2020年都道府県地価調査・国交省、全国全用途平均で3年ぶり下落
2020年09月30日
―コロナ禍の影響が商業地に色濃く反映
国土交通省は29日、20年7月1日時点の都道府県地価調査(基準地数=2万1519地点)を発表した。全国の全用途平均は△0・6%(前年+0・4%)となり、17年以来3年ぶりに下落に転じた。これまでインバウンドが牽引し、プラスで推移していた全国の商業地は△0・3%(+1・7%)となり、5年ぶりに下落に転じた。全国の住宅地は△0・7%(△0・1%)で下落幅が拡大。全国的に、地価に対する新型コロナウイルスの影響が明確になってきた。
飲食やホテルが集積する商業地には特に影響が色濃く出た。三大都市圏別の商業地をみると、東京圏は+1・0%(+4・9%)、大阪圏は+1・2%(+6・8%)、名古屋圏は△1・1%(+3・8%)。東京・大阪はプラスを維持したが、名古屋の商業地は12年以来8年ぶりに下落に転じた。住宅地は東京圏△0・2%(+1・1%)、大阪圏△0・4%(+0・3%)、名古屋圏△0・7%(+1・0%)。下落幅は商業地に比べ小さかったものの、東京・大阪は13年以来7年ぶりに下落、名古屋は商業地同様8年ぶりに下落した。
三大都市圏の中では、名古屋だけ住・商ともにマイナスになった。名古屋では住宅地にもコロナの下落圧力が強く出たことについて、国土交通省は「名古屋は自動車産業や航空機産業など、製造業が盛んなエリア。製造業の雇用環境に、世界的に不安感が強くなり全体的に下落した」と分析する。もともと住・商ともにマイナス推移だった岐阜県は、近接する名古屋圏の低迷の煽りで住宅地△2・0%(△1・4%)、商業地△2・2%(△0・9%)となり、両方で変動率が都道府県別最低となった。
地方圏は、全用途が△0・8%(△0・3%)、住宅地△0・9%(△0・5%)、商業地△0・6%(+0・3%)で、全用途と住宅地で下落幅が拡大し、商業地は下落に転じた。地方圏内で、近年の地価上昇を牽引してきた地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)は、全用途+4・5%(+6・8%)、住宅地+3・6%(+4・9%)、商業地+6・1%(+10・3%)となり、上昇は継続するも上昇幅が縮小。地方四市を除くその他地域は全用途△1・0%(△0・5%)、住宅地△1・0%(△0・7%)、商業地△1・0%(△0・2%)で下落幅が拡大した。地方圏に波及し始めていた地価上昇の勢いがそがれた。
◎商業地はオフィスとホテル・店舗で明暗
今年の都道府県地価調査は、コロナによって年の前半(19年7月1日~20年1月1日)と後半(20年1月1日~7月1日)で大きく様変わりした。前半では、訪日客の増加で店舗・ホテル需要の高い地域を中心に地価は回復傾向を継続させていた。地価公示との共通地点(1605地点、うち住宅地1109地点、商業地496地点)でみると、前半の全国の商業地は+2・5%だったが、後半は△1・4%に減速。後半はコロナで広がった先行き不透明感から、土地の需要も弱まった。コロナの地価への影響の「商大住小」は、下落地点数の割合をみても明確だ。住宅地の下落地点の割合は63・0%(前回調査51・8%)。商業地は55・5%だが前年は40・5%であり、住宅地と比べると前年からの下落地点数の割合の増加幅が大きくなった。
商業地への影響は、最高価格にもみられた。全国の商業地で最高価格は、15年連続で東京・銀座の「中央5-13(明治屋銀座ビル)」がナンバーワンを守った。しかし、㎡当たりの価格は4100万円で、△5・1%(+3・1%)。明治屋銀座ビルが下落するのは、東日本大震災のあった11年の△2・5%以来9年ぶり。大阪圏の商業地最高価格地点は、「北5-2(グランフロント大阪)」で、㎡単価2360万円(+8・8%)。昨年、インバウンドの活況でドラッグストアなどの出店意欲が高く大阪商業地トップとなった「中央5-3(心斎橋地区)」は、今回は△4・5%でマイナスに転落している。商業地内でも、比較的堅調なオフィスと、訪日客をターゲットとするホテルや店舗とでは、明暗が分かれた形だ。
住宅地の全国最高価格地点は、マンションが建ち並ぶ東京・赤坂1丁目の「港-10」で、㎡単価は472万円(+4・2%)。大阪圏の住宅地最高価格地点は、高級戸建て立地の「天王寺-2」が㎡単価62万9000円(+3・6%)だった。
都道府県別では、変動率がプラスだった都道府県は前年の15から5(宮城県、東京都、福岡県、大分県、沖縄県)に減少した。マイナスの都道府県は、前年32から42に増加。下落に転じる都道府県が増えるなか、前年トップの沖縄県は住宅地+4・0%(+6・3%)で5年連続、商業地+6・2%(+12・0%)は2年連続で首位を守っている。
(提供:日刊不動産経済通信)