市況・マーケット
~東急リバブル不動産鑑定士が見る~「令和4年 地価公示」
2022年4月28日
「令和4年地価公示」(令和3年1月1日時点の土地価格)が国土交通省より3月23日に発表されました。
【まとめ】
全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。
なかでも工業地は6年連続の上昇で、上昇率も拡大しました。
三大都市圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。
工業地は8年連続の上昇であり、上昇率も拡大しました。
地方圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。
工業地は5年連続の上昇であり、 上昇率も拡大しました。
新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和される中で、全体的に昨年からは回復傾向が見られます。
※地価公示は1月1日時点の価格であり、直近のロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済環境の変化や円安の影響などは反映されていません。
I.令和4年地価公示の概要
令和4年 | 住宅地(前年) | 商業地(前年) |
---|---|---|
全国 | + 0.5%(△ 0.4%) | + 0.4%(△ 0.8%) |
三大都市圏 | + 0.5%(△ 0.6%) | + 0.7%(△ 1.3%) |
東京圏 | + 0.6%(△ 0.5%) | + 0.7%(△ 1.0%) |
大阪圏 | + 0.1%(△ 0.5%) | ± 0.0%(△ 1.8%) |
名古屋圏 | + 1.0%(△ 1.0%) | + 1.7%(△ 1.7%) |
地方圏 | + 0.5%(△ 0.3%) | + 0.2%(△ 0.5%) |
- 東京圏:
- 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県内の首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町村の区域
- 大阪圏:
- 大阪府、兵庫県、京都府、奈良県内近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域
- 名古屋圏:
- 愛知県、三重県内の中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域
- 地方圏:
- 三大都市圏を除く地域
地価公示とは
地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和4年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。
※福島県においては、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内の7地点で調査を休止しています。
Ⅱ.トピックス
(1)住宅地・商業地ともに上昇率全国トップは「北海道・北広島市」
全国の住宅地で上昇率1位となったのは北海道・北広島市(標準地番号:北広島-1)で、上昇率は前年比+26.0%となりました。また、北広島市は全国住宅地の上昇率10位内に7地点が入っており市内全域で上昇基調にあります。
更に、商業地においても北広島市(標準地番号:北広島5-2)が前年比+19.6%で全国トップとなりました。2位も北広島市の地点です。
住宅地は北海道の人口が集中する札幌市の周辺では、相対的割安感とより広い居住空間を求める需要者のニーズを受けて住宅需要が波及しており、地価の上昇が継続しています。
また、商業地では北広島駅西口再開発事業とボールパーク事業が連携して進捗しており、繁華性の向上が期待される上、住宅地需要の強まりによるマンション用地との競合もあり、地価の上昇が継続しています。
(2)観光地・繁華街の大幅下落
全国の観光地及び繁華街については、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和されるなかで、全体的に回復傾向が見られるものの、国内外の来訪客が回復していない地域や飲食店が集積する地域では地価の下落が継続しており、特に外国人観光客の 増加を背景として近年高い上昇を示してきた地域では大きな下落が継続しています。
特に全国の商業地の下落率10位内のうち7地点を大阪市中央区が占めており、コロナ禍前の商業施設や宿泊施設などのインバウンド消費に依存していた反動が継続しています。
(3)新施設開業による地価上昇
全国の商業地の上昇率1位は北海道・北広島市でしたが、このほかにも全国的に再開発や新施設が開業するエリアでの地価上昇がみられました。
栃木県宇都宮市:次世代路面電車システムが整備中で、新駅設置が予定
富山県富山市:あいの風とやま鉄道新富山口駅予定地周辺
大阪府箕面市船場地区:北大阪急行延伸で設置される新駅周辺
福岡県福岡市:地下鉄七隈線の延伸で設置される新駅「櫛田神社前駅」周辺
(4)物流施設の需要の高まりによる地価上昇
工業地については、インターネット通販の拡大に伴う大型物流施設用地の需要が強く、高速道路のインターチェンジ周辺等の交通利便性に優れる物流施設の適地となる工業地では地価の上昇率が拡大しています。
地点別の上昇率では、沖縄県糸満市の工業地(糸満9-1)が上昇率 28.4%となり、住宅地・商業地の上昇率1位を上回りました。
(5)住宅地・商業地の最高価格
全国の住宅地の最高価格地点は東京都港区赤坂1丁目(標準地番号:港-4)で、価格は5,000,000円/㎡、上昇率は前年比+3.3%となりました。
一方、商業地の最高価格地点は東京都中央区銀座4丁目(標準地番号:中央5-22)で、価格は53,000,000円/㎡、前年比△1.1%と下落幅は縮小したものの前年に引き続き下落しました。