生前贈与と相続の違いとは?それぞれのメリットや相続税と贈与税の違いを解説

公開日 2024.03.21
生前贈与と相続

生前贈与と相続は、どちらも同じく、人に財産を譲る仕組みですが、その移転方法や税金面で大きな違いがあります。制度を効率的に活用して、上手にメリットを獲得していきましょう。

もくじ

生前贈与とは

生前贈与とは、文字どおり、ご自身が生きているうちに財産を第三者に贈与することをいいます。

贈与とは、ご自身の財産を無償で第三者に譲ることをいいます。

贈与者(与える側)が、ある財産を贈与する意思を伝え、受贈者(受け取る側)がその財産を受け取ることを承諾した場合に、贈与契約が成立し、贈与が有効になります。

生前贈与と相続の違い

生前贈与と相続の違い

相続とは、人が亡くなった際に、故人の財産を相続人に承継させることです。

生前贈与が生きているうちにご自身の判断で行うものであるのに対し、相続は亡くなった後にご自身の知らないところで行われるものであるという違いがあります。

相続の場合も、あらかじめ遺言書を作成しておくことで、財産の分け方にご自身の意思を反映することが可能です。しかし実際には、遺言書に不備があったり、遺留分で揉めてしまったり、相続税のねん出が困難だったり、といった様々な事情で、相続人同士でトラブルが起きてしまうことも多いのが実情です。

ご自身の声が届くうちに、相続人の声が聞けるうちに、確実に資産を動かしていくことができる生前贈与は、より安心して資産を次の世代に譲ることができる方法といえます。

贈与税と相続税

もう一点、生前贈与と相続の大きな違いとして、税率の違いがあります。

贈与税とは、贈与により財産を譲り受けた際に、財産を譲り受けた人に対して課される税金です。

贈与額に応じて、10%から55%の税率が定められています。生前贈与の額が4500万円以上の場合に55%の最大税率となります。

相続税とは、主に相続や遺贈によって財産を取得したときに、財産を取得した人に対して課される税金です。

相続額に応じて10%から55%の税率が定められています。相続財産の額が6億円以上の場合に55%の最大税率となります。

このように税率だけを比較すると、相続の方が生前贈与より大幅に低く、税務上のメリットがありそうに見えますね。

なお、相続税については、2022年に法改正があり、2024年から適用がスタートしておりますので、こちらの記事もご参照ください。

相続税の見直しについて

生前贈与のメリット

しかし、実際には、生前贈与を活用した方が税務上のメリットは大きくなりやすいと言われています。

その理由は、生前贈与には総額上限のない非課税枠があるためです。贈与税は、年間110万円までの贈与に対しては非課税で、この非課税枠は何回でも利用することが可能です。

また、一定の条件を満たす生前贈与に対する課税額の計算においては、上記の暦年課税方式ではなく、相続時精算課税方式を選択することも可能です。この相続時精算課税方式によると、年間110万円を超過する額の生前贈与を実施していた場合でも、その超過額が累計2500万円にいたるまでは、贈与税は課税されません。さらにこれを超えた部分の生前贈与についても、贈与税の課税率は20%という一律の水準となります。

相続の場合は、相続財産の総額が基礎控除額(※)以内の場合は、相続税は非課税となります。そのため、相続財産が基礎控除額以下の方の場合は、あらかじめ生前贈与を活用せず相続一本でも、税務上の差はないのですが、相続財産が基礎控除額以上あるという方の場合は、生前贈与の非課税枠を駆使する方法が最も税務上のメリットを得られる方法となる可能性が高いです。

※相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

生前贈与の活用方法

生前贈与の活用方法

例えば、ご自身が譲りたい財産額が2億円で、配偶者1名、子2名、そして孫2名がいるケースを想定してみましょう。

生前贈与を行う場合、各人に対して110万円ずつ合計で年間550万円分の贈与を贈与税非課税で行うことができますので、35年程度で、財産の大半について非課税で生前贈与を終えることが可能です。さらに、子2名に対する生前贈与については相続時精算課税方式も選択し得るため、贈与額を増やして生前贈与の実施期間を短縮することも可能です。

一方で、生前贈与を実施しないまま相続となった場合を想定すると、2億円全額が相続財産となります。配偶者1名と子2名が法定相続人となります。この場合、基礎控除額が4800万円ですので、法定相続分に従って相続する場合の相続税は合計で1350万円程度の想定となります(ここでは配偶者控除のみ考慮しています)。

以上のように、生前贈与をコツコツ実施することにより、多額の税務上のメリットを受けられる場合もあります。

生前贈与の注意点

贈与税と相続税は密接に関係しているため、生前贈与を検討する際には、予め相続税についても考慮した計画を立てることが重要です。

具体的には、生前贈与のうち、亡くなる直前3年間(2024年1月1日以降に実施する生前贈与については7年間)に行われたものについては、たとえ年間110万円以下の贈与であっても相続財産に組み込まれ相続税の課税対象となります。

また、上記の暦年課税方式ではなく相続時精算課税方式による場合は、直近何年間という限定もなく、年間110万円を超える部分の贈与についてすべて相続財産に組み込まれ相続税の課税対象となります。

これらの相続税について想定しておかないと、予定どおりの税務上のメリットを受けられなかったり、意図せず遺留分を侵害してしまうトラブルなどにもつながる可能性がありますので注意が必要です。

また、贈与は、書面で合意していない場合はいつでも撤回することが可能とされております。そのため、生前贈与を行う際は、忘れずに弁護士等へ相談して贈与契約書を作成しておくと安全です。

まとめ

生前贈与と相続のまとめ

生前贈与を活用する場合は、毎年契約書を作り、お互いに内容を確認して判を押し、小分けにして送金するという手続きも必要となり、一回で一方的にまとめて処理できる相続(遺言書)と比較すると随分手間がかかります。

それでも、最終的に得られるメリットは大きく変わる可能性がありますので、上手に活用されてみてください。

ご自身の相続財産の金額や内訳、相続人の人数などによっても、生前贈与のメリットの大きさや実施すべき時期が変わります。まだ早いかな?とも思えるこのタイミングで、一度税理士などの専門家に具体的に相談をされてみることをおすすめいたします。

※当コラムは、著者個人の見解に基づくものであり、東急リバブルの公式発表や見解を表すものではございません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。

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