プロジェクトの基盤は
ニーズを読み解くマーケットリサーチ
「ホテルアクアチッタナハ」は、東急リバブルが開発型アセットマネジメント事業として沖縄県那覇市前島で建設を進めるシティリゾートホテルで、2017年9月に竣工しました。
この土地を取得した2015年6月当時、沖縄県では入域観光客数が毎月過去最高記録を更新しており、県内の宿泊需要は増加していました。その勢いは2016年にはさらに拡大していますが、当時から沖縄ではLCCを含む空港路線・クルーズ船の拡大や、那覇空港に第2滑走路が増設される予定もあることから、大幅な集客力の増加が期待されており、一方で、旺盛な需要に供給が追い付いておらず、ホテル不足が続いていました。
私たちはそのような市場動向の調査・分析をもとに事業性の検証を重ね、この土地をホテル用地として取得し、本プロジェクトをスタートさせました。
その後、土地の所有権を当社が一部出資するSPC(特定目的会社)へ移転し、私たちはSPCのプロジェクトマネジメント(PJM)兼アセットマネジメント(AM)を担い、開発の基本計画から設計、建築までの一連の工程を管理しました。
PJMとAM機能を併せ持ったシームレスなソリューションが実現できるのは、私たちが持つ独自のネットワークと、これまでに培ってきた様々な知見があるからです。
沖縄県入域観光客数の推移(沖縄県観光要覧および沖縄県観光振興計画を基に当社作成)
那覇空港滑走路増設事業(内閣府沖縄総合事務局)
東急リバブルだから実現できる
確かな両輪のマネジメント構造
PJMとAM機能を併せ持ったシームレスなソリューションが実現できるのは、私たちが持つ独自のネットワークと、これまでに培ってきた様々な知見があるからです。
PJMの面では、まずは全国から集まる豊富な不動産情報をベースに物件をソーシングします。もともと当社はホテルや物流施設などのオペレーショナルアセットに関して各業界のコンサルティング会社と提携するなどして専門性を高めていたため、適地評価や物件の商品化には自信がありました。さらに、ゼネコンや設計会社、オペレーターの選定、また売却先の選定も、これまでのビジネスを通じたコネクションがあるからこそスムーズに進めることができました。
他方、AMの面では、専任の部署がファイナンスのアレンジから対応します。開発資金の調達は、建物がない更地の状態であり、かつSPCにおいてはコーポレートファイナンスと異なり事業そのものの収益性が問われるため、金融機関から融資を受けることは容易ではありません。しかし、具体的な根拠を示して事業の実現性や安全性をディスクローズすることで協力を得ることができました。
私たちは確かな出口戦略とコスト・工程管理により、エクイティ投資家様が得られる開発利益をIRR(内部収益率)で20%以上を目標に取り組んでまいります。
アセットとしての価値まで計算された
高水準のアウトプット
ただし、いくらホテル不足とはいえ、他ホテルとの差別化や集客力が担保されないことには、ステークホルダーを納得させることはできません。ここでは、設計会社の協力のもと、ホテルの立地を最大限に生かした設備仕様へのこだわりを追求しました。
ホテルは、沖縄県本島の主要幹線道路である国道58号線沿いに立地し、那覇空港から車で約10分。沖縄都市モノレール「美栄橋」駅からも徒歩6分と交通アクセスに優れており、那覇市内中心部である国際通りも徒歩圏内で、ビジネスにもレジャーにも適したロケーションです。基本的には宿泊特化型の施設ですが、レジャー需要にも対応できるよう、一般的なビジネスホテルに比べて部屋の間口を広くとることで、最も狭いシングルルームでも最大3名が宿泊できるようにしました。さらにレストランと、屋上にはエッジプールも備え、ビジネス・レジャー両方のニーズを満たすことで、季節を問わず高い稼働率が実現できる企画となっています。こういった的確で柔軟なプランニングができるのも、社内の専門チームが高い知見を有する専門会社と連携し、より質の高い立案ができる体制を整えているからでしょう。
このような開発型アセットマネジメント事業を通じて、エクイティ投資や出口における投資物件の供給など、長年の不動産ソリューションビジネスで培った私たちの強みを最大限に生かした投資機会を提供し、ステークホルダーの皆さまの事業に貢献できるような案件を創出していきたいと考えています。今後のプロジェクトにも是非ご期待下さい。
Partner's Voice
「ホテルアクアチッタナハ」の
デザイン・設計を担当したパートナー企業の
株式会社コイケデザインワークスに、
今回のプロジェクトについてお話を伺いました。
「ホテルアクアチッタナハ」に
参画した理由は?
東急リバブル様とは、今回が初めての協業になります。参画するにあたり実感したのは、同社は大手企業でありながらも、非常に革新的かつフレキシブルな考え方を持っているということです。プロジェクトを進めるにあたり、開発リスクを担いながらAMも並行するというのは、並大抵のことではありません。しかしながら、開発型であることを活かし、初期の段階から様々なリスクを回避し、東急リバブル様の持つノウハウをベースにアセットとプロジェクトの価値を最大限に引き上げるというスキームは非常に効果的かつ魅力的で、我々としてもためらうことなく参画を決断できました。
「設計段階で求められたこと、
デザイン面で実現したことは?
まず求められたのは、交通アクセスに優れた好立地な場所の特性を活かしたプラン作りと、従来のビジネスホテルとは一線を画すグレード感でした。最上階からは那覇市の街並みが一望できるという点から、“人が集まる空間”にしたいというご要望も。そこで浮かんだのが、屋上にプールやルーフトップレストラン、バーを配置するというプランでした。これにより、ビジネスホテルでありながら、ラグジュアリーな空間も共存するというニーズを満たせたと思います。
外観に関しては、ランドマークになるよう、ルーバーを格子状にデザインし、存在感を演出しました。これは、羽板と呼ばれる細長い板をブラインドのように並べるもので、視線や外光、雨や風を遮断・透過するため、機能性とデザイン性を両立することができます。
屋上プールは、道路に迫り出すアクリル透明プールを設計し、地上の国道58号線からもアピールできるようにしました。
客室については、窓側にソファーベッドを設置し、通常はソファーとしてくつろげ、かつエキストラベッドを入れなくともプラス1名の収容人数が確保できるつくりにしています。これはADR(平均客室単価)を上げる工夫になりますが、同時にエキストラベッドを入れずに宿泊客を増やせますから、ホテルスタッフの業務軽減にも貢献するでしょう。
このように、今回の設計プランにはアピアランスだけでなく、設備・仕様の面でもホテルマネジメントまで踏襲したデザインを随所に詰め込んでいます。
開発型アセットマネジメント事業に
協業した感想は?
プロジェクトのクオリティ管理はもちろんのこと、細部に至るまで、チーム全員が一丸となってプロフェッショナルな仕事をしています。我々としてもアセットの価値を建築の計画段階から最大限に引き出すことができたと実感しています。
今回のプロジェクトに携わり、改めて東急リバブル様の企業ノウハウと実績には目を見張るものがありました。このようなスキームに関しては追随できる他社は存在しないのではないでしょうか。
我々としても沖縄県において長きに渡り事業を行って参りましたことから、本プロジェクトのお役に立てたものと自負すると同時に、今後も様々な開発型AMに協業させていただきたいと考えております。