不動産の共有は争族のもと!
公開日 2022.10.20
もくじ
1.はじめに
所有する不動産が親族と共有名義であったりすることはないでしょうか。または今後の相続発生時に、不動産を共有名義で承継する計画があったりすることはないでしょうか。
共有名義の不動産は、そのままにしておくと、次世代では争いのもとになることもあります。今回は共有の解消や回避の方法について紹介します。
2.不動産の共有とは
- 【1】不動産の共有とは、ひとつの不動産を複数人で所有している状態のことです。
- 【2】ひとつの不動産を複数人で相続することや、夫婦で資金を出し合ってマイホームを購入することなどで不動産は共有名義となります。
- 【3】各共有者は持分割合に応じた権利があります(次項参照)。
3.共有名義の不動産に関する行為の民法上の権利
- 【1】共有物の使用:共有物の全部について、各共有者はその持分に応じて使用ができます。
- 【2】共有物の保存:不動産価値を保つための修繕や不法占拠者の排除は、各共有者が単独でできます。
- 【3】共有物の管理:短期的な賃貸借契約の締結や解除は、過半数の持分割合の同意が必要です。
- 【4】共有物の変更①:共有物の一括売却や建物の解体は、共有者全員の同意が必要です。
- 【5】共有物の変更②:各共有者の持分の売却は、各共有者が単独でできます。
- 【6】共有物の管理費の負担:修繕費や固定資産税等の公租公課は、各共有者が持分に応じて負担します。
- 【7】共有物の賃料の帰属:賃料は、各共有者の持分に応じて帰属(配分)します。
4.不動産の共有のデメリット
【1】売却・取り壊し(共有物の変更)に関すること
- (1)共有不動産の一括売却や建物の取り壊しは、共有者全員の同意が必要です。合意形成に労力を要する場合があります。
- (2)各共有者は、各自の持分を単独で売却できます。知らない間に共有者が替わる可能性もあります。
【2】管理(共有物の管理費の負担や賃料の帰属)に関すること
- (1)共有不動産が収益物件の場合、管理面で他の共有者と頻繁に連絡を取る負担が生じます。また管理状況が共有者に開示されなかったり、各共有者の「持分」と比較して「賃料の配分」「管理費の負担」が不公平だったりすると、共有者の中で不信感が高まることもあります。
- (2)共有不動産に係る固定資産税は、各共有者に連帯納税義務があります。固定資産税納税通知書は、共有不動産の代表者のみに送付されます。一旦納税代表者に指定されてしまうと、他の共有者が固定資産税を分担してくれなくても、事実上、納税をせざるを得なくなります。
【3】相続・税金に関すること
- (1)相続を経ると、不動産の共有者が増加していく可能性があります。共有者の数が多いと、共有者間で面識が無く連絡が取れないなど、問題が複雑化する懸念が高まります。
- (2)相続税を物納で納税する場合、共有不動産は管理処分不適格財産として物納に充てることができません(共有者全員の申請がある場合は物納に充てることができます)。
- (3)事業用や投資用の不動産を共有にすると、税務申告の処理が複雑になります。
【4】価格に関すること
- (1)一部の共有者の持分のみを売却する場合は、価格が周辺相場より安くなることが一般的です。
5.不動産の共有のメリット
- 【1】相続財産がひとつの不動産しかなく、代償分割や換価分割(後述)もできない場合、共有名義にすることで公平な遺産分割をすることができます。
- 【2】マイホームを購入する際、夫婦それぞれが住宅ローンを利用し共有名義とすることで、より高額な物件を取得できる可能性があります。
- 【3】マイホームを購入する際、夫婦それぞれが住宅ローンを利用し共有名義とすることで、夫婦双方が住宅借入金等特別控除(租税特別措置法第41条)を受けることができます(要件あり)。
- 【4】夫婦共有名義のマイホームを売却する場合、夫婦双方が居住用財産の譲渡所得の特別控除3,000万円(租税特別措置法第35条第1項)を受けることができます(要件あり)。
6.共有の解消をする方法(すでに共有となっている不動産の場合)
【1】手法
- (1)現物分割:土地などの共有不動産を物理的に分筆し、各共有者が持分に応じて単独名義にする手法です。
- (2)換価分割:共有物をすべて売却し、売却代金を各共有者の持分割合に応じて分配する手法です。
- (3)代償分割:代償分割とは、ひとりの共有者が他の共有者の持分を買い取ることで共有の解消をする手法です。
【2】手続
- (1)
裁判によらない手続
- 共有物分割協議:共有者全員で共有物分割協議を行い、解決に向けて話し合いを行うことです。
- 共有物分割調停:協議による解決が困難な場合、裁判所に調停を申し立て、調停委員を交えて解決方法を探る手続です。
- (2)
裁判による手続
- 共有物分割請求:協議が決裂したり調停が不調に終わるなど、話し合いで解決が困難な場合、提訴して共有物分割を求めることができます。裁判によって現物分割、換価分割(競売)、代償分割のいずれかの判断がなされます。
- 所在等不明共有者の持分取得請求(令和5年4月1日施行):不動産の共有者が他の共有者を知ることができず、または所在を知ることができないときは、共有者の請求により、裁判所はその共有者に、所在不明共有者の持分を取得させる裁判をすることができるようになります(改正民法262条2第1項)。
- 所在等不明共有者の譲渡権限付与請求(令和5年4月1日施行):不動産の共有者が他の共有者を知ることができず、または所在を知ることができないときは、共有者の請求により、裁判所はその共有者に、所在不明共有者以外の全員が特定のものに対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができるようになります(改正民法262条3第1項)。
7.共有を回避する方法
【1】生前に検討したいこと
- (1)遺言書作成:遺言書で各相続人に単独名義で承継する不動産を指定することにより、共有を回避することができます。
- (2)生前贈与:生前に不動産を承継者に単独名義で贈与することで、共有を回避することができます。
【2】遺産分割協議時に検討したいこと
- (1)換価分割:相続不動産を売却し、遺産分割協議で合意した割合で各相続人に売却代金を分配します。
- (2)代償分割:遺産分割協議で配分を決める際、相続する不動産を他の相続人とは共有名義にせず、代償分割(特定の相続人が特定の不動産を取得する代りに金銭等の債務を他の相続人に対して負うこと)で単独名義で取得する方法があります。代償金は、自己資金や銀行借入で賄うことや、他の相続人へ分割で支払うこともできます。
8.まとめ
不動産の共有の解消や回避をするためには、早い段階からの準備が必要となります。
当チームは、お客様のために、オーダーメイドな解決策を提案いたします。
まずはお気軽にご相談ください。
※当コラムの内容は、公開日当時の法令等に基づいております。