仕組みを変え、各サービスを同時に伸ばす
2015年08月28日
―リバブル・榊社長に方針と市場環境を聞く
東急リバブル社長に、東急ハンズ社長から着任した榊真二氏(東急不動産ホールディングス取締役)。「革命」期の不動産流通市場で、業界トップの一角として流通業にどう取り組むのか。事業方針や市場認識を聞いた。
―不動産流通業に、どう取り組むのか。
榊氏 不動産流通業界は、これから大きく環境が変わる。業界環境が目まぐるしく変化する小売業界を8年間経験し、変化への対応力を得た。収益モデルを含めて、業界のいろいろな仕組みを変えていくことが自分の使命だ。当社は仲介のほかにも新築販売受託、マンションの自社開発・分譲、収益不動産の開発やインバウンド投資まで、ひとつの会社で提供できるものが非常に多彩だ。これらを全て同時並行で伸ばしていく。順番をつけて何かを優先する余裕はない。
―足元の市況は。
榊氏 リテール仲介は、都心だけでなく郊外も地方も全て良い。手数料収入・取引件数ともに第1四半期は前年同期比2割増だった。売買ニーズのバランスもとれている。足元は良い環境にあり今年後半もそれに変わりはないと思われるが、直近で株価が崩れているのが不安要素。ホールセールも大型取引は少なくなっているものの全般では順調。だが、株価の影響をより強く受けるので、やはりその動向が不安要素になる。
―差別化をどう図るか。
榊氏 既存サービスでは、建物と住宅設備を保証する「リバブルあんしん仲介保証」が1万5000件以上もの申し込みを得て、売却物件の専任受託に役立っている。単に売買だけをやっているだけでは他社との差別化ができない。今後ますます多様化するニーズに対し仲介業という立場でどう接するかを考え、新たなサービスを考えていく。
―インバウンドなど、グローバル対応は。
榊氏 海外に4拠点を設けているが、取引件数が最も多いのは台湾。次いで香港、上海、シンガポールと続く。5億~10億円の商業ビルを中心に一棟レジやオフィスビルなどが幅広く人気だ。将来、海外でどんなことができるかを検討するアンテナは常に張っている。アウトバウンド投資に応えることも考えられるし、その国の流通ビジネスに参入できるかも探っていく。
―店舗戦略について。
榊氏 現在、163店舗。毎年10店舗増やし、200店舗を一つの目標としている。首都圏でも空白地帯はある。城西、城東を中心に増やしていく。
―仲介手数料のあり方をどう考えるか。
榊氏 きめ細やかなフルサービス型と、サービス限定型と、受けるサービスの内容によって消費者が選べるものが分かれていく可能性はあるだろう。安易な手数料の値下げはサービスの品質を下げることになり良くない。また、売買の手数料上限が同じというのは、かかる手間に差があることを考えるとバランスがおかしい。売り物件には重要事項説明の作成など手間がかかる。買いの手数料は売りよりも低くて良いと思う。
―囲い込み問題について。
榊氏 当社は取引件数のうち6割弱が両手取引だが、両手取引のための囲い込み行為は厳しく禁止している。一方で、囲い込みと両手取引は全く別の話。囲い込みが悪いから両手取引も悪だとする意見はおかしい。売りと買いのニーズを適正な価格でマッチングさせるのが流通業の基本だ。売りだけをやる業者が「高く売ります」と言ったところで、買う客からみれば高い買い物になるということ。両手取引は顧客の選択肢の一つであり、ニーズも確かにある。適正価格の取引かどうかが重要だ。
(提供:日刊不動産経済通信)