風薫る季節!あなたならではのシャンパーニュスタイルは?
フランスで仕事をしていた頃、しばしば日本からパリへ来られる方のアテンドを引き受けることがありました。美食の街ですから、ミシュラン星付きのフレンチレストランで一緒に食事する機会も多くあり、パリジャン、パリジェンヌたちの料理とワインの粋な楽しみ方を垣間見ることができました。そんな中でも一際、鮮明に記憶に残っているのが、素敵な二人のマダムでした。
マドレーヌ寺院のすぐ脇にあった3ツ星レストラン。ランチのお供に、二人のマダムが選んだのは一本のシャンパーニュ。それも、食前から食中、デザートまで、二人が話しながらゆっくりと味わう姿が、とても洗練されて優雅だったことが印象に残りました。「シャンパーニュ一本で本格的なフレンチコース料理を通すことができるの?」と驚かれた方もいるかもしれません。実は、シャンパーニュは、オールマイティな魅力を持つ、ほかにない個性が光るワインなのです。
もくじ
食前からデザートまでオールマイティに寄り添うワイン
日本でも、食事のスタートにグラスワインを傾けながら会話を弾ませる、「食前酒」(アペリティフ)は、ごく一般的になってきました。フランス人のライフスタイルには欠かせない、大切な位置づけを持つのがアペリティフです。食前の一杯は、食欲を開く目的とともに、コミュニケーションの潤滑油としても大切な役割を持ちます。そんなアペリティフにぴったりなのがシャンパーニュ。柔らかでキメ細やかな泡が口の中を優しく刺激し、引き締まった酸味が食欲を誘いだしてくれます。続く、前菜、魚や白身肉を使ったメイン料理、デザートも引き立て、しっかり寄り添ってくれるでしょう。
実は、シャンパーニュには、甘口から辛口まで幅があるのをご存じでしょうか?私たちが普段、口にするシャンパーニュのほとんどは「ブリュット」(Brut)です。ブリュットは、日本語では「辛口」と訳されていますが、実はほのかに甘みを感じる程度の残糖分が含まれています。また、シャンパーニュはスパークリングワインの中でも際立って香りが豊かで、長い熟成によって味わいに複雑さが生まれます。このことがメイン料理にも合わせられる厚みや奥行きになっているのです。
ご自宅でも、ご夫婦やご友人と二人で、のんびりソファーで食前酒からスタート!軽いつまみとともに会話を弾ませ、ダイニングに席を移して、前菜からメイン、お好みでチーズやデザートとシャンパーニュ一本を、楽しんでみてはいかがでしょうか?そんな時に選びたいシャンパーニュスタイルを二つ取り上げてみたいと思います。
風薫る初夏のランチに、すっきり楽しみたいシャンパーニュ
シャンパーニュは、一般的に3つのブドウ品種から造られることが多くなっています。そのうち黒ブドウ品種が2種を占め、白ブドウが1種です。「えっ、黒ブドウなの?シャンパーニュは白い色では?」とつぶやいた方も多いと思います。実は、黒ブドウでも、ブドウの果肉と果汁は白いまま。圧搾する際に、果皮に含まれる赤色色素を抽出しないように気を付けることや搾りすぎないことで透明感ある美しい色調が保たれています。
3つのブドウ品種をバランスよくブレンドしたものがある一方で、ここでオススメしたいシャンパーニュは、白ブドウだけを使った「ブラン・ド・ブラン」(Blanc de Blancs)です。直訳すると「白の中の白」の意味。原料に白ブドウだけを使うことで、酸味が生き生きとした軽やかで繊細なスタイルに仕上がります。特に暑い時期には、切れ味良く、すっきりと楽しんでいただけるでしょう。ワイン専門店で、「ブラン・ド・ブランのシャンパーニュはありますか?」と尋ねてみてください。きっと沢山のアドバイスがもらえるでしょう。
お祝いや特別な記念日に、こだわりの料理と味わいたい格上シャンパーニュ
ワインには通常、使われたブドウを収穫した年、つまりヴィンテージがラベルに記載されています。しかし、シャンパーニュは、「ノン・ヴィンテージ」(N.V.)つまり複数年をブレンドしたものが多くを占めています。これは、もともと緯度の高いフランスでも最北に位置する冷涼な気候の産地で、安定的に美味しいお酒を造るための知恵と工夫だったと言えるでしょう。
ところが、厳しい気候を持つシャンパーニュ地方にも、いわゆる当たり年と呼ばれる、ブドウがしっかり熟す良年があります。そんな年には、敢えて他の年のワインをブレンドせず、単年度だけでシャンパーニュを造ります。それを「ヴィンテージ・シャンパン」と呼び、ラベルには原料となるブドウの収穫年が記載されます。さらに一般のノン・ヴィンテージよりも長く瓶内熟成が行われます。生産本数が限られ、毎年造ることができないことから、特別な品として、高値で出回ることが多くなっています。味わいはより厚みや複雑さが楽しめ、香りの豊かさや全体を通じたバランスの良さも感じていただけるでしょう。
小さな自社畑から収穫したブドウだけを使う職人技の銘柄も
シャンパーニュは、皆さんがよく知る大手メーカーの有名銘柄を目にすることが多いですが、私はぜひ職人技が生きた、小さな造り手の銘柄もお試しいただきたいと思います。ただ、もともとの流通本数が極端に少ないことが多く、ワイン専門店でしか扱っていないことが多いでしょう。こうした小さな造り手は、自社畑からオーナー自身が手塩に掛け、愛情を込めて育ててきたブドウだけを使って丹念に醸造したものがほとんどです。買い付けブドウを用いて均質に大量生産するシャンパーニュにも、もちろん、それぞれの個性と良さがあります。
シャンパーニュには、まだ多くの方が知らないこうした奥深さが潜んでいます。ぜひワイン専門店に足を運んだ際には、知的好奇心をもとに探求してもらい、お気に入りの一本を見つけてもらえたら嬉しいなと思っています。
オススメ シャンパーニュ インデックス
- 食前からデザートまでオールマイティに寄り添うお勧めのシャンパーニュ
- ☑ルクレール・ブリアン ブリュット・レゼルヴ NV
- 初夏のランチに、すっきり楽しみたいシャンパーニュのお薦め
- ☑ギィ・シャルルマーニュ グラン・クリュ レゼルヴ ブラン・ド・ブラン NV
- お祝いや特別な記念日などに、こだわりの料理と味わいたい格上シャンパーニュのお薦め
- ☑マルゲ サピエンス・ブリュット・ナチュール 2010
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