法人の権利能力・行為能力
読み:ほうじんのけんりのうりょく・こういのうりょく
民法は、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と規定している(民法第34条)。
この規定は、法人の権利能力の範囲を制限し、それと同時に法人の行為能力の範囲をも定めた規定であると解されている(判例、通説)。
すなわち、定款その他の基本約款に記載された目的を超えた行為を法人の代表者(理事など)が行なった場合には、その代表者の行為は、法人の権利能力(および行為能力)の範囲を超えるので、その代表者の行為は法人に帰属しないという趣旨である。
しかしながら、実際には代表者が一見「目的の範囲」を超える行為を行なうことは多く見られるので、これをどのように解釈すべきかが問題となる。
1.目的の範囲を一見超えていると見られる代表者の行為
定款には記載のない種類の行為を代表者が行なった場合について、判例では「目的の範囲」を極力拡大して解釈することにより、代表者の行為を法人の行為として法人に帰属させている(例えば、会社の政治献金を「目的の範囲内」と解釈する)。
2.代表者の不法行為
代表者が「職務を行うについて」第三者に損害を与えた場合には、法人がその不法行為について損害賠償責任を負う。この場合にも、判例は、代表者の職務を広く解釈し、法人の損害賠償責任の範囲を広くしている(詳しくは法人の不法行為責任へ)。