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専門家
コラムVol.18

首都圏への流入が再び増加!
最新「人口移動報告」を読み解く

コラムニスト・吉崎 誠二|プロフィール写真 COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
人の移動状況を知ることで住宅需要を推し量る

都道府県や市町村などを跨ぐ人の移動の動向は、社会状況を大きく反映します。
移動の理由を挙げれば、就職、進学、転職、転勤、などなど、どれも「人生の大きな転機」と言えるものです。この大きな転機の場面ではその多くの場合、住居の移動を伴うことになります。こうして考えると、人の移動状況を知ることで住宅需要を推し量ることができると思います。
さきごろ、総務省から2022年1年間の人口移動報告が発表されました(2023年1月30日発表)。
この調査は住民基本台帳に基づき、都道府県や市町村を跨ぐ転入・転出といった移動者数を集計したものです。今回はこのデータを分析してみましょう。

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地域をまたぐ移動が回復基調に

2022年1年間に都道府県を跨ぐ移動をした方(日本人及び外国人含む、以下同)は255万3434人となり前年比で+7万6794人(+3.1%)となりました。

移動した方の対前年の実数をみれば、20年は新型コロナウイルスの影響が大きく、2019年の1年間に移動した実数から-104904人と大幅に減少しました。
その後、21年は前年比+12648人、22年は(同)+76794人となり、都道府県を跨ぐ移動が戻ってきていることが分かります。

新型コロナウイルス感染症の広まりから3年が経過し経済活動もほぼ正常化し、2類相当からインフルエンザ等と同じ扱いの5類への移行、マスク着用要請も緩和、ようやく正常化してきている様子がうかがえます。

転入者と転入超過の状況

次に、転入・転出の状況を都道府県別に見てみましょう。
2022年の1年間に転入者が最も多かったのは東京都で約44万人、次に神奈川県約24万人となりました。埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県と続き、ここまでが10万人以上の転入者数となり、以上7県で全国の転入者の約56%となっています。21年と比べて転入者が最も増えたのが東京都で約2万人(+4.7%)増えています。
転入者数から転出者数を引いた値がプラスの場合は転入超過、マイナスの場合は転出超過となりますが、転入超過は全国47都道府県のうち11都府県でした。

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最も多いのは東京都の約3.8万人、次に神奈川県の約2.8万人となっています。前年に比べ転入超過が拡大したのは4都府県で最も拡大したのは東京都(+3.3万人)で、逆に最も縮小したのは千葉県となっています。千葉県は転入超過ですが、実数が落ち込んだのは、20-21年に多く見られたリモートワークの浸透により首都圏への移住傾向が落ち着いたものと推測されます。

高水準続く東京都区部消費者物価指数

物価水準を推し量る公的な指標が「消費者物価指数=CPI」です。
公的な消費者物価指数には、全国消費者指数と東京都区部消費者物価指数の2つがあります。このうち、東京都区部消費者物価指数は、全国消費者物価指数より先に集計・公表されますので、先行指標となっています。
 1月10日に総務省より東京23区の2022年12月分の消費者物価指数が発表されました。これによれば、天候による変動が大きい「生鮮食品を除いた指数=コア指数」が、前年同月比で4.0%上昇しました。4%台の上昇となるのは、1982年4月以来40年8か月ぶりの高い水準となります。

東京都では2019年が約8.2万人の転入超過でしたが、21年には約5400人まで減少、22年は4万人弱ですので、およそ半分くらいまでもどりました。東京23区(特別区)への流入は前年比でプラス約2万人となっており、都心への人口流入が復活していることもうかがえます。一時的に落ち込んだ、東京への人口流入、東京一極集中の傾向が再び加速してきたと言えるでしょう。

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年代別の人口移動と賃貸マンション需要

次に年代別の動きを見てみましょう。
全国の移動者を5歳刻みの年齢別でみれば、最も移動が多いのは20-24歳(約58.8万人)、次に25-29歳(約52.7万人)、30-34歳(約31.2万人)、35-39歳(約20.1万人)、そして15-19歳(約14.3万人)と続きます。年齢でみれば、都道府県を跨ぐ移動が最も多いのは22歳、次に24歳となっています。こうしてみれば、都道府県を跨ぐ移動の最大の理由は「就職や仕事に関すること」だと思われます。そして次は大学や専門学校などへの進学のようです。このうち、20-24歳、25-29歳、30-34歳、35-39歳では2021年よりも移動者が増加しました。

2020年-22年の5歳刻みの転入者数(東京都)

図は、2020・21・22年の東京都の年代別の転入者数を示しています。
就職や進学により都道府県を跨いだ移動を行う場合、これらの方々の多くは移動先では賃貸マンション(主にワンルームや1LDKの区分マンション)に住みます。とくに仕事理由による移動が復活してきていることは、賃貸マンション需要には追い風だといえるでしょう。

コラムニスト・吉崎 誠二|プロフィール写真 COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
立教大学大学院 博士前期課程修了。

㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

著書:「不動産サイクル理論で読み解く不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。様々な媒体に、月15本の連載を執筆。
資格:宅建士

レギュラー出演
◇ ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から“誠”論」(月~水: 17時~17時50分)
◇ 「吉崎誠二のウォームアップ830」(月: 8時30分~ニュース解説番組)
◇ テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

吉崎誠二公式サイト http://yoshizakiseiji.com/

ご留意事項
※不動産に対する投資はリスク(不確実性)を含んでおり、投資元本が保証されているものではなく、元本を下回る損失が発⽣する可能性がございます。
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※本マーケットレポートに掲載されている情報は、2023年2月20日時点公表分です。各指標は今後更新される予定があります。
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