事業承継補助金・引継ぎ補助金とは?
概要や申請方法を詳しく解説

公開日 2024.09.13
事業承継補助金・引継ぎ補助金

事業承継補助金・引継ぎ補助金は、企業の世代交代を支援するための助成金です。事業承継に伴う経営資源の引き継ぎや新しい事業展開を計画している企業にとって、補助金は大きな助けとなります。本記事では、申請に必要な条件や手続きのステップを分かりやすく説明し、効果的な活用方法を提案します。本記事では、事業承継補助金・引継ぎ補助金の概要や対象となる事業者、受給のための具体的な申請方法について詳しく解説します。

もくじ

事業承継とは?

事業承継 握手

日本の企業のうち99%を占める中小企業は、日本の経済を支え、雇用や技術の提供において非常に重要な役割を果たしています。これらの企業が持続的に発展し続けることは、日本社会全体にとって極めて重要です。そのため、中小企業の事業承継は、日本社会の未来において欠かせない取り組みと言えます。

しかし現在、多くの中小企業が経営者の高齢化及び後継者不足という深刻な問題に直面しています。中小企業経営者の平均年齢は60.5歳と過去最高を記録しており、高齢化が進行しています。また、高齢の経営者における後継者不在率も依然として高い水準となっています。

この状況が続けば、廃業する企業が増加し、結果として貴重な雇用が失われるだけでなく、長年培われた技術やノウハウも失われてしまう可能性があります。こうした影響は、日本の経済や地域社会にとって大きな打撃となるでしょう。

「事業承継補助金・引継ぎ補助金」とは?

事業承継と契約

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業が事業承継を契機に新たな取り組みを開始する際や、事業再編や統合に伴って経営資源を引き継ぐ際に、その経費の一部を支援する制度です。この制度は、事業承継を通じて中小企業の持続的な成長と発展を支援し、地域経済の活性化を目指しています。

近年、休廃業が増加傾向にありますが、このうち黒字の廃業が約6割を占める状態が続いており、後継者がいない中小企業では「黒字経営でも廃業せざるをえない」状況になってしまっています。事業承継・引継ぎ補助金は、このような中小企業・小規模事業者の事業承継・引継ぎを支援するものといえます。

事業承継・引継ぎ補助金の申請期間

7月1日に10次の公募要領が発表され、申請受付期間は2024年7月1日(月)~ 2024年7月31日(水)17:00までとなっていました。今回の10次公募は専門家活用枠のみでの実施となり経営革新枠、廃業・再チャレンジ枠での申請は受け付けていませんでした。また、交付決定日は8月末から9月頭を予定されていますが、事業実施期間が交付決定日から11月22日までと非常に短い期間になっていることも注意が必要です。これは、令和5年度補正予算において、より多くの事業者がこの補助金を活用できるように、臨時的に増設された公募回となっているため、他公募回と比べて補助事業期間が短くなっています。

補助金の上限額

「事業承継・引継ぎ補助金」の上限額は買い手支援類型及び売り手支援類型ともに600万円となっております。これに廃業費用としての上乗せ額150万円があります。また、補助対象経費の下限額は50万円であり、交付申請時の補助額がこれを下回る申請は受け付けられません。また、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は、補助上限額が300万円以内に変更されることがあります。

事業承継補助金・引継ぎ補助金は3事業で申請可能

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業・小規模事業者の事業承継やM&A等を支援する補助金であり、支援の対象によって、「①経営革新事業」、「②専門家活用事業」、「③廃業・再チャレンジ事業」という3つの事業に分かれています。

経営革新事業

経営革新事業は経営資源引継ぎ型創業や事業承継(親族内承継実施予定者を含む)、M&Aを過去数年以内に行った者、又は補助事業期間中に行う予定の者を補助対象とするものです。事業承継を経た企業が競争力を高め、成長を目指すことを目的としています。これによって経営者の若返りが図られたり、既存の事業とシナジーのある新規事業への進出によって企業の競争力が向上したりと、持続的な成長が実現している事例があります。

専門家活用事業

補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者を補助対象とするものです。M&A(事業再編・事業統合)に関連する経営資源の引継ぎをサポートするため、専門家を活用することで経営の専門知識やノウハウを得て、円滑な承継を実現することを目的としています。これによってM&Aを実現し、経営資源の統合により、企業の規模と競争力が増大している事例も多数あります。各種の専門家の活用により、事業の拡大や改革を促進させたり、新規事業の立ち上げを成功させたりと、企業が直面する複雑な課題を解決し、持続的な成長を実現しています。

廃業・再チャレンジ事業

事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者を補助対象とするものです。事業承継の一環として一部事業を廃業する際の費用を補助し、その後の再チャレンジを支援するものです。これにより、事業再編のスムーズな進行と、新たな事業への取り組みがしやすくなります。不採算部門の廃業により経営が健全化することで新事業が順調に立ち上がったり、企業の収益基盤が強化されたりという事例があります。

事業承継補助金・引継ぎ補助金の申請方法

事業承継・引継ぎ補助金の申請については下記のフローに沿って行います。

形式要件の確認

他の補助金もそうですが、まずは申請の対象になるか要件の確認が必要です。申請者、補助対象事業、申請期間、補助対象経費などがそもそも該当するかどうかを確認しましょう。

まず申請者の要件としては中小企業者及び個人事業主とされています。対象外とされるのは資本金または出資金が5億円以上の法人やそういう法人に100%の株式を保有されている法人や、直近3年間の各年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者のほか、社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合なども対象外とされているので注意が必要です。

また、補助対象事業となる経営資源引継ぎは、補助事業期間に経営資源を譲り渡す者と経営資源を譲り受ける者の間で事業再編・事業統合が着手もしくは実施される予定であること、又は廃業を伴う事業再編・事業統合等が行われる予定であることが必要ですので、申請期間の時期と併せて確認することが大事です。

さらに、補助対象事業は、以下の①または②に該当することが必要です。 ① 買い手支援類型においては事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること、事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれることが必要とされています。 ② 売り手支援類型においては、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれることが必要です。

こうした形式的な要件を満たしているかをまずは確認しましょう。

事業承継引き継ぎ補助金の申請
引用
事業承継・引継ぎ補助金の公募要領

「g BizIDプライム」アカウントの取得

gBizIDは、法人・個人事業主向け共通認証システムです。gBizIDを取得すると、一つのID・パスワードで、複数の行政サービス にログインできます。アカウントは 最初に1つ 取得するだけで、 有効期限、年度更新の必要はありません 。事業承継・引継ぎ補助金のみならず補助金の申請はgBizIDからの電子申請となっています。gBizIDには、 gBizIDプライム、gBizIDメンバー、gBizIDエントリーという3種類のアカウントがありますが、補助金の申請にはgBizIDプライムを使用しますのでこちらの取得がまだの方はアカウントを取得します。1つのメールアドレスでアカウントを複数取得することはできませんので複数事業を営んでいる場合は、事業毎にメールアドレスをご用意いただきアカウントを作成する必要があります。

gBizIDプライムを作成するには、書類郵送かオンライン申請をえらべますが、書類郵送の場合は発行まで1週間程度かかります。一方でオンライン申請の場合には最短即日に発行されますので、申請までの期限が迫っているときなどはオンライン申請がおすすめです。アカウントはこちら(https://gbiz-id.go.jp/top/)から作成できます。

類型番号の確認

交付申請する際には交付申請書と事業承継の類型別の書類を提出することになります。交付申請書には「GビズID」「担当者名」などの複数の項目を記載します。類型別の書類は申請者により異なるので、申請者は自社の「交付申請類型番号」を調べてどの類型に該当するのかを確認する必要があります。

【交付申請類型番号の調べ方】
  1. 申請する枠の公募要領をパソコンで表示させる
  2. 目次を見て、類型ごとの区分整理のページを表示させる
  3. 「承継者」「被承継者」の区分と「事業承継の形態」を照らし合わせ、交付申請類型番号を導き出す

計画書の作成

公募要領を良く読んで申請書を作成します。この中では審査項目と加点項目がありますが、しっかり下記漏れの無いよう、また、加点が取れるものについてはしっかり加点を取る事がとても重要になります。この際、審査員フレンドリーといいますか、審査員が読みやすい、わかりやすい書面を作成することが大事だと思っています。図や表、写真などを視覚的に見やすくするほか、専門用語を使わないとか、中見出しなどをつけて読みやすくするなども計画書の内容と同様に大事なことだと思っています。

事業の目的や具体性、実現可能性、経営資源の引き継ぎ方法が具体的に書かれているか、財務計画が妥当か、リスクや課題の抽出とそれを乗り越える方法、市場や競合、自社分析を踏まえた事業の持続可能性などについてわかりやすくまとめましょう。

また、経営革新計画などの加点の必要書類は多ければ多いほど審査において有利になる可能性があるため、加点の要件を満たせるものはないか確認してみましょう。また、複数の加点要件を満たしている事業者は、すべての加点の必要書類を提出しましょう。

申請フォームの入力

オンライン申請のため申請フォームに入力していくことになりますが、一つ一つ間違いないか確認しながら進めるようにしてください。

必要書類の準備

必要書類は交付申請類型番号によってことなりますが、申請枠のチェックリストで確認できるため、交付申請番号およびjGrants申請フォーム番号の確認後に公式サイトからチェックリストをダウンロードしてみましょう。基本的には法人であれば履歴事項全部証明書、直近の確定申告書、直近3期分の決算書、労働条件通知書などがあげられますが、加点項目によっても必要な書類は増えますので類型や加点項目に合わせて必要書類をしっかり確認しましょう。

申請

事業承継・引継ぎ補助金への申請は電子申請「jGrants」で行うので、必要書類は「jGrants 上の申請フォーム」への入力やPDFの添付で提出します。その際、公式サイトから「必要チェックリスト」をダウンロードして確認をするとミスを防止できると思います。

申請する際の注意点

まずは事業承継・引継ぎ補助金の要件を満たすか、特にスケジュールが合うかはチェックしましょう。ここが合うようであればgBizIDプライムアカウントを取得しつつ、公募要領を確認して申請要件や必要書類を正確に把握し、補助金の目的に合致するような事業計画書を作成します。公募要領を読んでも良くわからないときは公式サイトのQ&Aを参考にする、もしくは事務局に質問するといいでしょう。

まとめ

事業承継・M&A

事業承継・引継ぎ補助金は類型が分かれていますし、必要書類には「すべての申請者が提出する書類」と「該当者のみが提出する書類」があります。

10次は専門家活用のみですが、この数年でも事業承継・引継ぎ補助金は内容が変わったり補助上限額が変わったりしています。どの補助金にも言えることですが、常に最新の情報にアップデートして古い情報をもとに申請しないようにすることがとても重要です。

※当コラムは、著者個人の見解に基づくものであり、東急リバブルの公式発表や見解を表すものではございません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。

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