新宿に熱狂を生む大規模エンタメタワー
2022年06月20日
―東急新宿PJ室長・木村氏に展望を聞く
新宿駅周辺で再開発による大規模施設の建設計画が相次ぎ、街が大きく変貌しようとしている。先駆けとして23年4月に開業する「東急歌舞伎町タワー」について、東急の新宿プロジェクト企画開発室室長・木村知郎氏に聞いた。
―東急ミラノ座跡地に新しいタワーが開業する。
木村氏 新宿駅周辺は、これからの10年間で変化が加速する。街の大きな課題だった人の流れの分断が解消されていき、東西南北を自由に移動でき、回遊性が高まる「グランドターミナル構想」が進んでいく。新宿は、1つの街といえる規模のエリアがいくつもあるとても大きな街となっている。その中で、東口を出て新宿駅と新大久保駅の間に近い歌舞伎町という歴史のある繁華街に大規模なエンターテインメント施設が集積するタワーを開発する。コンセプトを「好きを極める場」として、空港ともつながるバスターミナルや広場の設置など、街の基盤整備にも取り組む。総事業費はコロナ禍や資材価格の高騰の影響もあり、まだ見通せない。新宿という街はそもそもインバウンド需要も強かったが、開業時は国内需要で安定した運営の地盤を作る。24~25年にかつての水準でインバウンドも盛り上がりをみせると想定している。歌舞伎町という街の魅力を最大化し、新宿全体の発展に貢献して、これまで歌舞伎町を楽しんできた層に加えて新しい来訪者の目的地となり、熱狂が消費を生む場所にしていく。
―低層階では多様なコンテンツを提供する。
木村氏 地下1階から地下4階は1500名規模のライブホール、6~8階に劇場を設置。多様な夢をコンテンツとして拾い上げ、世界へ羽ばたいてから戻ってくるような循環を創りたい。9~10階は、新ブランドのシネマコンプレックス「109シネマズプレミアム新宿」となる。商業施設は、その場で体験しながら、場所や時間を超えてオンラインでの接点も設けるアミューズメント施設などを整備する。物販・飲食の店舗では街とのつながりを重視する。海外の観光客からは、新宿の街はゲームや映像で触れてきたため、バーチャルな場の中にリアルでいる感覚になるとの声もある。庶民発の大衆文化が受け継がれてきた歌舞伎町と一体となり、安全に街を楽しめる空間を提供する。
―中上層階は約600室の2つのホテルとなる。
木村氏 中層階のライフスタイル型の「ホテル グルーヴ 新宿」では、歌舞伎町の街を遊び倒してもらいたい。上層階では、高級感のある上質なホテルライフを楽しむ「ベルスター 東京」として、最上階には豪華なペントハウスも設けた。2つのホテルは、新宿に特化した新ブランドとして、東急ホテルズが運営する。様々なエンターテインメントとコラボもしていく。たとえば低層階でコンサートに行って余韻に浸ったまま、アーティストの世界観を寝るまで体験できる雰囲気づくりや、特別なメッセージや客室のモニターを通じてコミュニケーションを取るなど様々な仕掛けを行う。友人同士の共有やファンコミュニティ形成など、「好き」の熱狂を強めるコンテンツを届けていく。
―東急グループにとって新宿エリアは。
木村氏 東京の国際競争力を強化していく上で重要なエリアだ。東急グループがこれまで開発してきた渋谷や、原宿はファッション文化が根強い。一方で新宿は、裾野の広いエンターテインメントが脈々と続く歴史がある。複数のデベロッパーが違った観点からまちづくりをしていくことで、重層的な魅力が付加されていく。街の価値を向上していくチャンスがあれば、今後も新宿で事業を行っていきたい。
(提供:日刊不動産経済通信)