⼩規模企業共済とは?加⼊資格や掛⾦、共済⾦の受取種別を解説

公開日 2022.12.19
⼩規模企業共済とは?加⼊資格や掛⾦、共済⾦の受取種別を解説
もくじ

1.はじめに

みなさん「三共済」という言葉をご存じでしょうか?
下記の三つをあわせた略称で、それぞれ独立行政法人が運営しています。

  • 小規模企業共済
  • 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
  • 中小企業退職金共済

本日はその中で、小規模企業共済をご案内します。
小規模企業共済の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として、個人の所得税の計算上、所得控除の対象になります。
年間84万円を限度として支出した掛金の全額が所得控除の対象となり、税制メリットが大きいので、積極的な活用をご提案します。

そんな小規模企業共済の制度概要についてお伝えしていきます。

2.小規模企業共済の概要

【1】制度趣旨

小規模企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる制度。掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットに加え、事業資金の借入れもできる、小規模企業の経営者のための「退職金制度」。

民間保険会社では対応が難しい、公的年金や退職金が不十分になりやすい個人事業主や中小企業経営者向けの共済制度です。定期的に掛金を積み立てていくのが基本設計です。

【2】加入者資格

不動産賃貸業を営む個人や資産管理会社の役員であれば、下記一覧のうち「1」の「不動産業」に該当します。
本コラムをご覧いただいている方にも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ただし、個人事業主として加入する場合、副業として不動産賃貸業を営むサラリーマン大家などは対象外です。
また不動産賃貸業については「事業的規模」である必要があります。

※事業的規模とは室数であればおおむね10室以上、独立家屋であればおおむね5棟以上。(国税庁HPより)

  • (1)建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
  • (2)商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
  • (3)事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  • (4)常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  • (5)常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
  • (6)上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

【3】掛金

掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択でき、掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となる。

掛金は最大で月額7万円、年額84万円になります。
月払いのほか、年払いや半年払いが選択でき、預金口座からの振替となります。
掛金の増額や減額は、500円単位で自由におこなうことができます。

【4】その他

加入自身の退職金制度ですので、自分以外を被保険者とすることはできません。

3.共済金の受取種別

共済契約者の立場や請求事由によって、受け取れる共済金の種類が異なります。
ここでは共済契約者が個人事業主であった場合を紹介します。

共済金等の種類 請求事由
共済金A 個人事業を廃業した場合
共済契約者が死亡した場合
共済金B 老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方)
準共済金 個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなった、解約をした場合
解約手当金 任意解約
機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)
個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくならなかったが、解約をした場合

4.受取方法によって異なる所得種類

【1】分割受取

分割して受け取る場合は雑所得となり、「公的年金等控除」の適用があります。
また分割受取とした場合は、一定額の加算があり、総受取金額が増えます。 老齢基礎年金などの公的年金を加えても「公的年金控除」の範囲内に収まる場合は、良い受取方法と言えるでしょう。
逆に、自宅リフォームなどまとまった支出を計画している場合は、不向きだと思います。

分割受取するためには、所定の請求事由、所定の年齢以上であることなど細かな要件がありますので、詳細は機構HPなどでご確認ください。

【2】一括受取

受取方法によって退職所得、一時所得のいずれかとなり、退職所得となる場合、「退職所得控除」が利用できます。 まとまった支出を計画している場合は、良い受取方法と言えるでしょう。 一方、分割受取と比べ総受取金額が少なくなるデメリットがあり、注意が必要です。

5.遺族が共済金を受け取る場合

共済金は相続の対象になりませんが、みなし相続財産として相続税の申告が必要です。
生命保険金と同様に、小規模企業共済も非課税枠があり、相続時に有効に活用できます。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税枠
死亡保険金でも類似した非課税限度額の制度がありますが、重複適用可能です。

また共済金を受け取ることが出来る遺族は、民法上の相続の一般原則とは異なり、小規模企業共済法に規定されています。

受給者
順位
続柄 備考
第1順位者 配偶者 内縁関係者も含む
第2順位者 共済契約者が亡くなった当時、主として共済契約者の収入によって生計を維持していた方
第3順位者 父母
第4順位者
第5順位者 祖父母
第6順位者 兄弟姉妹
第7順位者 そのほかの
親族
第8順位者 共済契約者が亡くなった当時、主として共済契約者の収入によって生計を維持していなかった方
第9順位者 父母
第10順位者
第11順位者 祖父母
第12順位者 兄弟姉妹
第13順位者 曾孫
第14順位者 甥・姪

6.加入手続き

機構と業務委託契約を締結している委託機関または金融機関の本支店(代理店)の窓口で加入手続きが可能です。

※委託機関は商工会や商工会議所など。

7.まとめ

  • 掛金の全額が「小規模企業共済等控除」となり、お得に積立ができる。
  • 受取の際も、「公的年金等控除」や「退職所得控除」等による税制メリットを期待できる。
  • 非課税枠があり、相続時に有効に活用できる。

このコラムでは小規模企業共済の加入資格や掛金、受取種別ごとの所得種類などをご説明しました。
加入資格がある方は、この機会に検討されてはいかがでしょうか?

出典
独立行政法人中小企業基盤整備機構ホームページ

https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/

(令和4年12月13日現在)

※当コラムの内容は、公開日当時の法令等に基づいております。

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