法制審、区分所有法の改正要綱案を決定
2024年01月17日
─海外居住者、国内管理人の義務付け可に
区分所有法の改正内容が固まった。法制審議会(法相の諮問機関)の区分所有法制部会は16日、改正の要綱案を決定した。老朽分譲マンションの全国的な増加を受け、管理と再生、双方の円滑化を図ることが次の改正の目的。所在不明の区分所有者を決議の母数から除外する仕組みや、建替え決議要件を条件付きで「4分の3以上賛成」(現行5分の4)に緩和することなど、改正は多岐にわたる。マンション法ともいわれる区分所有法の大規模改正は02年以来で、約20年ぶり。
所在不明の区分所有者の除外決定は、他の区分所有者や管理者(理事や管理会社)などからの請求を受けて、裁判所が行う。民法の共有制度の所在不明者がいる場合にならい、裁判所が1カ月公告を行って、応答が無ければ除外決定となる。所在不明の区分所有者の除外決定は、区分所有権の処分を含む全決議が対象。
決議に参加しない無関心な区分所有者がいる場合にも対応する。相続で取得したマンションや、投資用での購入など、自分で住まないマンションに対しては管理への関心が低下しがちだ。決議に参加しない区分所有者は反対扱いになり、適正な管理を阻害する要因になっている。そこで改正区分所有法では、集会出席者の多数決で決議できる仕組みを設ける。
所在不明区分所有者の決議除外制度と、出席者の多数決決議制度は併用が可能だ。例えば区分所有者が10人で所在不明者が2人いると、決議母数は「8人」になる。8人の過半数の5人以上の出席で決議が有効。5人出席したとすると、過半数の賛成が必要な決議(共用部分の修繕など)の場合、3人賛成すれば決議できる。ただし出席者による多数決決議は、建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議は対象外になる。
区分所有者が海外に住んでいる場合も、管理が困難になりやすい。改正区分所有法により、海外に住む区分所有者が、所有する国内マンションの管理を国内在住者(法人可)に行わせる「国内管理人制度」が導入される。国内管理人は、集会の招集通知の受領、集会での議決権行使などの権限を有する。マンションの規約で、海外に住む区分所有者には国内管理人の選任を義務付けることもできるようになる。
◎再生の手法、建替え以外の選択肢広げる
建替え決議要件を4分の3に引き下げるのは、▽耐震性不足▽火災安全性不足▽外壁などの剥離で周囲に危険が生じるおそれがある▽給排水管等の腐食で著しく衛生上有害となるおそれがある▽バリアフリー基準に不適合─の、いずれかに該当する場合となる。現行制度では、賃借人がいると賃借人の同意を得ないと建替えが不可能になるが、退去費用など金銭を補償することで賃貸借を終了できる制度が新たに設けられる。
建物と敷地の一括売却や、建物の取り壊しを行うには、現行制度では区分所有者の全員同意が必要で、建替え以上に困難となっている。そこで建替えと同等の多数決により、①建物・敷地の一括売却②建物の取り壊し③建物を取り壊したうえでの敷地売却─の3つを可能とする制度を創設する。「一棟リノベーション工事」も、現行法では全員同意が必要となっていて事実上困難だったが、これも建替えと同等の多数決で可能になる。
所管の法務省は、区分所有法の改正案について、24年通常国会への提出を検討している。改正法の施行は早ければ26年中となる見込み。部分的に施行日を分けることはせず、一体で施行する方向で検討する。
(提供:日刊不動産経済通信)