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日銀の金融政策と不動産市場への影響(下)

2023年01月25日

◎年内に金融引締め局面になる公算小さい
 ―吉野氏、住宅ニーズ変化で供給側に機会

 ―日銀の総裁交代が金融政策に影響すると思うか。

 吉野氏 そうは考えていない。中央銀行の政策変更は基本的に物価情勢がどう変わるかで決まる。日本では今年の後半にかけて物価上昇率が下がる公算が大きく、日銀が金融引き締めを余儀なくされる局面にはならないだろう。ただ100%引き締めがないとは言えない。今は過去に比べ物価が上がりやすく、物価上昇を理由に日銀が金融緩和を縮小する可能性もある。

 ―資源価格が高止まりしている。

 吉野氏 資源価格は21年後半から22年半ばにかけて上がり、昨秋まで円安も進んだ。今年の半ば以降も今のようなコスト高の情勢が続くとすれば、物価上昇率は下がっていくと考えられる。物価上昇率は前年同月比で計算するためだ。コストが上がり切った時点との比較では物価上昇率は高くは表れない。

 ―企業も家計も物価上昇を当然と受け止め始めた。

 吉野氏 日本の物価上昇が抑えられていたのは、皆がそれを当たり前だと考えていたからという側面がある。物価上昇が続けば世の中はそれを受け入れる。そうなれば日銀が目標とする2%の物価上昇が定着し、金融緩和を縮小する議論が本格化することになる。

 —都内のマンション価格はすでに高い。物価上昇が定着すると需給に影響が出そうだ。

 吉野氏 人々が物価上昇を信じ、賃料も上昇すればマンションの価格も上がる。ただ同時に所得も上がるという期待感が伴わなければ、生活防衛の観点で住宅取得予算は減る。日本はデフレの時期が長く続いてきた。物価が継続して上がるという機運は高まりにくい。この先、物価が上がっても、住宅取得の意欲を減退させる効果の方が強く出るように思う。

 ―円相場が不安定になってもいる。

 吉野氏 政府が財政再建への本気度を常に見せていないと日本の金融環境はたやすく変わる。際限のない国債発行を是とする誤った論者もいるが、財政をしっかりと守り、再建を諦めない姿勢を示す必要がある。

 ―欧米など海外の中央銀行も利上げに動く。

 吉野氏 金融引き締めを余儀なくされている英米や韓国などの不動産市場では、政策金利と長期金利が上昇しても不動産のキャップレートは上がっていない。不動産の価値には足元の情勢だけでなく市場参加者の将来期待が織り込まれるからだ。金融政策や金利動向などが不動産市場に即座に影響しないゆえんだ。

 ―人口減少が進む日本の住宅価格をどう見積もる。

 吉野氏 住宅の価格や賃料は「財」とは違い、単純な需給曲線ではなく競争力の高低に左右される。人口が減る日本では住宅の希少価値は期待できないが、競争力が高い住宅とそうでない住宅が等しく価値を落とすこともない。すなわち優勝劣敗がさらに進む。生活者の目線でニーズに応えられない住宅は経済的な陳腐化が早まる。消費者の需要にマッチする住宅を考えて売るという観点では、供給者側にまだまだ投資機会があるだろう。世に住宅の数が余っているのだから新築供給を制限せよという思想は明確に誤りだと言える。

 ―中古住宅のマーケットが拡大している。

 吉野氏 掘り出し物の中古住宅が市場に出回り、住み手の新しい価値観に適合していく流れは需給双方にとって有益だ。一方、陳腐化した家に数合わせで無理に住ませるようではいけない。この20年で良質な中古住宅が蓄積されてきた。それらを流通させていくと同時に、デベロッパーなどが新しい住宅を世に出していくという二つの流れを作る必要がある。

(提供:日刊不動産経済通信)

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