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ストック時代~変革期の流通・管理②

2015年08月31日

◎IT重説、社会実験として本日スタート
 ―遠隔取引に利点、ビジネスチャンスにも

 国土交通省の「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験」(IT重説社会実験)が本日―31日からスタートする。新たな手法は、ビジネスチャンスにつながるのか。社会実験では、賃貸・法人取引に限定してIT重説が認められる。このうち、大手では、法人取引での実験参加が中心となる。

 ソリューション事業本部の取り組みで、全国から海外にまで法人取引を展開する東急リバブル。同社の真二社長は、「法人案件は全国にまたがる。地方物件は高額ではないため、出張を減らしてスムーズな取引ができればコスト削減になる。プロ同士なので個人以上にITでできる部分は多い」と期待する。

 同じく法人取引で参加する野村不動産アーバンネットは、「ITの活用推進は、社の姿勢。参加することでさらにノウハウを得られる。忙しくて時間がない顧客や地方物件を地元の富裕層が購入する場合などで実施を見込んでいる」と意欲をみせる。

 一方、賃貸取引サイドの期待も大きい。旭化成賃貸サポートは「賃貸仲介にはITの活用が必須。住居系賃貸は契約までIT化することが望ましいし、それが主流となると考えている」と、契約までITで完結させることを視野に入れている。

 また、東急住宅リースは、「名義変更や同物件内での移室でも重説は必要。そうした活用も見込んでいる」と新規以外にも目を向けている。中古ワンルーム投資の日本財託は、「新経済連盟を通じてIT重説を要望していた。IT導入が遅れている業界。これを機に顧客サービスの向上を期待する」。

 社会実験には、地方業者も多数参加する。246社のうち、半数以上の128社は首都圏以外の事業者だ。福岡の三好不動産は、海外を含む遠隔地の顧客への利便性向上をメリットに挙げつつ、「ウェブ内覧やスマートキー体制などが整わないと本当の意味でのメリットにはならない」と業者側の設備投資の必要性を強調。大阪の宅都は、「より良い業界づくりにおいてITは重要な役割を担う。安全性と利便性を確保し、スムーズな取引で賃貸不動産をもっと身近に感じてもらいたい」(太田卓利社長)とし、仙台の今野不動産も「遠隔地の契約が便利になる」(今野幸輝専務)、高松の穴吹不動産流通も「法人取引で活用する。経費と時間の節約になる」とした。

◎懸念も多々、不動産業とITのあり方問う

 期待が大きい社会実験だが、懸念事項も多々ある。「対面と比較して十分に伝わっておらず、入居後にトラブルになるケース」(今野不)が想定され、「一部業者に反対者がいる。業界の足並みが揃っていないのは懸念だ」(穴吹不流通)との声もある。社会実験には、IT重説を受ける借主だけでなく貸主などの同意も必要。実施件数を伸ばすため、「社会実験の開始をもっと広く周知することが必要」との声は多くで挙がった。

 賃貸・法人取引が解禁されれば、個人売買への波及も現実味を帯びてくるが、これには依然として慎重な意見が多い。社会実験の期間は2年間。実験開始後は半年に1度検証を行う「検証検討会」が開かれる予定だ。検討会で問題がないと判断されれば、期間を前倒しして本格運用に移行する。個人売買は、検証検討会でどのような報告が出てくるのかにもよる。

 実験参加企業の6割を擁する全国宅地建物取引業協会連合会では、「IT化の進展が世の中の流れとは理解しているが、利便性や効率化ばかりを優先して、消費者保護とのバランスを欠くようなことはあってはならない」(小林勇常務理事)と警鐘を鳴らす。

 利便性や効率化も、行き過ぎれば物件を一度も見ずに契約できてしまうことになりかねない。それではトラブルのない健全な不動産取引とは呼べないだろう。社会実験は、将来の不動産業とITのあり方を問うことになる。

(提供:日刊不動産経済通信)

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