新型コロナで不動産市場は「曲がり角」
2020年05月15日
―ニッセイ基礎研、ホテルや商業の下落大
ニッセイ基礎研究所は14日、不動産投資レポート「不動産クォータリー・レビュー2020年第1四半期」をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産市場は今後、厳しい経済ショックの打撃を避けられず、「不動産市場は曲がり角に直面している」と指摘した。
市場動向の先行的な指標とされるJリート市場については、3月末時点の時価総額を基に、NAVやアセットタイプ別の保有比率からアセットタイプ別の価格下落率を算出した。それによると、下落率は市場全体で8%だが、ホテルは34%、商業施設は20%と大きく下げた。直近の時価総額を基にすると下落幅は縮小しているとみられるが、オフィスは6%、住宅は1%だったことと比較すると、ホテルや商業施設はコロナ禍の影響が特に大きい。物流施設は唯一上昇しており、プラス5%だった。物件取引にも影響を及ぼし、Jリート市場の下落によってエクイティ資金の調達コストが上昇することに加え、売り手と買い手の価格目線が合わず、物件取得額は減少に向かうと予想した。
このほか、景気との連動性が高い住宅市場は、4~6月の実質GDPが年率換算で前期比30%台の大幅なマイナス成長の予想や、新築分譲マンションの販売拠点が閉鎖されていることを踏まえると、「当面の間、環境の悪化が続く」と分析。オフィス市場は足元では指標の悪化はみられないが、今後は企業業績の悪化などを背景に新規開設の抑制やオフィス床の減少が予想され、空室率が上昇に転じる可能性が強まっているとした。レポートは岩佐浩人・金融研究部不動産調査室長が担当した。
(提供:日刊不動産経済通信)