税制コラム
マイホーム購入資金の贈与を受けた場合-2
確定申告講座~2024年編(3)
2025年02月06日
確定申告講座~2024年編(3)
「マイホーム購入資金の贈与を受けた場合」
- 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度(親などからの住宅取得資金贈与特例を学ぶ!)
- 相続時精算課税制度を活用する(親などからの住宅取得資金贈与特例を学ぶ!)
- 贈与税の配偶者控除の特例(配偶者からの住宅取得資金贈与特例を学ぶ!)
I.親などからの住宅取得資金贈与特例を学ぶ!
2.相続時精算課税制度を活用する。
(1)概要
親、祖父母から住宅購入資金の贈与を受けるにあたり、住宅取得資金贈与特例の対象とはならない物件である、或いは、非課税枠以上に資金援助を受ける場合など、住宅取得資金贈与だけでは、税負担なく資金を贈与することができないことがあります。
このような場合に利用されるのが『相続時精算課税制度』となります。この制度を利用することにより親から子へ生前に財産を贈与した場合であっても、令和6年1月1日以降であれば、1年あたり110万円の基礎控除額(令和5年12月31日以前の贈与の場合には基礎控除額はありません)と、それとは別に累計で2,500万円までの特別控除額があり、贈与税を発生させずに贈与することができます。仮に、贈与金額が特別控除額の2,500万円を超えた場合には、超えた部分について一律20%の贈与税が課されます。しかし、この制度の利用にあたって一番認識すべきことは、この制度を選択し、2,500万円までの特別控除額を使って非課税贈与された贈与金額について、贈与者がお亡くなりになった時にその方の相続財産にその贈与財産を加えて相続税を計算することになります。(一律20%の贈与税が課されている場合は、相続税から控除されます。)
つまり、贈与された財産額は、将来の相続発生時には加算精算される仕組みとなるため、生前贈与により親の相続財産を減らしたことにはならず、相続税を減少させることにはなりません。この部分が住宅取得資金贈与とは大きく異なるところになります。
ただし、将来の相続時に予想される相続財産金額が相続税の基礎控除額以下の人であれば、将来の相続時に生前贈与分が加算されても結局は基礎控除額以下となり、相続税の負担は発生しませんので、事前に親の財産を子や孫に渡せる点に注目して、積極的に検討することもありえます。
(2)適用要件(基本)
- (a) 贈与者は、その年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母であること。
- (b) 受贈者は、推定相続人(直系卑属に限る)、孫であること。
- (c) 受贈者は、その年の1月1日において18歳以上であること。
- (d) この制度の特別控除額は各年の累計で2,500万円であること。
(3)適用要件(要件を満たす住宅の取得資金を贈与する場合)
- (a) 受贈者は、贈与を受けたときに国内に住所を有していること(一定の場合を除く)。
- (b) 贈与者の年齢が60歳未満でも適用可能。
- (c) 受贈者は、推定相続人(直系卑属に限る)、孫であること。
- (d) 受贈者は、その年の1月1日において18歳以上であること。
- (e) この制度の特別控除額は各年の累計で2,500万円であること。
- (f) 2026年12月31日までの贈与について適用可能。
【対象となる住宅の要件】
- 1. 家屋の登記簿上の床面積が40平方メートル以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
-
2. 取得をした住宅用の家屋が次のいずれかに該当するものであること。
① 築後使用されたことのない住宅用の家屋
② 築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの
③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、次のいずれかの書類により証明がされたもの
a 耐震基準適合証明書
b 建設住宅性能評価書の写し(耐震等級に係る評価が等級1、2又は3であるもの)
c 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類
④ 上記②および③のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、 その住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、 一定の申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の証明書等により証明がされたもの
- 3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに新築、取得、増改築をして入居すること。または、同日後遅滞なく入居することが確実であると見込まれること。
(4)適用を受けるための手続
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与税の申告書と相続時精算課税の選択届出書を提出することが必要です。
(5)他の非課税制度との併用が可能!
この相続時精算課税制度と直系尊属からの住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税制度は、併用が可能です。
従って、住宅取得資金の贈与であれば、相続時精算課税の基礎控除110万+特別控除2,500万円+1,000万円=3,610万円まで非課税とすることが可能となります。
※省エネ等住宅の場合
【得】豆知識!
相続時精算課税制度で贈与された財産は、親の相続が発生した際には、贈与された時点の相続税評価額で相続財産に加算されます。したがって、親の相続財産を減らせていることにはならないので注意が必要です。
しかし、
-
贈与時より値上がりが見込まれる物件を早期に子供に移転する。
⇢ 贈与時の評価額2,500万円の物件が、相続時に評価額5,000万円に上がっていても、相続財産に加算する金額は贈与時の2,500万円となる。 -
賃貸用不動産を子供に贈与する
⇢ 家賃等の収益元を早期に移転することで、子供に収益に基づく資金を移転できる。 -
親の財産金額からは相続税がそもそも課税されないと見込まれる
⇢ 相続税の心配がなければ、相続まで待たずに財産を渡すことができる。
といった効果もあるので、選択を検討してみる価値は十分にあります。
確定申告講座~2024年編 記事一覧
- 確定申告講座~2024年編(1) マイホームを売却、または新たに買い換えた場合
- 確定申告講座~2024年編(2) マイホームを購入した場合の特例制度<住宅ローン控除、他>
- 確定申告講座~2024年編(3) マイホーム購入資金の贈与を受けた場合
参考
国税庁タックスアンサーhttp://www.nta.go.jp/
監修
マックス総合税理士法人http://www.max-gtax.com/
税理士
川合宏一
武石竜
吉田正洋
宇波意人
平石和也
藤阪貴子