賃貸用住宅（＝貸家）の新築建築件数は、21年3月から18カ月連続
（執筆時の最新公表データまで連続して）前年同月比プラスの状況が続いています。
投資用区分マンションもこの賃貸用住宅に入りますが、区分マンション投資熱も、
引き続き旺盛の状況が続いています。

22年分貸家新築着工件数の分析と
今後の展開

22年の9月末までの新築住宅市況をみれば、自用住宅「持ち家」の建築着工件数が前年比で大きく減り、
一方で、賃貸用住宅「貸家」の建築着工件数が昨年から引き続き大きく増えています。
これら２つのカテゴリーで住宅建築の約3/4を占めていますが、両者で明暗が大きく分かれている状況となっています。
図は、2022年1月から9月（10月末日公表分）までの、新築住宅着工件数を示しています。
これをみると、持ち家は前年同月比が全て赤字（マイナス）で、貸家は全て黒字（プラス）と対照的な様相です。

「持ち家」では、21年は、20年に新型コロナウイルスの蔓延の影響で大きく落ち込んだ反動（ペントアップ需要）で大きく伸ばしました。
22年は、その反動に加えて、建築価格の上昇が影響しているものと思われます。

一方、貸家着工件数は21年春ごろから好調が続いています。
貸家つまり賃貸用住宅が、ここ1年半以上も、前の年に比べて多く建てられているということです。

新築賃貸住宅を建築するのは
どんな⽅々か？

建てられている賃貸住宅は、主に以下の4つに分類されます。※緑字が、建築主です

① マンションデベロッパーなどが投資用に区分所有権を販売する
→ 区分マンション投資、ワンルームマンション投資

② 投資用不動産建築販売会社が1棟単位で販売する
→ 不動産会社が建築して投資家に販売。1棟収益物件のイメージ

③ 土地活用としての賃貸住宅の建築
→ 遊休地に土地オーナー（地主・企業）が賃貸住宅を建てる

④ 土地と建物セットでの不動産投資用に賃貸住宅を建てる
→ 建築は、不動産投資家自らが建築主となる

なぜ、賃貸住宅建築が増えているのか

ここからは、なぜ、賃貸住宅建築が増えているかを考えてみましょう。

① 世界各国が利上げしている中で、
日銀は金融緩和政策つまり低金利を維持している

先進各国は、概ね政策金利利上げを行い、それに伴い住宅ローン、不動産融資ローン金利の上昇が続いています。
しかし、我が国ではコストプッシュ（原材料費などの上昇）による物価上昇が見られ始めましたが、まだ政策金利はゼロ（以下）を続け、各種ローン金利は超低水準が続いています。


② 賃貸住宅需要は今後も旺盛な見通し

都市部における賃貸住宅は、若年層の都市部への人口流入が長期的に続きそうなことに加え、持ち家志向の低下、単身世帯の増加、などの理由に、人口減少になるものの、需要は旺盛であることが予想されます。

いくら低金利が続いて融資が組みやすいとしても、賃貸住宅需要がないと賃貸住宅投資は、旺盛とはなりません。各種データ、今後の人口動態予測からも今後も賃貸住宅需要が見込めることがわかります。

などが考えられます。

23年の見通し

最後に、23年の賃貸住宅建築（＝貸家着工件数）の見通しです。
不動産投資意欲は旺盛な状況が続いていますので、融資金利がこのまま低水準が維持されれば、賃貸住宅建築はさらに増えるでしょう。
加えて、税制度の改正、とくに株式関連収益では増税が検討されています。富裕層への優遇と言われていた制度が見直されようとしています。これが現実のものになれば、株式から不動産への資産転換が進むかもしれません。