23年路線価、+1・5%で2年連続上昇
2023年07月04日
─東京国税局管内では32年ぶり下落ゼロ
国税庁は3日、相続税や贈与税の土地評価額のベースとなる23年分の路線価(1月1日時点)を公表した。全国平均は+1・5%で、2年連続の上昇となった。昨年の+0・5%を上回る上昇で、新型コロナウイルスの影響からの回復が鮮明になった。都道府県別で最も高い上昇を示したのは北海道の+6・6%(前年+4・0%)。5%以上路線価が上昇した都道府県が出るのは、20年(沖縄県+10・5%、東京都+5・0%)以来。札幌市を中心とする全体的な需要の高さが牽引した。
路線価が上昇した都道府県の数は25(前年20)に増加し、下落した都道府県は20(27)に減少した。路線価の最高地点は東京・中央区銀座5丁目の銀座中央通り(鳩居堂前)で、1㎡当たり4272万円(前年比+1・1%)。38年連続で路線価全国トップとなったが、20年に記録した過去最高額4592万円には届かなかった。都道府県別では、首位の北海道に続き福岡県が+4・5%(前年+3・6%)、宮城県が+4・4%(+2・9%)。いずれも昨年を上回る上昇をみせた。最も下落したのは和歌山県で△1・2%(△1・3%)だったが、下落幅は前年から縮小した。都市別では、最高路線価が上昇した都市は29都市(前年15都市)で、昨年の倍に近い増加。横ばいは13都市(16都市)、下落した都市は4都市(16都市)。都市別でも、上昇都市の増加と下落都市の減少がみられる。
都道府県庁所在都市の最高路線価で全国トップだったのは岡山市の「北区本町市役所筋」で+9・3%(+1・4%)となり、前年の7倍近い上昇。市中心部で進む再開発が牽引した。
東京国税局管内(84税務署。所管=千葉県、都区部、多摩地域、神奈川県、山梨県)では、全税務署の路線価が上昇し、91年以来32年ぶりに下落した地点がゼロになった。東京でも回復傾向が鮮明になる一方で、東京都心部のオフィス街はまだ本格的な回復には至っていない。麹町税務署管内の「千代田区丸の内2丁目大名小路」は、前年の△1・3%から今年は0・0%の横ばいに乗せたものの、「テレワークが普及して、事務所の需要が戻っていない」(東京国税局)。「会食需要はまだ戻っていないが高級ブランド店の売上が堅調で、インバウンドも少しずつ戻っている」(同)という銀座の「中央区銀座5丁目銀座中央通り」は+1・1%(△1・1%)だった。近隣でもオフィスと商業にわずかながら差がみられる。回復が鈍い都心オフィス・商業とは対照的に、インバウンド観光客が戻りつつある浅草の「台東区浅草1丁目雷門通り」は、+7・0%(+1・1%)へとV字回復をみせた。
23年の路線価に対し、業界からは次のようなコメントが寄せられた。
吉田淳一・不動産協会理事長 今回の路線価では、標準宅地の評価基準額の対前年変動率の全国平均が2年連続で上昇した。上昇率も前年より高まるなど、日本経済の緩やかな回復が地価に反映されたものと認識している。一方、長期化するウクライナ危機や世界的な物価高騰、海外経済の下振れ懸念などにより、経済の先行きは非常に不透明な状態だ。今後の地価動向について十分に注視していく必要がある。
坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 都道府県庁所在都市の最高路線価の上昇都市は29都市で大幅な増加であったため、全国規模で上昇基調となった。来年は3年に1度の固定資産税評価の見直しがあり、地価上昇は不動産取引の負担増加につながりかねない。少子高齢化、人口減少による空き家の増加、急速な円安や物価上昇懸念など国内経済への影響も危惧されている。全宅連では、社会経済情勢も踏まえ、急激な負担増とならないよう土地に係る固定資産税の負担調整措置、住宅ローン減税等各種特例措置の適用期限延長の実現に向けて鋭意取り組んでいく。
中村裕昌・全日本不動産協会理事長 評価基準額の対前年変動率全国平均値が2年連続で上昇して、上昇率も上向いた。都道府県庁所在都市の最高路線価も上昇地点が前年の15都市から29都市へほぼ倍増し、前々年との比較では3倍あまり増加した。雇用・所得環境が改善して、構造的賃上げの実現や官民連携投資の拡大など各種政策の効果もあり、消費動向の回復基調を後押ししている。他方、足元では東京23区を中心に右肩上がりを続けた首都圏の既存マンション価格が頭打ちとみる向きもあり、目下の地価上昇基調とともに強い関心を持って注視している。
(提供:日刊不動産経済通信)