5年連続の上昇ですが上昇率は縮小しました。
三大都市圏平均をみると、全用途平均・住宅地・商業地はいずれも、平成25年以来8年ぶりに下落となり、工業地は7年連続の上昇ですが上昇率が縮小しました。
地方圏平均をみると、全用途平均・商業地は平成29年以来4年ぶりに、住宅地は平成30年以来3年ぶりに下落に転じ、工業地は4年連続の上昇ですが、上昇率が縮小しました。
新型コロナウイルス感染症の影響により全体的に弱含みとなっていますが、地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なります。
昨年からの変化は、用途別では商業地が住宅地より大きく、地域別では三大都市圏が地方圏より大きくなっています。
I.令和3年地価公示の概要
令和3年 | 住宅地(前年) | 商業地(前年) |
---|---|---|
全国 | △ 0.4%(+ 0.8%) | △ 0.8%(+ 3.1%) |
三大都市圏 | △ 0.6%(+ 1.1%) | △ 1.3%(+ 5.4%) |
東京圏 | △ 0.5%(+ 1.4%) | △ 1.0%(+ 5.2%) |
大阪圏 | △ 0.5%(+ 0.4%) | △ 1.8%(+ 6.9%) |
名古屋圏 | △ 1.0%(+ 1.1%) | △ 1.7%(+ 4.1%) |
地方圏 | △ 0.3%(+ 0.5%) | △ 0.5%(+ 1.5%) |
- 東京圏:
- 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県内の首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町村の区域
- 大阪圏:
- 大阪府、兵庫県、京都府、奈良県内近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域
- 名古屋圏:
- 愛知県、三重県内の中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域
- 地方圏:
- 三大都市圏を除く地域
地価公示とは
地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和3年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。
※福島県においては、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内の7地点で調査を休止しています。
Ⅱ.トピックス
(1)住宅地・商業地ともに上昇率全国トップは前年に続き「北海道・倶知安町」
全国の住宅地で上昇率1位となったのは北海道・倶知安町(標準地番号:倶知安-3)で、上昇率は前年比+25.0%となりました。更に、商業地においても倶知安町(標準地番号:倶知安5-1)が前年比+21.0%で全国トップとなりました。
いずれも、前年に比べ上昇幅は縮小したものの、高い上昇率を維持しています。
倶知安町は通年観光リゾートとして世界から注目を集めていますが、新型コロナウイルスの感染拡大により観光客は激減しました。
しかしながら、コロナ収束後を見据えた開発投資は継続しており、地価を下支えしています。
(2)観光地・繁華街の大幅下落
全国の観光地及び繁華街については、コロナ禍における国内外の観光連関連需要の激減や時間短縮営業による飲食店の収益悪化、閉店等の影響から前年の上昇から大幅な下落に転じました。
特に全国の商業地の下落率10位内のうち8地点を大阪市中央区が占めており、コロナ禍前の商業施設や宿泊施設などのインバウンド消費に依存していた反動が大きく表れました。
(3)新施設開業による地価上昇
全国の住宅地では上昇率1位は北海道・倶知安町でしたが、2~4位を北海道北広島市が占めています。
これは令和5年に新球場を核としたボールパークの開業が予定されており、雇用増と人口増が見込まれているなか、住宅地の供給が限定的であることや、隣接する札幌市と比較した相対的な割安感から、札幌市の住宅需要が波及したことによります。
(4)堅調な住宅需要による地価の上昇
全国の商業地では上昇率1位は北海道・倶知安町でしたが、福岡市の地価は比較的堅調で、商業地の上昇率10位のうち8地点を福岡市で占めました。
人口増を背景にマンション開発が進み、住宅地の地価も上昇を維持しました。
ただし、都心部の再開発や訪日外国人客に支えられてきた福岡の地価上昇にも、新型コロナの影響が出ており、商業地の地価は9年連続で上昇したものの、上昇率は6.6%(前年16.5%)にとどまり、上昇幅は縮小しました。
(5)物流施設の需要の高まりによる地価上昇
全国の工業地では、コロナ禍におけるインターネット通販の需要が高まりを受け、大型物流施設に適した地点に上昇が見られました。
商品取引額に占める電子商取引の割合は年々上昇しており、コロナ禍における巣ごもり需要でさらに伸長しています。
こうした需要を背景に、住宅メーカーや大手デベロッパーなどが物流施設の整備を積極的に進めており、地価上昇につながっています。
(6)住宅地・商業地の最高価格
全国の住宅地の最高価格地点は東京都港区赤坂1丁目(標準地番号:港-4)で、価格は4,840,000円/㎡、上昇率は前年比+2.5%となりました。
一方、商業地の最高価格地点は東京都中央区銀座4丁目(標準地番号:中央5-22)で、価格は53,600,000円/㎡、前年比△7.1%と下落に転じました。