市況・マーケット
~東急リバブル不動産鑑定士が見る~「令和6年 地価公示」
2024年4月22日
「令和6年地価公示」(令和6年1月1日時点の土地価格)が国土交通省より3月27日に発表されました。
【まとめ】
全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。
全用途の全国平均では、バブル期以来33年ぶりの伸び率を示しました。
三大都市圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。東京圏、名古屋圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。大阪圏では、全用途平均・住宅地は3年連続、商業地は2年連続で上昇し、それぞれ上昇率が拡大しました。
地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇しました。全用途平均・商業地は上昇率が拡大し、住宅地は前年と同じ上昇率となりました。
※地価公示は1月1日時点の価格であり、直近の経済環境の変化などは反映されていません。また、今回の地価公示では1月1日に発生した能登半島地震の影響は考慮されていません。
Ⅰ.令和6年地価公示の概要
令和6年 | 住宅地(前年) | 商業地(前年) |
---|---|---|
全国 | + 2.0%(+ 1.4%) | + 3.1%(+ 1.8%) |
三大都市圏 | + 2.8%(+ 1.7%) | + 5.2%(+ 2.9%) |
東京圏 | + 3.4%(+ 2.1%) | + 5.6%(+ 3.0%) |
大阪圏 | + 1.5%(+ 0.7%) | + 5.1%(+ 2.3%) |
名古屋圏 | + 2.8%(+ 2.3%) | + 4.3%(+ 3.4%) |
地方圏 | + 1.2%(+ 1.2%) | + 1.5%(+ 1.0%) |
- 東京圏:
- 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県内の首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町村の区域
- 大阪圏:
- 大阪府、兵庫県、京都府、奈良県内近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域
- 名古屋圏:
- 愛知県、三重県内の中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域
- 地方圏:
- 三大都市圏を除く地域
地価公示とは
地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和6年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。
※福島県においては、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内の6地点で調査を休止しています。
Ⅱ.トピックス
(1)全国上昇率トップのポイントは住宅地では「北海道・富良野市」、商業地は「熊本県大津町」
全国の住宅地で上昇率1位となったのは北海道・富良野市(標準地番号:富良野-201)で、上昇率は前年比+27.9%となりました。
観光、スキーなど1年を通じて楽しめるリゾート地として、外国人の別荘需要が高まっています。
商業地の上昇率1位は熊本県・大津町(標準地番号:熊本大津5-1)で前年比+33.2%、2位熊本県・菊陽町(標準地番号:菊陽5-1)で 前年比+30.8%となりました。
菊陽町において、2月に台湾の半導体大手メーカーの工場が完成し、隣接の大津町を含めた周辺地域で、関連する企業の事務所やホテルなどの不動産需要の高まりにより地価が上昇しました。
(2)インバウンド需要
新型コロナウイルスの影響から回復し、経済活動正常化に加え、円安を背景とした外国人観光客が増加、飲食店やホテルなどの業種での不動産需要の増加などが、地価を押し上げる結果につながりました。
(3)半導体工場の進出
熊本県大津町、熊本県菊陽町、北海道千歳市:熊本県大津町、菊陽町はJASM(TSMC子会社)による半導体の生産開始を見据え、多くの関連企業等が進出しており、共同住宅を中心に旺盛な需要が続いているものの、供給が限定的であるため地価は高い上昇を見せています。
北海道千歳市では千歳駅周辺ではラピダスの進出決定以降、工場建設作業員や進出予定の関連企業の共同住宅、ホテル、事務所用地の需要が旺盛であることから、地価の高い上昇が継続しています。また、工業地については、関連企業の工業用地等の需要が旺盛となっており、 地価は大幅な上昇に転じました。
(4)インフラ整備、再開発等の進展等
東京都渋谷区:渋谷駅周辺では人流が回復しているうえ、複数の再開発事業等の進展による賑わいの向上が期待されることから、地価の上昇が継続しています。
石川県小松市、福井県福井市、福井県敦賀市:小松駅周辺では、東西駅口広場及び公立大学とホテル等の複合施設の整備や観光交流センターが開業しました。
福井駅周辺では、再開発事業が進捗し、新たな店舗の出店もあり繁華性向上への期待感が見られます。
敦賀駅周辺では、新幹線駅前広場等の整備及びホテル、商業等複合施設が開業しました。 新幹線開業への期待感や駅周辺関連施設の開業等により、地価の上昇が継続しています。
広島市南区:広島駅南口広場再整備事業や駅ビルの建替えの進展により地価が上昇しました。
(5)住宅地・商業地の最高価格
全国の住宅地の最高価格地点は東京都港区赤坂1丁目(標準地番号:港-4)で、価格は5,350,000円/㎡、上昇率は前年比+4.5%となりました。
一方、商業地の最高価格地点は東京都中央区銀座4丁目(標準地番号:中央5-22)で、価格は55,700,000円/㎡、上昇率は前年比+3.5%となりました。