分譲Mの第三者管理、管理会社で拡大
2024年05月10日
―デベと連携し新築で普及、既存物件でも
分譲マンションで管理組合の役員の担い手不足などの課題解決や組合の負担軽減など、顧客ニーズに対応するため、外部の専門家が管理組合の理事会に代わって管理者となる「第三者管理方式(外部管理者方式)」の導入が進む。なかでも多いのが管理業務を受託する管理会社が管理者となるケースだ。管理会社側では土日に開催する理事会などの負担が軽減され、業務の効率化にもつながる。
第三者管理方式を積極的に展開する長谷工コミュニティは、「スムージー」という名称で21年からサービスを開始した。アプリを使って居住者からアイデアの提案を募り、皆が投票できるようにするほか、管理者へ非公開で気軽に相談や連絡をできる仕組みを導入している。同社担当者は「第三者管理方式のデメリットとして、管理組合の管理への意識の低下や居住者間のコミュニケーションの欠如などが考えられるため、そこをアプリで補った」と話す。居住者がマンション設備のアイデアや日々の困りごとなどを投稿すると管理者が対応プランを作成し、10分の1以上の賛同があれば、オンライン投票や総会開催などで決めていく。
同社は第三者管理方式を既存の管理物件15件で21年に開始し、22年には新築物件での提案を始め、今年3月末で導入済みは65物件に上る。このうち新築分譲時から導入したのは24件。このほか導入を決めているのが73組合(うち新築は64件)ある。現在は新築物件での提案を積極的に進めており、関東圏では足元で管理受託する新築物件のうち9割半は同方式の導入が予定されているという。今後は年間50~60件ほど同方式の管理が増えていく見通しだ。
三井不動産レジデンシャルサービスは、17年に同方式の導入を始め、今年3月末時点で同方式での管理件数は87物件に上る。このうち83物件は新築分譲時からの導入だ。東急コミュニティーでは同方式を積極的には展開していないが、新築物件20件ほどで導入。東急不動産との連携により、今後2年間で約10件の新築物件で同方式の導入が決まっており、今後も年間数件程度のペースで増えていく見込みだ。デベロッパーと関連のある大手管理会社では、同方式を導入しやすい新築物件のうちニーズのある都心部の物件で導入が進む。マンション販売の現場では、組合役員を担わなくてよいことが購入者から評価されている。
一方、既存の管理物件で積極的に提案しているのは大和ライフネクスト。22年秋に「タクスタイル」という名称でサービスを開始し、78組合が第三者管理方式を導入済み、さらに32組合が導入を決めている。導入予定を含めた110組合のうち、新築分譲時からの導入は15組合のみで、既存の管理物件での導入が中心だ。同社担当者は「役員の担い手不足の課題は大きく理事会の継続が難しくなってきている組合もある。管理不全にならないよう選択肢の一つとして提案している」と話す。同社では第三者管理方式の場合はコスト増を考慮し、管理委託費の一部減額なども行っている。
また、ほかの大手管理会社同様に、毎年の総会で同方式を継続するかを組合が決めており、契約期間も総会の3カ月後までに設定し、従前の理事会方式に戻す場合にスムーズに移行できるようケアをする。同社では他の管理会社が管理受託する物件に、管理者として入るメニューも用意。現時点で実際の稼働はまだないが、関心を持つ管理組合や管理会社はあり、説明などを行っているという。同社が管理受託する組合数は約4000組合で、26年にはその1割にあたる400組合での導入を見込む。
三菱地所コミュニティは4月にマンション事業本部内に第三者管理室を設置し、同方式の対応を始めた。三菱地所レジデンスと連携して、新築分譲マンションでの導入を数件予定しており、年度内にも同方式での管理が稼働する。新築での取り組みが先行するが、「管理組合の理事活動などの手間や時間をコストと考えれば、多少費用面でコストがかかっても第三者管理方式を導入したいという組合はあるのではないか」(大井田篤彦社長)と、既存の管理物件でも、ニーズがありそうな組合へ選択肢の一つとして提案していく。
◎国交省が指針、管理会社は対応検討へ
国土交通省では昨秋から第三者管理方式(外部管理者方式)のガイドライン作りの検討を進めており、近く公表するとみられる。検討案では細かい規定が設けられているが、「これまで明確な基準がなかったので、国交省のガイドラインができることで組合にも客観的に説明がしやすくなるのではないか」(東急コミュニティー)など、各社は概ね前向きに捉えている。
監事は弁護士や監査法人、マンション管理士、区分所有者などが担うケースが現状では多いが、国交省の検討案では外部専門家と内部の区分所有者の複数名体制が望ましいとする。同方式は役員の担い手不足解消と組合の負担軽減が目的でもあり、監事を区分所有者から出すのは一つのハードルとなる可能性も考えられる。そのほか、組合の印鑑と通帳の管理に関して、現状では管理者側が印鑑、フロント側が通帳を管理しているケースが多いが、検討案では印鑑の管理を監事に任せるのが望ましいとする。各社とも国交省のガイドラインの公表を待ち、対応を検討していく。一部の管理会社による利益相反などへの懸念が指摘されるなか、大手の管理会社では社会的ニーズに対応するため、健全な仕組みでの普及を図っていく。
(提供:日刊不動産経済通信)