アパート経営とは?失敗しないために知っておきたい基礎知識を解説
土地活用の選択肢の一つとしてアパート経営があります。アパート経営は住宅地の中にある土地でも建てることができ、投資額も鉄筋コンクリート造の賃貸マンション投資等と比較して大き過ぎないことから取り組みやすい土地活用です。
例えば、元々親が自宅として使っていたような土地でも、アパート経営ならできる場合が多いといえます。
アパート経営には、一体どのような特徴があるのでしょうか。
この記事では、「アパート経営」について解説します。
また、以下記事ではアパートを含む賃貸経営の実務について紹介しています。
詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
アパート経営のメリット
アパート経営は、土地を持っている方には「取り組みやすい」、「比較的利回りを上げやすい」といった点がメリットです。
住宅の賃貸需要は広いエリアに存在するため、一般的な住宅街の中にある土地でも賃貸需要を捉えることができます。
アパートは、賃貸マンションやビジネスホテル、大型商業施設等と比較すると、建物の規模が小さいことが特徴です。
土地活用の中では投資額が小さい部類に属するため、借入金の額も少なくなり、投資リスクが必然的に小さくなります。
極めて優れた立地でなくても可能な土地活用であり、投資額も比較的少額なことから取り組みやすいと言われています。
また、アパートは、2~3階以下の低層建築物が多いため、木造や軽量鉄骨造といった建築単価の安い材料を選択することができます。
さらに、間取りもワンルームのような賃料単価の高い部屋とすることもできます。
アパートは、建築単価の低い材料で投資額を抑えやすく、かつ、賃料単価の高い部屋を企画できることから、利回りを上げやすいです。
例えば、戸建て賃貸のように賃料単価の低いファミリータイプの間取りしか選択できない土地活用よりは、収益性を上げやすいといえます。
アパート経営のリスク
アパート経営の代表的なリスクは、空室リスクです。空室が長引くと、単に家賃収入が減るだけでなく、次の入居者を決めるために募集賃料を下げざるを得なくなります。
募集賃料を下げだすと、その後、賃料を上げていくことは難しくなっていくため、空室リスクは賃料下落リスクも引き起こします。
また、収入が減ることで、連動して借入金の返済も苦しくなっていくことが多いです。空室リスクは、借入金返済リスクも引き起こします。
アパートのような収益物件は、家賃収入と利回りの関係で価格が決まりますので、空室が多い物件は、アパートの資産価値も下がってしまいます。
アパートの価格が借入金の残債よりも低くなってしまえば、売却することも難しいです。空室リスクは、資産価値下落リスクも引き起こします。
空室リスクは様々なリスクを引き起こす原因となるため、最も避けるべきリスクといえるのです。
アパート経営のリスクにおける対策
アパート経営において空室リスクを下げるには、賃貸需要を捉えやすい立地でアパート経営を行うことが最も重要な対策となります。
賃貸需要を捉えやすい立地とは、例えば通勤に便利な路線にある駅で、最寄駅から徒歩10分圏内に存在するような土地が理想です。
特に社会人の単身者の賃貸需要がある地域では、社会人向けのワンルームで賃料も高く設定しやすくなります。
なお、賃料保証とも呼ばれるサブリース(賃料保証型サブリース)は、空室リスクの対策にならない場合があるため、十分に理解した上で契約することが必要です。
管理会社と賃料保証型サブリースを契約しても、空室が多く発生すればサブリース会社から賃料減額の要請があります。
結局のところ、賃料保証型サブリースを選択しても空室が発生すれば賃料が下がるため、空室リスクは回避できないということです。
そのため、空室が発生しにくい良い立地でアパート経営を行うことや、手堅い賃料でキャッシュフローを試算しておくことが、何よりも根本的な対策となっています。
アパート経営の初期費用
アパート経営を行う際にかかる主な初期費用として建築費があります。
例えば、軽量鉄骨造で、延床面積が60坪のアパートを建てる場合、建築費の坪単価を100万円と仮定するすると、建築費は6,000万円かかります。
軽量鉄骨造とは、一般的に鉄骨の厚さが6mm未満の鋼材のことです。
重量鉄骨造とは、鉄骨の厚さが6mm以上の鋼材のことを指します。
その他として、アパート経営には以下のような諸費用も発生します。
【アパート建築に必要な諸費用】
- 設計料
- 現況測量費
- ボーリング調査費用
- 水道分担金
- 損害保険料
- 融資事務手数料
- 司法書士手数料
- 印紙税
- 建物保存登記の登録免許税
- 抵当権設定の登録免許税
- 不動産取得税
諸費用は、合計すると建築費の概ね5%程度の金額となります。
建築費が6,000万円であれば、諸費用の合計は300万円程度となるイメージです。
アパート経営の収支シミュレーション
アパート経営の収入は、建物の規模や家賃の相場によっても異なります。
ここでは、以下の条件でアパート経営の収入のシミュレーションを解説します。
(仮定)
土地の面積 | 200平米(60.5坪) |
---|---|
建物の延床面積 | 200平米(60.5坪) |
建築費の単価 | 100万円/坪 |
建築時の諸費用合計 | 建築費の5% |
間取り | 各部屋25平米のワンルーム |
家賃 | 7万円/月 |
(初期費用)
-
- 建築費
- =延床面積×坪単価
=60.5坪×100万円
=6,050万円
-
- 諸費用
- =建築費×5%(設定条件より)
=6,050万円×5%
=302.5万円
-
- 初期費用
- =建築費+諸費用
=6,050万円+302.5万円
=6,352.5万円
(収入)
各部屋25平米であるため、延床面積が200平米の建物の場合、合計で8部屋となります。(外階段・外廊下タイプを想定)
-
- 部屋数
- =(延床面積)÷各部屋の面積
=200平米÷25平米
=8室
1部屋あたりの家賃収入は7万円/月であるため、年間家賃収入は以下のようになります。
-
- 年間家賃収入
- =月額家賃×部屋数×12ヶ月
=7万円/月×8室×12ヶ月
=672万円
以上より、表面利回りを求めてみます。
表面利回りとは、年間家賃収入を投資額で割った利回りのことです。
建物投資額に対する表面利回りは、以下のように計算されます。
(表面利回り)
-
- 表面利回り
- =年間家賃収入÷建物投資額
=672万円÷6,352.5万円
≒10.6%
アパート経営には、ランニングコストも発生します。
ランニングコストには、経常的に生じる費用と偶発的に生じる費用の2種類があり、それぞれの費用と家賃に対する割合を示すと、下表の通りです。
特徴 | 項目 | 満室家賃に対する割合 |
---|---|---|
経常的に 生じる費用 |
・土地と建物の固定資産税および都市計画税 ・火災保険や地震保険の建物の損害保険料 ・管理委託料 |
10~15%程度 |
偶発的に 生じる費用 |
・クロスの張り替え費用等の軽微な修繕費 ・仲介手数料や広告宣伝費の入居者募集費用 |
10~15%程度 |
偶発的な費用は毎年生じるとは限りません。
ここでは、経常的に生じる費用と偶発的に生じる費用を合計し、平均すると家賃の20%程度のランニングコストがかかると仮定します。
また、以下の条件で借入金を組むことを想定します。
(アパートローンの仮定条件)
借入金額 | 5,445万円(建築費の90%) |
---|---|
借入期間 | 27年 |
アパートローンの金利 | 2.5% |
返済方法 | 元利均等返済(元金と利息の合計が毎月同額となる返済方法) |
税金を除くキャッシュフロー(手残り)は以下の通りです。
(キャッシュフロー)
アパートローンの条件より、毎月の返済額は231,275円、毎年の返済額は約277.5万円です。
経費率を家賃の20%とした場合、ランニングコストは以下のようになります。
-
- ランニングコスト
- =年間家賃収入×経費率
=672万円×20%
=134.4万円
-
- キャッシュフロー
- =年間家賃収入-ランニングコスト-年間返済額
=672万円-134.4万円-277.5万円
=260.1万円
上記シミュレーションは単年のものです。
不動産所得(賃貸経営で得られる利益のこと)に対しては、別途、所得税および住民税、復興特別所得税が生じます。
その他として、10~15年に1度のペースで大規模修繕費が発生します。
キャッシュフローは、家賃収入から大きく減額された金額となりました。
アパートを計画していく上では、キャッシュフローも考慮しながら検討していくことが望ましいといえます。
まとめ
以上、アパート経営のメリットについて解説してきました。アパート経営は、比較的取り組みやすい土地活用です。
空室リスクを回避するには、良い立地で行う必要があります。ご所有の土地でアパート経営を計画・検討する上で参考にして頂ければと思います。
※当コラムは、著者個人の見解に基づくものであり、東急リバブルの公式発表や見解を表すものではございません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。