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専門家
コラムVol.16

賃貸住宅のキャップレートの現状と見通し
2022年度下期版

コラムニスト・吉崎 誠二|プロフィール写真 COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

22年後半も区分マンション投資熱は、ますます高まっているようです。不動産投資家の「投資への思い」のバロメーターとして有効な指標がキャップレートです。キャップレートはいくつかの機関から公表されていますが、今回は、(財)日本不動産研究所から2022年11月25日に発表された第47回「不動産投資家調査」(調査時点:22年10月)のデータをもとに解説します。

最新の調査結果では、賃貸住宅のキャップレートは、調査開始以来最も低い数字となり、区分マンション投資を含めて賃貸住宅への投資熱が最高潮にあることが浮き彫りになりました。

リスク選好とキャップレート

不動産投資を行う方にとって「どのくらいの利回りを期待するか」には個人差があります。「利回りが低くても安定した収益が欲しい」という方もいれば、逆に「リスクがあっても高い利回りが期待できる物件を買いたい」という方もいます。「リスク選好」に個人差があることはどんな投資でも同じです。
「どのくらいの利回りを期待している方が多いのか」については、投資家の方にとっては、「自身の期待利回りについての妥当性」の基軸となると思いますので、知っておくとよいと思います。

イメージ01
キャップレートと価格の関係

期待する利回りのことを「キャップレート」(正しくは,Capitalization Rate)と言います。
賃料やそのほかの要因が一定だとすると、キャップレートの低下は不動産価格の上昇を意味します。住宅賃料は、当然市況に左右されますが、短期間でそれほど大きな動きをしません。そのため、キャップレートの低下は、大半の場合、価格上昇を意味することになります。それはつまり、「価格上昇でも、不動産投資を行いたいと思う方が増える傾向にある」ということになります。

一般的にシンクタンクが発表しているキャップレートは、デベロッパーやアセットマネージャーやレンダーなど不動産投資に携わる専門家へ「現時点で、不動産投資を行う場合、どのくらいの利回りを期待するか」という内容のアンケート調査を行い、集計したものです。
不動産投資における利回りは、不動産の純収益(=NOI、総家賃収入から管理費や修繕費などの経費を引いたもの)を不動産価格で割って算出しますが、この値が「これくらい期待したい」という値がキャップレートということになります。

調査以来、最も低い数字を記録!

ワンルームタイプの賃貸住宅(一棟)のキャップレートは、全国主要都市で軒並み低下(賃料一定なら価格上昇)しています(横浜・大阪は横ばい)。
最もキャップレートの低い東京城南(目黒区・世田谷区、渋谷・恵比寿へ電車などで15分圏内)地域では、22年4月調査の前回(4.0%)から0.1ポイント下落し、1999年の調査開始以来、初めて4%を下回る結果となりました(注:ワンルームタイプは25~30㎡、築5年未満、駅徒歩10分以内の想定)。城南地域では2010年4月分の調査以降、横ばいの回もありますが、ほぼキャップレートは右肩下がりに低下しています。このことからも、一時的なブームという状況ではなさそうです。また、同地域の想定物件の実際の取引における利回りは3.6%と極めて低い数字となり、賃貸住宅投資熱の高さがうかがえます。

賃貸住宅のキャップレート(東京・城南)

東京・城東(墨田区・江東区、東京駅や大手町駅へ電車などで15分圏内)地域では、4.1%とこちらもかなり低い値となっています。また、取引でのキャップレートは3.8%でした。
横浜エリアのワンルームタイプのキャップレートは4.5%※でした。
(※22年4月の調査と同じ)

ファミリータイプの状況

ファミリータイプ(注:想定は広さ50㎡~80㎡、それ以外はワンルームタイプと同じ)でも同様に、全国主要都市で軒並み低下(神戸・広島は横ばい)しています。
東京城南地域では、前回4.1%から4.0%へ下落、同地域の想定物件の実際の取引における利回りは3.7%とこちらも極めて低い数字となっています。

また、東京城東エリアでは、キャップレートは4.2%、想定取引利回りは3.9%となりました。最後に横浜エリアのファミリータイプのキャップレートは4.5%(前回調査では4.7%)となり、ワンルームタイプと同じ値となり、横浜エリアの特徴と言えそうです。

このようなキャップレートが極めて低い状況は、金利の上昇がない限り、しばらく続きそうです。

コラムニスト・吉崎 誠二|プロフィール写真 COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
立教大学大学院 博士前期課程修了。

㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

著書:「不動産サイクル理論で読み解く不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。様々な媒体に、月15本の連載を執筆。
資格:宅建士

レギュラー出演
◇ ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から“誠”論」(月~水: 17時~17時50分)
◇ 「吉崎誠二のウォームアップ830」(月: 8時30分~ニュース解説番組)
◇ テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

吉崎誠二公式サイト http://yoshizakiseiji.com/

ご留意事項
※不動産に対する投資はリスク(不確実性)を含んでおり、投資元本が保証されているものではなく、元本を下回る損失が発⽣する可能性がございます。
※本マーケットレポート に掲載されている指標(例:利回り、賃料、不動産価格、REIT指数、金利など)は、不動産市場や金融市場の影響を受ける変動リスクを含むものであり、
これらの変動が原因で損失が生じる恐れがあります。 投資をする際はお客様ご自身でご判断ください。当社は一切の責任を負いません。
※本マーケットレポートに掲載されている情報は、2022年12月9日時点公表分です。各指標は今後更新される予定があります。
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