特集・注目エリアの地価動向④池袋
2019年09月30日
◎大規模な再開発事業が進みエリアが変貌
―道路整備や新移動システムの構築も並行
東京・豊島区の池袋駅周辺は、総面積約143㏊に及ぶ大規模再開発事業に伴い、大きく変わりつつある。都道府県地価調査では首都圏宅地の上昇率順位上位10位の中に同区の基準地3地点が入った。再開発は途上段階で、20年の「ハレザ池袋」全面開業、24年竣工の総戸数1500戸規模の超高層マンション2棟などを控えている。
池袋での大型再開発は78年にサンシャインシティが竣工して以来で、規模は当時を大きく上回る。進行中の池袋から新宿、渋谷間と、池袋と北区を結ぶ2本の道路事業や木密地域解消事業とも関連。主要な整備箇所は、駅の東側が①豊島区庁舎跡地周辺(約0・7㏊)②造幣局跡地(約1・5㏊)③南池袋二丁目C地区(約1・7㏊)などで、西側も商業・文化芸術拠点として再開発する方針だ。東京建物などが開発するハレザ池袋は豊島区庁舎跡地の再開発で、19年に竣工したホール棟と20年に竣工する地上33階のハレザタワーを中心とするビジネス・文化芸術・国際都市化の拠点となる。造幣局跡地は23年に東京国際大学のキャンパスが整備される。南池袋二丁目C地区は24年にタワマン2棟が建つ。区庁舎が入る「としまエコミューゼタウン」と都電・雑司ヶ谷、東京メトロ有楽町線・東池袋など3駅に隣接する。同区が先立って行った公園整備や、24年以降に予定する保健所の移転計画も加わり、生活利便性・住環境も大きく向上する。このほか、電気バスによる新移動システムの構築や池袋駅の東西をつなぐ地下道「ウイロード」の改修などによるソフト面の整備も並行して進んでいる。
今年竣工した野村不動産の分譲マンション「プラウドタワー東池袋」(132戸)は、販売平均坪単価が427万円、ハレザ池袋のオフィス棟(延床面積約6万8600㎡)の募集賃料は、7月時点で坪当たり約2万9000円。国土交通省は今回の地価調査結果について「再開発の影響が出始めたばかり」とするように、今後は分譲価格、賃料ともに上昇する見込み。豊島区都市整備部再開発担当課では、「池袋の再開発は、一般的な駅から周辺に向かう開発でなく、道路整備事業との兼ね合いで周辺から駅に向かう開発になっている。目指す方向性と将来像も明確かつ個性的だ。住宅に関しては、充実した子育て支援体制も若い世代の方々に魅力的だろう。同じく話題になっている晴海や品川・高輪といった首都圏のほかの再開発地域とも差別化できている。ハード面・ソフト面ともに、ポテンシャルは計り知れない」とみる。
◎中古価格上昇・成約増、今後にも期待
再開発が進む池袋エリアでは、中古価格も上がってきており、取引量も増加傾向が続いている。元々はタワーマンションの供給エリアではなかったが、池袋駅西側で04年に竣工した「ザ・タワー・グランディア」を皮切りに、東池袋駅周辺を中心にタワマンの供給が進んだ。00年代のタワマンの新築分譲時の平均坪単価は200万円台中盤が相場であったが、17年には中古で坪単価400万円近くまで上がっている。新築分譲時より2~5割増しの価格での成約が多く、07年竣工の「エアライズタワー」では、分譲時価格4600万円だった物件が、8400万円で成約した事例も出た。17年あたりまでは急速に中古価格が上昇してきたが、足元は横ばいから緩やかな上昇傾向といったところ。
成約件数も伸びている。東急リバブル池袋センターでは直近5年で同エリアの成約件数が約3割増しになった。同エリアは再開発による発展途上で、今後もオフィスやマンション、商業施設の整備が予定され、「開発がさらに進むので、ポテンシャルは高い」(東急リバブル池袋センター)、「キャパシティが増え、需要が増加し、取引量も価格もさらに上がるだろう」(住友不動産販売)と、各社の期待は大きい。
需要層は、タワーマンションがDINKSやプラス子供1人、中低層マンションはファミリーが多い。外国人の実需が増えてきているのも同エリアの特徴。1LDKで4000万円台などの投資需要も拡大しており、区分所有物件のオーナーチェンジも増えてきているという。三井不動産リアルティは「劇場やシネコンなどの文化施設や公園のリニューアルなどで街並みの整備が進み、ファミリーや女性の単身者からの住み替え依頼が増えてきている」とする。
(提供:日刊不動産経済通信)