税制コラム
マイホームを売却、または新たに買い換えた場合-4
確定申告講座~2023年編(1)
2024年02月15日
確定申告講座~2023年編(1)
「マイホームを売却、または新たに買い換えた場合」
II.マイホーム売却時の特例制度を学ぶ!
(2)居住用低率分離課税の特例
A.概要
自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、特別控除を適用した後の譲渡所得のうち6,000万円までの部分について、長期譲渡所得に対する税率(20.315%)よりも低い税率(14.21%)で計算する軽減税率の特例を受けることができます。
こちらの特例は(1)居住用財産の3,000万円特別控除の特例と同時に適用することが出来ます。
B.適用可否チェックリスト
適用可否チェック表:印刷用ファイル
チェック項目 | チェック欄 | ||
---|---|---|---|
基本チェック項目 | 1 | 土地等・家屋ともに譲渡年の1月1日において、所有期間が10年超であること(2023年譲渡の場合は、2012年12月31日以前に取得したもの) | |
2 | 本人の居住用家屋であること | ||
3 | 2以上の居住用の家屋がある場合には、主に生活の拠点になっている家屋であること | ||
4 | 新築期間中の仮住まい等、一時的な目的の入居家屋及び別荘等でないこと | ||
5 | 3,000万円特別控除を受けるために入居した家屋でないこと | ||
6 | 店舗兼住宅は、居住用部分のみ適用可(事業用が10%未満の場合は全部居住用) | ||
7 | 原則として土地等だけの譲渡でないこと | ||
8 | 譲渡先が配偶者(内縁関係含む)・直系血族・同族会社でないこと | ||
9 | 居住しなくなって3年経過後の属する年の12月31日までの譲渡であること(3年目の末日基準) | ||
10 | 売却後、自宅の買換えをしていなくても適用可能 | ||
11 | 譲渡年の翌年3月15日までに確定申告をすること | ||
12 | 同時に居住用買換の特例等を受けていないこと | ||
13 | 前年又は前々年に確定申告でこの特例を受けていないこと |
特殊ケース | 1 | 譲渡した相手が親族(上記8以外)の場合 | 必ず専門家に相談 |
---|---|---|---|
2 | 本人は居住しなくなったが、生計を一にする親族がそのまま引き続き居住している場合のその家屋を譲渡した場合 | ||
3 | 居住用家屋・土地等の一部分だけを譲渡した場合 | ||
4 | 譲渡した土地等と家屋の所有者がそれぞれ異なる場合 | ||
5 | 家屋が取り壊された土地等だけの譲渡をした場合 | ||
6 | 同年において他の特例を受ける場合 | ||
7 | 居住していたが、住民票が別の場所にあった場合 |
C.具体的な計算例
3,000万円の特別控除後の長期譲渡所得が7,000万円の場合の税額(所得税と住民税)は次の金額の合計額となります。
- 1. 6,000万円以下部分に対する税額:6,000万円×14.21%=8,526,000円
- 2. 6,000万円超部分に対する税額:(7,000万-6,000万)×20.315%=2,031,500円
- 3. 1+2=10,557,500円 この金額を納めることになります。
(3)特定の居住用財産の買換特例
A.概要
2023年12月31日までに、特定のマイホーム(居住用財産)を売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません)。これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。
売却代金を次のマイホーム購入資金に充当した場合には、譲渡益のうち、その充当した金額に対応する部分については、税金をゼロにする仕組みとなります。
(a) 譲渡代金(8,000万円)≦ 買換代金(1億円)の場合
売却代金をすべて新居購入に使ってしまうため、手元に売却代金が残りません。
そのため、8,000万円での売却利益に対する課税を100%繰り延べられます。
(b) 譲渡代金(1億円)> 買換代金(8,000万円)の場合
買換えに使わなかった2,000万円が手元に残りますので、この部分に対して譲渡所得として課税されます。
売却利益のうち、譲渡代金(1億円)から買換代金(8,000万円)に充てた比率(80%)に相当する部分の課税を繰り延べます。
ポイント
買換え特例はあくまでも譲渡益に対する課税の繰延べであり、特別控除のような免除規定ではありません。従って、将来、今回取得した買換財産を譲渡した時には課税の取戻しが行われますのでご注意ください。
B.適用可否チェック
適用可否チェック表:印刷用ファイル
チェック項目 | チェック欄 | ||
---|---|---|---|
基本チェック項目 | 1 | 土地等・家屋とも、譲渡年の1月1日において、所有期間が10年超であること(2023年分譲渡の場合は、2012年12月31日以前に 取得したもの) | |
2 | 居住期間が10年以上であること(居住中断期間を除く) | ||
3 | 譲渡年の前年又は前々年に居住用3,000万円の特別控除の特例等を受けていないこと(3年に1回適用可) | ||
4 | 2023年12月31日までの譲渡であること | ||
5 | 現に本人の居住用家屋であること | ||
6 | 居住しなくなって3年経過後の属する年の12月31日までの譲渡であること(3年目の末日基準) | ||
7 | 譲渡先が配偶者(内縁関係含む)・直系血族・同族会社でないこと | ||
8 | 収用・交換等による譲渡でないこと | ||
9 | 自己の居住用が2以上ある場合には、主として居住の用に供している家屋であること | ||
10 | 同時に居住用3,000万円特別控除の特例等を受けないこと | ||
11 | 譲渡代金(固定資産税等の精算金を含む)が1億円以下であること | ||
12 | 買換資産における居住用部分の床面積が50m²以上の家屋とその家屋の敷地である土地等が500m²以下であること | ||
13 | 買換資産が中古の場合には築25年以内又は一定の耐震基準を満たすこと | ||
14 | 譲渡年(又は前年)に買換資産を取得すること又は譲渡年の翌年中に取得する見込みであること | ||
15 | 取得後翌年中までに居住すること又は居住する見込みであること | ||
16 | 贈与・交換・代物弁済による取得でないこと |
特殊ケース | 1 | 譲渡した相手が親族(上記7以外)の場合 | 必ず専門家に相談 |
---|---|---|---|
2 | 本人は居住しなくなったが、生計を一にする親族がそのまま引き続き居住している場合のその家屋を譲渡した場合 | ||
3 | 居住用家屋・土地等の一部分だけを譲渡した場合 | ||
4 | 譲渡した土地等と家屋の所有者がそれぞれ異なる場合 | ||
5 | 家屋が取り壊された土地等だけの譲渡をした場合 | ||
6 | 同年において他の特例を受ける場合 | ||
7 | 居住していたが、住民票が別の場所にあった場合 |
確定申告講座~2023年編
- 確定申告講座~2023年編(1) マイホームを売却、または新たに買い換えた場合
- 確定申告講座~2023年編(2) マイホームを購入した場合の特例制度<住宅ローン控除、他>
- 確定申告講座~2023年編(3) マイホーム購入資金の贈与を受けた場合
参考
国税庁タックスアンサーhttp://www.nta.go.jp/
監修
マックス総合税理士法人http://www.max-gtax.com/
税理士
川合宏一
武石竜
吉田正洋
宇波意人
平石和也