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2023年地価公示・経済活動持ち直し、地価上昇が顕著に

2023年03月23日

―業界トップ、海外経済の下振れを懸念

 23年の地価公示は全国の全用途平均、住宅地、商業地がいずれも2年連続で上昇し、上げ幅も拡大した。コロナ禍による社会的混乱が落ち着きをみせ、経済活動や市街地の人出が戻りつつあるなか、複数の不動産業トップが業績回復への手応えを実感している。一方で長期化するウクライナ危機やインフレの進行、海外経済の下振れ懸念などへの警戒も解いてはいない。当面は、いっそう慎重なかじ取りが求められそうだ。

 菰田正信・不動産協会理事長 今回の地価公示では都市部を中心に地価上昇が続くとともに、地方部でも上昇範囲が広がるなど、経済活動が緩やかに持ち直す動きが反映された。一方、世界経済の先行きは不透明さを増しており、今後の動向は十分に注視する必要がある。コロナがもたらした価値観や社会構造の不可逆的な変化を的確にとらえ、社会課題の解決と経済成長を同時に達成する取り組みが重要だ。

 竹村信昭・不動産流通経営協会理事長 景気が緩やかに持ち直している中、都市部の地価上昇が継続し地方部に拡大するなど、順調な回復傾向が見られた。全国全用途平均の地価は住宅地、商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。地方圏その他地域の地価についても、全国全用途平均と商業地が3年ぶり、住宅地は28年ぶりに上昇に転じた。東日本不動産流通機構の統計によると、首都圏マンションの成約価格は33カ月連続で対前年比上昇が続いている。他方で、成約件数は減少傾向、売り出し中物件数は漸増傾向にあり、今後は価格や金利の動向が及ぼす影響などマーケットの変化に注意を払う必要がある。当協会としては、ウィズコロナの下でわが国経済を成長軌道に乗せるために地価が底堅く推移することが先ずもって重要と考えている。内需の牽引役である住宅・不動産流通市場のさらなる活性化に引き続き取り組んでいきたい。

 坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 新型コロナや国際情勢の影響を受けこれまで弱含んでいた地価は、全国的に回復の兆しを示した。都市部を中心に上昇が継続しており、徐々に地方部へも波及し、全用途の平均、住宅地、商業地は2年連続で上昇幅も拡大傾向だった。全宅連不動産総合研究所の不動産市況調査でも同様の傾向で、直近、1月の土地価格動向DIにおいても実感値でプラスの5・6ポイントで不動産市場を取り巻く環境も改善傾向のマインドを示している。全宅連では、令和6年税制改正で今般の地価上昇によって急激な固定資産税の負担増とならないよう要望していく。また、延長・拡充される「低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置(100万控除)」「空き家等の発生を抑止するための特例措置(3000万円控除)」や段階的に施行が予定されている所有者不明土地の解消に向けた各種制度を実行していく。社会的な課題の空き家、所有者不明土地等の解消に向け、鋭意取り組んでいきたい。

 秋山始・全日本不動産協会理事長 全国平均で、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、かつ上昇率も拡大した。昨年からの地価回復傾向が勢いを増している。圏域別には、地方四市の平均変動率が住宅地・商業地ともに10年連続で上昇するなど堅調が続き、中でも札幌、福岡の上昇基調は極めて安定的だ。中枢都市の動向が一部周辺地域に波及する傾向は昨年から強まり、住宅地・商業地ともに変動率上位10傑を札幌市に隣接する北広島市、江別市、恵庭市、千歳市が占めたのが象徴となった。地方圏では全用途平均・商業地の3年ぶりの上昇や、住宅地で28年ぶり上昇に転じるなど、郊外部にも上昇範囲が拡大した。こうした地方圏の地価回復傾向は非常に好感を持っている。また、インバウンド需要の急回復と賃金指数の大幅な伸びも伴い、さらなる景気の好循環が起こると期待している。当面は右肩上がりが続く消費者物価指数と、首都圏を中心に高騰し過ぎた感のあるマンション価格との対峙が鍵となるだろう。

 吉田淳一・三菱地所社長 住宅は都心の高額物件の需要が引き続き旺盛だ。ホテルは国内需要が底堅い。住宅もホテルも、訪日需要が徐々に戻りつつあると感じている。オフィスは、コロナの収束に伴い、業容が拡大している企業を中心に移転の検討が活発化している。リーシングにおいては特に都市中心部でニーズの底堅さを実感している。アウトレット施設も国内需要は引き続き好調に推移し、コロナ禍以前と同程度の水準を保っている。

 仁島浩順・住友不動産社長 経済活動の正常化が進み、商業地ではホテルや商業店舗の需要が大幅に改善した。東京のオフィスビル市況も、一進一退の様相が続きながらも、企業の出社率の高まりや採用増を背景として、立地改善の移転や増床など前向きなニーズが増えている。住宅地は、低金利環境や住宅取得支援策などが下支えとなり、希少性のある都心や生活利便の高い地域を中心に需要が堅調に推移した。

 岡田正志・東急不動産社長 住宅地の地価は、希少性の高い都市中心部の土地や交通利便性に優れる周辺地域で上昇が続いている。低金利環境の継続など政策面でも需要が下支えされている。商業地では都心を中心に店舗やオフィスなどの需要が堅調で地価上昇につながっている。訪日客の減少による地価下落は一時的な現象とみられ、「アフターコロナ」の需要回復で都市中心部の地価回復は当面続くとみている。

 野村均・東京建物社長 賃貸オフィスは上昇基調だった空室率が一部地域で低下に転じた。原則出社に戻す企業が増え、採用拡大などに伴う増床の動きもある。企業業績の回復とともにオフィス市況も落ち着きを取り戻すだろう。ホテルと店舗は行動制限の緩和などで人流が回復し、売上げの回復傾向が続きそうだ。分譲マンションは生活様式の多様化などで需要のすそ野が広がり、需給バランスも良好だ。用地取得の環境は厳しく、建築費高騰や住宅ローン金利上昇などの懸念もあるが、良質な住宅の需要は依然として底堅い。

 松尾大作・野村不動産社長 住宅は用地案件の減少などで供給が限られる一方、需要は底堅い。オフィスの空室率は一進一退の状況だが、出社率の回復や拡張移転などの事例も増えている。商業は生活必需品を扱う地域密着型施設などの回復が顕著だ。ホテルは特に国内の利用客が増え稼働率は上昇している。物流もeコマースの拡大を背景に旺盛な需要がある。

 伊達美和子・森トラスト社長 東京都心3区を中心としたプライムエリアでは高品質なオフィスの供給が見込まれ、地価は堅調に推移しそうだ。地方では国内外の観光需要の回復に呼応するかのように観光地の地価上昇が続くと予想される。コロナ禍を経て人手不足や原材料費高騰などが顕在化したが、「持続可能な観光」の実現に向け、観光DXや旅行者誘致などに官民で取り組むことが求められている。

(提供:日刊不動産経済通信)

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