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特集 ニューノーマル時代の戸建住宅・コロナ下でも戸建て住宅の需要は手堅い

2020年08月27日

─一部で駆け込み、職住融合で郊外志向も

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、戸建て住宅市場でも「ニューノーマル」仕様の商品が人気になっている。大手ハウスメーカー各社も4、5月は展示場の大幅な集客減(平均で前年同期比約9割減)などが響き苦戦を強いられたが、新商品・プランの投入による新たな市場の需要への早期対応などが奏功し、7月以降は持ち直しつつある。コロナ下でも手堅い戸建て住宅の需要が背景にある。

 6月に入り、中堅価格帯の分譲・建売、企画住宅系は、高価格帯の注文住宅より一足早く回復傾向に入った。積水化学工業住宅カンパニーの6月度受注棟数は分譲戸建てが前年同月の水準に戻り、建売は1割増を達成。継続的な住宅用地の取得強化とストック増による土地戦略で3月時点の販売用在庫は前年同月比約5割増と充実しており、分譲・建売の販売を伸ばしている。ポラスグループの5月の分譲戸建て販売棟数は1割増、6月は2割増を達成した。同社は「厳選した用地仕入れと地域特性に合った分譲戸建ての展開による訴求が奏功し、購入検討者が購入を即決してくださることが増えた」とする。

 低価格帯の戸建て住宅商品の販売はより好調だ。オープンハウスの20年9月期第3四半期連結決算期の建売引き渡し件数は、前年同期比314棟増の1888棟を達成。同社は「経済不安の広がりも一因だろう。もともと住宅購入を考えていたが、コロナで就労スペース付きの広い家が必要になり、どうせ買うなら早く買おうという需要が生じ購入のタイミングが前倒しになった」とみる。ハイアス・アンド・カンパニーの企画住宅を展開する工務店ネット「R+house」の住宅商品は、6月度の受注棟数が前年同月を0・8%上回った。7月以降はさらなる伸長を見込んでいる。

 需要が維持されている要因について、大東建託賃貸未来研究所は「新型肺炎による経済的な理由などから住宅購入を見送り、代わって賃貸住宅を選ぶというのは、国内外とも単身世帯特有の傾向にとどまっている。子育て世帯などの主な住宅購入検討者は、コロナ下でもこれまで同様住宅を購入している」と指摘。加えて、テレワークの普及による「職住融合」で、郊外の戸建て住宅志向も高まった。同研究所が行った6月の全国調査(回答数2000件規模)によると、テレワークを背景にした駅近から郊外への引っ越し意向の高まりが新たに生じたことが判明。前提となるテレワーク普及率は個人年収600万円以上1000万円未満の場合が5割以上、200万円以上600万円未満が2割台。地域別では首都圏が37・5%、首都圏と東名阪以外で19・4%と隔たりがあるが、少なくとも首都圏では普及に至っている。テレワークできない職種で郊外在住の就労者は都心部のマンションなどへの引っ越し意向を有するため、購入検討者全体で郊外戸建て住宅志向が高まったとまでは言えないものの、ハウスメーカー各社の新規受注獲得には追い風の傾向が強まっている。

◎これまでの「通勤優先」型にも変化が

 大和ハウス工業が6月1日に発売した新築戸建て向けの防音個室「快適ワークプレイス」(約3畳の納戸空間で71・5万円から)の展開は、「当初予測を大きく超える好調ぶり」(同社)。モデルルームもなかった6月時点で、同時発売の半個室プラン「つながりワークピット」と合わせた契約棟数は56棟を達成し、7月度も同水準で推移する見込み。内訳は半々。6月の契約者は、以前から一定のワークプレイス需要があったIT関連業の就労者や医師らが主だったが、7月以降はテレワーク普及を受けて顧客の職種・年齢層の幅が広がっている。60歳代以上のリタイア世代からも、書斎として需要を得ている。主な展開地域は三大都市圏で、首都圏では多摩、湘南エリアなどで実績を重ねる。テレワークが普及していない三大都市圏以外はおおむね低調だが、中部・近畿地方は堅調。「土地持ちかつ技術職系の方が多いから」(同社)とみる。

 同社では、「以前は小さな子供がいるユーザーは、子育てに向いた環境の郊外の戸建て住宅志向が高かったが、通勤を優先して駅近のマンションを選ぶ傾向にあった。それが明確に変わり始めている」とする。商品力の点では、ワークプレイスとしての機能を訴求して開発し、長時間使っても疲れにくく便利な奥行60㎝のデスク、汎用性の高い3光色切替LED照明、コンセント埋め込み型のWi-Fiアクセスポイント、オフィス家具に向くカーペット敷の床などを標準採用した点が奏功している。

 積水ハウスは8月に入り、大空間と高天井による主力自由設計プラン「ファミリースイート」に、「在宅ワーク」「おうちでフィットネス」「おいしい365日」などの5プランを加えた。参考坪単価は69万5000円からで、鉄骨系・木質系ともに採用できる。下部組織の住生活研究所による、新型肺炎下での暮らしの変化や需要に関する最新の調査研究結果を元にまとめた。いずれも以前から自由設計で対応できる範疇だが、同社の側からプランとして提案することで、購入検討者は購入後の暮らしのイメージを持ちやすくなり、打ち合わせの効率化にも資する。購入検討者がウェブサイトで簡単に間取りプランを作れる「おうちで幸せプランニング」サービスも始めた。

 高級路線の注文住宅も、富裕層からの高付加価値・高性能・ハイブランド商品の需要自体は堅持されている。ライフスタイル提案の強化やウェブの活用などの手法が奏功するかどうかが今後の焦点だ。

(提供:日刊不動産経済通信)

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