権利の濫用
読み:けんりのらんよう
私法上の概念で、一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や実際の結果に照らしてそれを認めることができないと判断されることをいう。
民法には、「権利の濫用はこれを許さない」という規定がある。
権利の濫用であるかどうかは具体的に判断するほかないが、例えば、加害を目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
現実の裁判においては、権利の行使を認めた場合と認めない場合に生じる不利益や社会的影響を比較較量して判断されることが多い。例えば、自己の土地の利用により近隣に迷惑が及ぶ場合には、土地利用の合理性、従来の経緯や慣行、迷惑の程度や受忍の可能性、影響回避の手段などを比較較量して、所有権の濫用であるかどうかが判断されることになるであろう(所有権は絶対的なものではないのである)。
権利の濫用であるとされたときには、権利行使の効果が生じないばかりか、権利を行使した者は不法行為として損害賠償の責任を負うことになる。