Myリバブル

首都圏
  • 閲覧履歴

    閲覧履歴

  • 検索条件

    保存した検索条件

    最近検索した条件

Myリバブル

業界トップ、経済回復で地価上昇と認識

2024年09月18日

―建設費の高騰や国際経済情勢には注意も

 今回の都道府県地価に対し、不動産業界の各トップは国内経済の緩やかな回復が地価の上昇幅拡大や上昇継続に結びついたとの認識を示した。建設費の高騰に加え、金利動向や国際経済情勢の変化に注意を払いながらも、不動産市場の展望については前向きに捉える声が少なくない。各コメントを掲載する。


 吉田淳一・不動産協会理事長 全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。地方圏でも上昇幅の拡大がみられ、全国的に地価の回復傾向が進んだ。日本経済の緩やかな回復が地価にも反映された。一方、海外景気の下振れリスクや国内の物価上昇、金融資本市場の変動などが経済に与える影響にも留意しつつ、今後の地価動向については注視していく必要がある。

 太田陽一・不動産流通経営協会理事長 全国の地価で全体として上昇基調が強まった点が特徴。地方四市を除く地方圏の全用途平均が32年ぶりに上昇に転じた点は今後に向け明るい兆候だ。一方、足元で首都圏マンションの成約価格が51カ月ぶりに前年同月を下回り、今後の動向と消費者の住宅取得ニーズの変化などが注目だ。需要を下支えする低金利環境の今後に注意して、住宅・不動産流通市場が内需の牽引役を果たす。

 坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 全用途平均が3年連続で上昇し、上昇幅も拡大して堅調だった。緩やかな景気回復で地価は上昇基調が続いている。全宅連は、先般公表の「不動産業による空き家対策推進プログラム」の柱となる「流通に適した空き家等の掘り起こし」と「空き家流通のビジネス化支援」を宅建協会と共同して行う。税制改正では、子育て世代等への住宅ローン減税の拡充などに取り組む。

 中村裕昌・全日本不動産協会理事長 全国の全用途平均、住宅地、商業地は3年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。三大都市圏に加えて地方四市、特に福岡市の上昇基調は勢いを増し、地方圏も全用途平均が32年ぶりに上昇に転じ、全体で地価の回復傾向が鮮明だ。各地の動向からは、企業誘致や観光資源、良好な市街地再開発や都市計画で人の集積、にぎわいを生み出し、土地や「まち」の価値に直結する好例がみられた。

 植田俊・三井不動産社長 都心部では底堅い需要に支えられた住宅マーケットの好調さや活況なインバウンド需要などが地価上昇に反映された。東京駅周辺など再開発事業が進むエリアの地価上昇も続いた。地方圏での地価上昇は各地域の特色を生かした産業創造の進展が一因と考える。半導体関連企業の進出が進む地域や、物流施設需要が高まる地域での地価上昇は、わが国の産業競争力強化に寄与する動向だろう。

 中島篤・三菱地所社長 地価上昇の要因として、主要都市におけるオフィスの空室率低下や賃料上昇が挙げられる。経済の回復が続き、オフィスは適切な人材を確保し優れた経営を行っていくための投資という見方が強まっている。地価上昇が続く住宅地では、分譲マンションは需要が堅調な一方、供給は限られている。賃貸マンションなども含め今後も好調が続くだろう。金利上昇は注視する必要があるが、住宅市況への影響は現時点でさほど大きくないと考える。

 仁島浩順・住友不動産社長 商業地では、旺盛なインバウンド需要を中心にホテルや商業店舗の需要が一段と拡大した。東京のオフィスビル市況も、企業の優秀な人材確保に向けた、働きやすいオフィス環境整備を目的とする移転、増床需要により、緩やかな賃料上昇を伴って需給改善が続いている。住宅地は、資材や労務費の上昇などを反映して、マンション販売価格の上昇傾向が特に都心で顕著となっているものの、ローン金利の上昇が小幅にとどまるとともに、住宅取得支援策などが下支えとなり、生活利便の高い地域を中心に一定の需要が保たれている。

 星野浩明・東急不動産社長 商業地は、再開発事業などが進む地域で利便性やにぎわいの向上への期待感などから地価上昇が継続している。渋谷エリアでも地価上昇が続いている。インバウンド需要や出張・観光需要の回復で沖縄や軽井沢などのパブリックホテルも堅調だ。低金利環境が続くなか、大都市圏などで住宅需要も底堅い。全国的にみても都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性に優れた周辺地域などで住宅地の地価上昇が続くなど根強い需要がある。足元では国際経済情勢などを注視する必要があるが、不動産市況は中長期的に回復基調が続くだろう。

 野村均・東京建物社長 地価上昇の背景には、分譲マンション市況やオフィス需要の底堅さ、インバウンドを含む人流回復などに伴うホテルと商業施設の需要増加、都市部での再開発事業の進展などがある。金利動向は注視する必要があるものの、不動産投資市場は引き続き好調に推移している。住宅地では資産性を重視する富裕層やパワーカップル層などの需要が底堅く、上昇基調が続いている。交通利便性や住環境面で優位な立地であれば郊外や地方都市でも地価は上昇傾向だ。

 松尾大作・野村不動産社長 オフィス市場は25年に東京で新規供給が集中し、一時的に空室率の悪化や賃料の弱含みなどの影響が出そうだ。ただ23区全体の市場規模と過去の供給量を鑑みるに、需給バランスが急激に悪化するとは考えにくい。ホテル市場は予想を上回るインバウンド需要で稼働率、ADRが高水準だ。一方、資材費や労務費を含む建築費の高騰は今後も続くことが想定され、一部の市場では中長期的に事業への影響が懸念される。価格に見合った付加価値のある商品をハード・ソフトの両面から企画していく。

 伊達美和子・森トラスト社長 国内ではマイナス金利政策の解除など経済正常化の動きがみられる。日経平均株価が史上最高値を更新したが、国内外で政治情勢や金融政策の変化、米国大統領選挙などに注視する必要がある。国内不動産市場では金利変動の影響は限定的で、好条件での不動産取引、地価上昇傾向が続くと予想される。一方、建築費の高騰や深刻な人手不足が不動産市場に与える影響は加味すべきだ。24年上半期の訪日外客数・消費額は過去最高を更新した。観光産業を面的に支えるインフラ整備が急務と考える。

(提供:日刊不動産経済通信)

最新のニュース