21年路線価、全国平均が6年ぶりに下落
2021年07月02日
―36年連続トップの鳩居堂前もマイナスに
国税庁は1日、21年分の路線価(1月1日時点)を公表した。全国の平均値(標準宅地の評価基準額の対前年変動率の平均)が△0・5%となり、6年ぶりに下落に転じた。国土交通省の地価公示価格等を基にした価格(時価)の約8割で評価される路線価は、今年の地価公示の傾向と同様、新型コロナウイルスの感染拡大を受け全国的に前年比マイナスが目立った。
路線価全国トップで知られる東京・中央区銀座5丁目の「銀座中央通り(鳩居堂前)」にも影響はみられた。鳩居堂前の1㎡当たり路線価は4272万円(△7・0%)。36年連続で全国最高価格地点となったものの、9年ぶりに下落に転じた。最高路線価が上昇した都市は8都市に減少(20年は38都市)。横ばいの都市は17都市(8都市)に増え、下落した都市は22都市(1都市)に大幅増となった。都道府県庁所在都市のなかで、最も上昇率が高かったのは仙台の青葉区中央1丁目「青葉通り」で、1㎡当たり330万円(+3・8%)。都道府県別でも前年比マイナスが目立つ。路線価が下落したのは39都府県となり、前年の26県から増加した。最も路線価が上昇したのは福岡県(+1・8%)。最も路線価が下落したのは静岡県(△1・6%)だった。
首都圏は東京都△1・1%(+5・0%)、神奈川県△0・4%(+1・1%)、埼玉県△0・6%(+1・2%)、千葉県+0・2%(+1・2%)となり千葉以外で下落した。近畿圏は、京都府△0・6%(+3・1%)、大阪府△0・9%(+2・5%)、兵庫県△0・8%(△0・1%)、奈良県△1・1%(△0・3%)。
東京国税局管内では、上昇18地点(71地点)、横ばい20地点(10地点)、下落45地点(1地点)だった。都区部で最高地点は鳩居堂前、東京多摩地域の最高地点は「立川市曙町2丁目」が1㎡当たり579万円で16年連続最高。神奈川県は「横浜市西区南幸1丁目」で1608万円。千葉県は「船橋市本町1丁目」が208万円となり、7年連続県内トップ。
地価公示同様、コロナ禍でインバウンド需要が消滅した大阪国税局管内のエリアの下落幅が大きい結果となった。昨年は、年の途中で地価が大幅に下落したことにより路線価が時価を上回る地点が出現。初の補正を導入することとなった。国税庁は、「社会経済の不透明感が強まっている。引き続き21年分についても地価動向の調査を実施し、年の途中で大幅な地価下落がみられれば20年分と同様、路線価等の補正を行う」としている。
21年分の路線価に対し、業界からは次のようなコメントが寄せられた。
菰田正信・不動産協会理事長 コロナ禍の中での経済の状況等が地価に影響したものと認識している。コロナ禍を乗り越え、経済回復を確実なものとするとともに、新たな成長の原動力となる脱炭素化やデジタル化、国土強靱化等に資する国内設備投資や、内需の柱である住宅投資を促進させるために必要な施策を引き続き躊躇なく総動員していくことが不可欠だ。
坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 都道府県庁所在都市の最高路線価の上昇都市は前年分より大幅に減少した。一方、直近の国土交通省の地価LOOKレポートでは、下落、横ばい地区が減少し上昇地区が増加していることから地価の回復傾向がうかがえること、全宅連不動産総合研究所の土地価格DI調査では4月時点の土地価格の動向は、実感値で全国平均がプラスに転じたことから、足元の確実な回復に期待するものである。
秋山始・全日本不動産協会理事長 評価基準額の対前年変動率全国平均値が6年ぶりに下落に転じるなど、コロナ禍の停滞状況がいまだ継続していることが見て取れる。今後、8月下旬発表の「地価LOOKレポート」第2四半期と9月下旬発表の「都道府県地価調査」など市場の動向を見定めるうえで非常に重要な指標のリリースが続く。引き続きこれらを注視するとともに、全国3万3千社余りの会員を通じて現場から届く生の声をつぶさに把握していく所存だ。
吉田淳一・三菱地所社長 新型コロナウイルスの影響を受けた結果となったが、働き方の変化などに伴い、不動産事業においては新たなニーズも生まれてきている。引き続き状況は注視していく必要があるが、当社グループとしても、そのような社会の変化に柔軟に対応しながら、事業を推進していく。
(提供:日刊不動産経済通信)