3月22日に国土交通省より2022年分の地価公示が発表されました。2021年分はコロナ禍で景気が後退した影響で、多くのエリアで変動率がマイナスとなりましたが、2022年分の全国平均では、住宅地でプラス0.5%、商業地でプラス0.4%で、2年ぶりにプラスに転じました。地価公示は毎年1月1日が評価時点となるので、2020年1月は新型コロナウィルスがパンデミックとなる直前の評価と言えます。このように、コロナ禍直前の2020年の住宅地変動率が0.8%、2019年が0.6%ですので、住宅地においては比較的コロナ禍前の水準にまで戻りつつあると言えます。
一方で、商業地も回復傾向にはありますが、コロナ禍前の水準には程遠い状況と言えます。全国の商業地変動率ワースト10のうち大阪・ミナミが8地点を占めるなど、インバウンド需要に支えられてきた商業地エリアなどでの下落が目立っています。このように一部の商業地ではインバウンド需要回復の遅れから、住宅地ほどの回復が進んでいない状況です。
次に都道府県別で見てみましょう。住宅地の変動率が上昇した都道府県は、2021年では8であったのに対し、2022年は20に増えました。和歌山県と愛媛県においては、変動率は前年と変わりませんでしたが、それ以外の45都道府県では、前年よりも変動率が上昇(もしくはマイナス幅の縮小)しました。
住宅地においては、リモートワークの浸透により、「よりよい住環境への需要」が底堅く、都心や市中心部に近い一定の人気のある住宅地の需要は相変わらず高いという状況です。また、低金利が続いていることなどもあって、住宅需要が旺盛であることが住宅地地価上昇に寄与していると見られます。
インフレ抑制のため、世界中で金融引き締めが議論されています。日本では、日銀の黒田総裁が「物価目標の2%が安定的に達成されるまで長短金利の引き上げは想定していない」と述べ、早期利上げ観測を否定している状況です。しかし、欧米では長期金利が上昇を続けており、日本もいつかは、長らく続いた低金利から脱却するタイミングが来ることが考えられます。
2022年に入ってからは、確かに金利は上昇していますが、これまでがかなりの低水準であったので、長期推移でみるとまだ低い水準と言えます。とはいえ、わずかな金利の上昇でも支払い総額に影響を与えます。また、変動金利ですでに融資を受けている方は、金利の上昇によってキャッシュフロー計画が乱れる可能性があります。
賃料は下方硬直性があり、景気にそれほど左右されず比較的安定していると言われています。よって、金利が上昇したからといって、すぐに家賃が上昇傾向になるということは考えにくいです。
しかし、図3のように長期推移で見てみると、金利と家賃は似たような動きを見せているのが分かります。実際に、両者の相関関係を示す相関係数は、0.91とかなり強い相関関係が見られます。今後、金利が大きく上昇したとしても、その際に家賃の上昇が見込めるのであれば、キャッシュフローへの影響が大きくなる可能性は低いかもしれません。
東証REIT指数は、東京証券取引所に上場している不動産投資信託(JREIT)全銘柄を対象とした時価総額加重平均型の指数です。
流動性の低い実物不動産に⽐べ、REITは流動性が⾼いため、その指数は、【不動産価格の先⾏指標】という性質を持っていると⾔えます。
ここでは、全体(緑)と住宅REITのみ(⻘)の2つを掲載しています。
年初から低迷していたJREITは3月中頃から回復基調にあります。JREIT指数は不動産市況の先行指標と言われています。
期待利回り=キャップレート:投資家が不動産から期待する収益性(利回り)のこと。
賃料⼀定のもとでは、キャップレートの低下は投資不動産価格(ここではワンルームマンション)の価格上昇を意味します。
(ここで想定するワンルームは以下の通りです)
交通アクセス:最寄り駅から徒歩10分以内
築年数:5年未満
平均専用面積:25~30㎡
総戸数:50戸程度
城南地区(目黒区、世田谷区)渋谷、恵比寿駅まで15分以内の鉄道沿線
城東地区(墨田区、江東区)東京、大手町駅まで15分以内の鉄道沿線
キャップレートは年2回公表されるデータが多いですが、ここに来て一段と低下(=価格上昇)の状況です
⾸都圏中古マンション成約状況:レインズに登録された成約物件情報を集計し、公表したものです。
新築マンションの同データでは、ブレが⼤きいため、マンション市況を現状分析する時は中古マンションデータを⾒る⽅が分かりやすいとされています。
首都圏の中古マンション価格は引き続き上昇中ですが、しばらくすると価格調整局面に入る可能性も見え始めてきました。
新設住宅着⼯⼾数とは、新たに建てられた住宅に関する統計で、建築主から都道府県知事に提出された建築⼯事の届出が毎⽉集計され、国⼟交通省から当⽉分が翌⽉末に発表されます。持ち家=所有する⼟地に住宅建築を⾏うもの、貸家=賃貸⽤のための住宅、分譲=分譲マンションと分譲⼾建(⼟地+建物)の合計です。
住宅着工戸数はカテゴリーで勢いに差が出てきました。貸家は依然好調が続いていますが、持ち家はこのところ失速気味です。分譲住宅は波がある状況です。
不動産価格指数:不動産価格指数は、全国の住宅に関して、国⼟交通省が実施する「不動産の取引価格情報提供制度」により蓄積されたデータを活⽤し、「個別物件の品質」を調整したうえで、算出・推計した指数です。
区分マンション価格を不動産価格指数で見ても上昇が止まっていません。最新の数字では2010年比で約1.7倍の価格となっています。
⽇本銀⾏が、個別の⾦融機関に対して資⾦を貸し出す際の基準⾦利のことです。2006年に「公定歩合」から「基準割引率および基準貸付利率」に名称が変更され、基準貸付利率は短期の市場⾦利の事実上の上限としての役割を担うようになっています。(出典)⽇本銀⾏HP
償還期間が10年の国債の金利。月末の数値を採用しています。(出典)財務省HP
返済期間21年以上の金利(融資金額9割以下) で、最多金利を採用しています。(出典)住宅金融支援機構
賃貸住宅用の長期固定ローン金利です。前月下旬の金融情勢などに基づき金利を決定したと想定した場合の参考金利で、2カ月後に住宅金融支援機構債券の利回り、その他のコストを加味して決定される予定の金利が適用され、金融情勢の変化などによって金利が変更となる場合もあります。(出典)住宅金融支援機構
住宅ローンの固定金利は上昇基調が鮮明となってきましたが、一方で変動金利は変わらず低金利が続いています。