不動産投資におけるポートフォリオの考え方とは?不動産投資のポートフォリオを作る場合のポイントもあわせて解説
もくじ
投資行為に必要なポートフォリオとは
ポートフォリオとは直訳すると“様々な書類を入れておくケース”と言ったような意味で、投資行動においては自己資金をどの金融商品の具体的な銘柄や不動産などへ投資するかという組み合わせ・配分することを意味します。どの金融商品・銘柄もしくは不動産などにどれだけの資金を投下するのかを考えることは、その投資先の運用状況や税金などの負担、リスクの大きさなど様々な特性の違いを把握し検討する上でとても重要な要素です。それに加えてリターンをどの程度得たいのかという目標をイメージすることで、リスクとリターンのバランスを考えることにもなります。つまり、様々な投資向け商品の組み合わせ=投資する資産の構成および資金の配分を考えて投資行動全体を管理することが、ご自身のポートフォリオを作る、ということなのです。
ポートフォリオと分散投資の違い
ちなみに、よく混同されるのが“分散投資”という言葉です。分散投資とは、投資する時期をずらしたり、投資先を世界的に異なる複数の地域にしたり、投資対象そのものをいくつかに分けたりして、投資リスクを低減&分散させる投資手法のことを指します。ポートフォリオは、この分散投資を行う前提で投資商品の構成・配分を考えることで、分散投資はポートフォリオに沿って実施する投資行為そのものを指します。両者には投資活動のプロセスにおいて密接な関係があるものの、言葉の意味するところは同じではありません。
また、分散投資にはもう一つ異なる意味合いがあり、自己資金を①生活費:必要不可欠な資金 ②予備費:緊急用&近い将来使う予定の資金 ③投資用資金:すぐに使う予定がない資金、に分けて、投資を③の資金に限って使うという考え方があります。実生活に影響を与えることなく、精神的にも経済的にも余裕をもって投資することができるという意味で、有用な考え方です。
ポートフォリオに不動産を組み込むことの意味
不動産投資は比較的長期間の投資活動で、賃料という毎月得られるインカムゲインが主な収益源であり、不動産を最終的に売却して得られるキャピタルゲインは副収入の位置付けとなります。対して金融商品は専らキャピタルゲインを目的として比較的短期間のうちに売買を繰り返すことが多いという性質の違いがあります。
したがって、分散投資を前提とすると、このように性格の異なる不動産と金融商品の特性をよく理解した上で、それぞれをポートフォリオに組み込むと、長期運用するのか短期運用で1年後くらいを目途に手仕舞いするのかに合わせて、リスクヘッジ=リスクに対して予め備えておくことができるようになります。
不動産をポートフォリオに組み込むメリット
不動産をポートフォリオに組み込むメリットは大きく4つありますので解説していきます。
インカムゲインが得られる
上記の通り、不動産投資の最大の魅力は安定的なインカムゲインです。毎月定期的に得られる賃料を有効活用して再投資することもできますし、貯蓄して将来に備えることも、また毎月の生活費としても活用できます。
インフレ対策ができる
安定的なインカムゲインが長期に渡って得られる蓋然性が高く、足元の経済環境のように地価の上昇や円安によるコストプッシュ型のインフレが発生している時期は、不動産価格も連動して上昇しますからインフレ対策としても有効という点で、不動産投資をポートフォリオに組み込むことは、収益を安定させるためにも大きなメリットがあると言えるでしょう。
初期投資の自己負担を少額にすることも可能
不動産投資というと、初期投資額が比較的大きいためハードルが高いと考えられがちですが、全額自己資金ではなく不動産投資ローンを組んでレバレッジを効かせるという方法もあります。実に様々な種類があって投資額も様々ですから、毎月得られるリターンと税金や経費などのコストとのバランスを考慮すれば、大きな失敗のない投資と言えます。
ミドルリスク・ミドルリターンである
投資でリターンを得るにはリスクがつきものです。定期預金や定期貯金は元本が保証されているためリスクはほぼゼロですが、その代わり得られるリターン:金利による収益も僅かなローリスク&ローリターン型の投資、一方、先進国株や先物取引などは将来の不確実性が高いぶん得られるリターンも大きいという意味でハイリスク&ハイリターン型の投資と見ることができます。
その点、不動産投資は購入後の不動産に瑕疵などがなければ資産価値は経年劣化によって長期的に&徐々に低下しますから、資産としての振れ幅は小さく、また価格変動についての不確実性も相対的に少ないので、不動産投資はミドルリスク&ミドルリターン型の投資であると言えるでしょう。このような“投資商品“をポートフォリオに組み込むことで、長期的な視野に基づいた資産運用が可能になり、短期間で売ったり買ったりを繰り返すギャンブルのような投資行為をする可能性を低くできます。
不動産投資のみで作成するポートフォリオ
では、株式投資や定期預金などに資金を振り分けず、不動産投資のみでポートフォリオを構成する場合には、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。
物件の種類によるリスク分散
上記の通り、住宅、オフィス、ソーシャルビル、倉庫、店舗、工場、駐車場、公的施設など投資の対象となる不動産には実に様々な種類があり、投資額や毎月の賃料、不動産の維持管理コストも様々異なります。不動産の種類ごとの特性を把握し、その違いに応じた“分散投資”を検討することが望ましいでしょう。
例えば、一棟単位でマンションやソーシャルビルなどを購入して運用する場合、当然リターン総額は大きくなりますがリスクも相応に大きくなりますから、区分所有物件:マンションの一室に投資するほうが投下資金は少なくて済みます。
また、住宅は生活の基盤になる不動産なので、多くの場合年単位で借りてもらうことが可能でリターンも安定しますが、オフィスや店舗は業績に応じてテナントの収益も変動しますから、先のコロナ禍では実質的な外出禁止措置が講じられて大変厳しい状況に置かれ、リターンについてもリスキーな状況であったことは記憶に新しいところです。
エリアの違いによるリスク分散
不動産は“動かせない財産”ですから、エリアの違いによる収益力&賃料水準の違いが明らかです。当然のことながら、市街地であれば居住者も就業者や学生などの関係人口も多く、エリアの利用価値も相対的に高いため相場賃料も高くなりますし、反対に人の少ない地方圏などでは相場賃料が低くなります。そのため、利便性の高いエリアと相応のエリアに物件を分散させてリスクをヘッジすることが可能になります。
物件の築年数によるリスク分散
不動産は経年減価するため、一般に築年数が若いほど物件価格も賃料水準も高く、築年数が進むに連れて物件価格と賃料が低下します。もちろん築年数が経過してもリフォーム&リノベーションによって利用価値や快適性を高めて賃料をアップさせることは可能で、また立地の良さから築年数が経過しても賃料が下がらないエリアはあります。新築&築浅物件を購入して比較的長期の運用を前提とする一方、築年が進んで安価な物件を運用して利回りを拡大するといった手法を取ることによって、リスクを分散させることができます。
物件の構造によるリスク分散
不動産は建築の工法および構造によって大きく7つに分類することができます。法定耐用年数の短い順に、S造(金属造で骨格材の厚さが3ミリ以下):19年、木造モルタル造(骨格が木材で水砂入りセメント使用)20年、木造・合成樹脂造:22年、S造(金属造で骨格材の厚さが3~4ミリ以下):27年、S造(金属造で骨格材の厚さが4ミリ超):34年、レンガ造・石造・ブロック造:38年、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)およびRC造(鉄筋コンクリート):47年となっており、残存価値の長いほうが物理的な寿命は長く、また資産性も長く維持されるとされています。
法定耐用年数が短く比較的安価に購入可能な木造一戸建と、法定耐用年数が長い区分所有マンションの一室にそれぞれ投資し、短期間で高利回りを得る物件と長期間低利で安定運用する物件とに資金を分けて、相互のリスクを補完するといったことが可能になります。
ポートフォリオを見直す際のポイントとは
投資行為=資産運用は、株式や債券、投資信託などの金融商品、または不動産を購入し、その資金を支払ったらそれで終わりではなく、むしろそこからがスタートです。継続的な資産運用をするためには、購入した金融商品および不動産の各々の市場に関する動きや関連情報、投資運用会社や資産管理会社から提供されるレポートなどをチェックしたり、その結果ポートフォリオを見直したりする必要があるのです。このポートフォリオを見直すことを“リバランス”=投資構成&収益力のバランスの見直し、と言います。
ポートフォリオを見直す=“リバランス”のタイミングとは
リバランスは、株式、債券、投資信託、不動産などの価格や賃料収入が上下することによって、当初の目論見と収益性が悪くなってしまった場合や、現状は安定していても将来的に不安要素が多く見切るタイミングを検討するなど、最初に組み立てたポートフォリオを当初のイメージに戻し、更に良くするために必要不可欠なプロセスです。
リバランスには、毎年1回など定期的に実施するケースと、当初の状況から収益性が〇〇ポイント動いて(低下して)しまったらなど変化に応じて行うケースがありますが、投資を開始したばかりの時期には、市況の変化に応じてというよりは、勉強のつもりで定期的に見直すことをお勧めします。ポートフォリオを見直すことは、投資全体の確認、棚卸をするようなものですから相応に手間はかかりますが、専門家の意見やアドバイスを聞いて、見直すべきタイミングで見直すべきポイントを見直す、という姿勢が求められます。
不動産を組み込んだポートフォリオを見直す際のポイントとは
不動産をポートフォリオに組み込んでいる場合は、当初から長期的な運用を前提としているケースがほとんどですから、短期間で売却&買い替えということではなく、収益力に現状問題はないか、経費・コストは想定通りか、また予期せぬ経費が発生する可能性はないか、などをチェックすることが必要です。また物件に何らか問題、例えば雨漏りやドアの不具合など使用&収益に直結するような不具合が見つかった場合などは、可及的速やかに対応しなければなりません。不動産運用ではリスクとリターンの見直しだけでなく、運用コストの見直しも実施すると良いでしょう。
まとめ
今回は投資活動におけるポートフォリオ作成の重要性とそのポイント、および不動産をポートフォリオに組み入れるメリットなどについて解説しました。ポートフォリオはご自身の投資の指針になるものであり、また結果を記した通信簿にもなり得るものですから、外部要因に影響されることがあるとは言え、ご自身の投資活動に対する努力や工夫などが反映されることによって、改善されより高い収益を生み出すこともできるという点で、投資活動を継続する上でとても大切な“味方”になってくれるものでもあります。
特に不動産をポートフォリオに組み込む場合、もしくは不動産だけでポートフォリオを組成する場合は、必然的に長期間の投資活動を支える&頼りになる“相棒”ですから、ご自身がまずどのような投資を行いたいのか、また投資を行う上での目標や実現したいことなども併せてポートフォリオに反映させて、充実した&ブレのない、そしていつでも見直しが可能な不動産投資を維持・継続していただきたいものです。
※当コラムは、著者個人の見解に基づくものであり、東急リバブルの公式発表や見解を表すものではございません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。