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目次

Ⅱ. マイホーム売却時の税金

譲渡所得の計算方法①ー取得費と減価償却費について

更新日:2024年9月25日

譲渡所得の計算

 個人が不動産の売却をしたことによる譲渡益は譲渡所得として、他の所得(給与所得や事業所得など)と分離し所得税住民税が課税されます。また、特定の居住用財産の売却損は他の所得と相殺することによって所得税と住民税の減額をすることができます。不動産の売却による利益とは、原則として取得時から売却時までの資産の値上益であり、具体的には次の算式により計算されます。

譲渡所得

=

総収入金額

(取得費 +

譲渡費用)

特別控除額

①総収入金額

 総収入金額は、資産を譲渡した年において「収入すべき金額」のことをいいます。たとえ、譲渡をした年に売却代金の一部しか受け取っていない場合においても、未収部分を含めた全額がその資産を譲渡した年の収入金額となります。また、固定資産税等の精算金も収入金額となります。

総収入金額

=

売買代金

+

固定資産税等の精算金

②取得費

 実際の購入代金などを使って計算した原則的な取得費を「実額取得費」、総収入金額の5%で計算した取得費を「概算取得費」といいます。実額取得費がわかる場合でも、概算取得費を選択することができますので、実際には実額取得費と概算取得費を比較し、大きい方を取得費として選択し計算します。

「実額取得費」と「概算取得費」の大きい方(納税者有利)を選択します。

1.実額取得費

 実額取得費とは、実際に支出した金額に基づく取得費で、契約書・領収書・請求書などの第三者発行の資料を根拠に計算するものです。したがって、取得時の契約書等の資料がない場合には原則として実額取得費を計算することはできません。実額取得費は、不動産の購入代金等に仲介手数料などの購入諸経費と造成費用やリフォームなどの改良費用を加えて計算します。建物の取得費は、これらの合計額から減価償却費を控除します。

土地 取得に要した金額

+

設備費及び改良費

建物 取得に要した金額

+

設備費及び改良費

減価償却費相当

取得費に含めるもの 取得費に含めないもの
  • 購入代金
  • 建物請負代金(設計料、建築確認申請料を含む)
  • オプション工事費用(ビルトインエアコン・棚・造作家具等)
  • 購入時の仲介手数料
  • 購入時の契約書の印紙税
  • 購入時の登記費用(登録免許税・司法書士等の報酬)
  • 土地造成費用(整地、地盛り、擁壁工事等)
  • 建物の増改築代金
  • 固定資産税・都市計画税の精算金
  • 不動産取得税
  • 購入時に支払った立退料・移転料
  • 購入後概ね1年以内に取壊した建物の購入代金及び取壊費用
  • 使用開始前の期間に対応する借入金の支払利息・保証料・団体信用生命保険料等
  • 借入時の事務手数料
  • 契約解除に伴い支出する解約違約金
  • 借地の更新料
  • 使用開始後の期間に対応する借入金の支払利息・保証料・団体信用生命保険料等
  • つなぎ融資の支払利息・事務手数料
  • 火災保険料
  • 管理費・管理準備金・修繕積立金
  • 家具・カーテン・照明設備(動産)などの取得代金
  • 引越費用
  1. 業務用資産の場合には印紙税・不動産取得税・登記費用は取得時に必要経費となるため取得費とならず、持分計算にも含めません。
  2. 消費税が課税されている場合は、消費税の額を含めて計算します。

2.概算取得費

 実額取得費が不明の場合又は実額取得費よりも概算取得費の方が大きい場合には概算取得費を選択します。

概算取得費

=

総収入金額

×

5%

3.減価償却費の計算

 建物の取得費は購入代金等から減価償却費を控除した金額となります。
減減価償却費の計算方法は定額法と定率法がありますが、マイホームなどの非業務用資産と平成10(1998)年4月1日以降取得の業務用建物、平成28(2016)年4月1日以降取得した業務用附属設備・構築物は定額法によって減価償却費の計算を行います。

用途 減価償却費の計算方法
非業務用期間 居宅、別荘、空家など 購入代金等×0.9×償却率×経過年数※1
業務期間 アパート、店舗、事務所など 選択した償却方法に基づき過去に必要経費に計上した償却費の累積額※2
  1. 経過年数は端数が6ヶ月以上のときは1年とし、6ヶ月未満のときは切り捨てます。
  2. 次の区分に応じ、それぞれの算式で償却費を計算します。
特徴 取得時期 減価償却費の計算方法
定額法 毎年の償却費の額が同額 平成 19(2007)年3月31日以前に取得 購入代金等×0.9×償却率(旧定額法)
平成 19(2007)年4月1日以後に取得 購入代金等×償却率
定率法 当初の償却費が多く、毎年の償却費が一定割合で逓減します。
ただし、償却額が「償却保証額」に満たなくなった半分以降は毎年同額となります。
未償却残高×償却率

4.住宅用建物の定額法償却率

構造 非業務用 業務用
耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
木造 33年 0.031 22年 0.046
鉄骨造 4mm超 51年 0.020 34年 0.030
3mm超4mm以下 40年 0.025 27年 0.038
3mm以下 28年 0.036 19年 0.053
鉄筋コンクリート造 70年 0.015 47年 0.022

5.相続税額の取得費加算の特例

 相続等により取得した財産に係る相続税額がある場合において、その財産を相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡しているときは、相続税額のうち次の算式により計算した金額(この規定適用前の譲渡益を限度)を譲渡資産の取得費に加算することができます。

譲渡所得の金額

=

総収入金額

(取得費

+

取得費に加算する相続税額

+

譲渡費用)

そのものの相続税額

×

そのものの相続税額の課税価格の計算の
基礎とされたその譲渡した財産の相続税評価額


そのものの相続税の課税価格そのものの債務控除額

=

取得費に加算する相続税額

計算例11 取得費の計算・減価償却

昭和60(1985)年8月に6,000万円(建物4,000万円、土地2,000万円)で取得した新築のマンション(鉄筋コンクリート造)を令和6(2024)年5月に売却しました。この場合における取得費はいくらでしょうか。

①経過期間 昭和60(1985)年8月令和6(2024)年5月38年9月39年(6月以上切上)

②減価償却費 4,000万円×0.9×0.015×39年=2,106万円

③取得費 6,000万円2,106万円=3,894万円

計算例12 相続税額の取得費加算

昨年4月に父から相続で取得した駐車場を本年1月に7,000万円で売却しました。この駐車場は50年前に父が180万円で取得したものです。父からの相続に係る相続税の課税価格の合計は1億円、債務控除なしで、駐車場の相続税評価額は5,000万円、相続税は300万円でした。この譲渡に係る譲渡費用が200万円の場合における譲渡所得の金額はいくらでしょうか。

7,000万円 350万円取得費 150万円取得費加算 200万円譲渡費用 = 6,300万円

180万円実額取得費 7,000万円概算取得費 × 5% = 350万円 350万円

300万円

×

5,000万円


1億円

=

150万円