都心のビル需要は就業者数とともに増加
2024年12月05日
―SMTRI、ホテルは訪日客で成長続く
三井住友トラスト基礎研究所(SMTRI)は、不動産市場に関するレポートを公表した。東京都心のオフィス市況、ADRの上昇からみた東京都のホテル、名古屋市の賃貸マンションをテーマに取り上げ、足元の動向や今後の見通しなどをまとめた。東京都心5区のオフィスの空室率をみると、23年以降は供給を上回る需要が発生して、空室率の低下が持続。要因として、就業者数の増加や、エリア外から都心5区に転入する企業の増加が影響したとみている。
レポートでは都心のオフィス需要を「オフィスワーカー数」と「1人あたり面積」の掛け合わせと捉え、就業者数、企業のオフィス立地、オフィス出社率の3点で動向を分析した。南関東圏の就業者数が17年より2000万人以上を保ち、21年のみ減少に転じたが22年以降に再び増加。企業の本社は都心5区で約10年間にわたり増加傾向が続き、就業者数とともにオフィス需要の増加につながったとする。一方、オフィス出社率は24年は概ね前年から横ばいで頭打ちとなり、足元でオフィス需要増加への影響は限定的とした。
東京都の宿泊主体型ホテルでは、ADRの上昇が続いている。人手不足から、稼働率よりもADRの引き上げを優先する運営方針の定着や、物価の上昇分をADRへの転嫁が影響したとみている。今後も、中国人観光客や経済成長が続く東南アジア圏の旅行者の増加でADRの上昇を予測している。
名古屋市の住戸面積30㎡未満の賃貸マンション市場について、着工戸数の推移から17年以降に単身者向けシングルの供給が16年以前の約3倍に急増したため、市況が悪化したとする。今後は、供給量や賃料調整を通じて、安定した市場へ移行するとみている。
(提供:日刊不動産経済通信)