リーシングとは?
具体的な業務内容や実施の
ポイントなどについて詳しく解説
#商業施設
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リーシングとは、賃料収入などの収益性確保のためにオフィスビルやテナントビルなど商業用不動産の賃貸支援を行う業務であり、不動産経営には欠かすことのできない業務です。
商業用不動産はテナントからの賃料収入あってこその事業のため、リーシングは不動産賃貸業の業務において重要な業務のひとつといえるでしょう。
本記事では、リーシングの具体的な業務内容やメリット、実施のポイントについて詳しく解説します。最後までお読みいただき、自社の不動産経営業務にお役立てください。
目次
1. リーシングは商業用不動産の賃貸支援業務
リーシングは、不動産仲介業務の一種であり、一般的には物件の客付けやテナント付けのサポートを行う賃貸支援業務です。
賃貸住宅の場合、空室を埋めることが重要となりますが、商業用不動産の場合、ただ空きテナントを埋めれば良いというわけではありません。その商業施設にいかに多くの利用客を呼び込めるかといった、施設価値の向上が重要な要素といえるでしょう。
商業用不動産向けのリーシング業務の内容としては、店舗・事務所の立地動向調査やテナントの構成、賃貸条件の設計・調整などがあげられます。リーシングは、その実施内容次第で収益状況も大きく変わる可能性があり、不動産経営において欠かせない重要な業務といえるでしょう。
1.1. リーシングとプロパティマネジメントの違い
リーシングと類似する業務としてプロパティマネジメントという業務があります。
プロパティマネジメントは、不動産のコストやテナントの管理、設備のメンテナンス、リニューアルのアドバイスなど、商業用不動産の資産価値の維持・向上を目的としています。主に仲介業務に重点を置いているリーシングと比べて、プロパティマネジメントは不動産の管理や運営に重点を置いた業務といえるでしょう。
また、仲介業務もプロパティマネジメントの業務のひとつとされており、リーシングとも共通する部分も多いです。このことから、双方のサービスを提供している企業も多くあります。
1.2. リーシングと賃貸住宅仲介の違い
賃貸住宅仲介は、基本的には入居者を確実に入れていくのが重要な目的といえるでしょう。リーシングにおいても空室を埋める努力は必要です。しかし、それに付随して商業用不動産の価値を高めるという視点が必要となります。
例えば、同じようなテナントばかりの商業施設だと魅力が半減しかねません。そのため、やみくもにテナントを埋めるのではなく、ときには売上が伸び悩んでいる店舗や企業へ退店交渉を行ったり、新たな店舗を誘致したりといった業務が必要となります。
リーシングは、「空室を埋めること」と「テナントの価値を高めること」という2つの視点を常に意識したテナント選びが求められる業務といえるでしょう。
2. リーシングの具体的な業務内容
それでは、リーシングの具体的な業務内容はどのようなものなのでしょうか。リーシングの具体的な業務内容や流れについてご紹介します。
2.1. リサーチ
リーシングにおいてリサーチ業務は重要な基盤となるものです。
テナントが偏らないように、入居中テナントのリスト化や、商圏内の店舗・テナントのリスト化といった市場全体のニーズや顧客層などを、詳しく調査・分析していきます。
この段階で、オーナーの要望が明確になるよう徹底的なヒアリングを行うことも重要です。
2.2 戦略の立案、策定
次に戦略の立案、策定です。現状調査を行い、オーナーとコンセプトのすり合わせを行っていきます。
コンセプトを基にして、ターゲットを決めて、テナント候補をリストアップする作業が行われます。また、賃料や店舗の改装、修繕についてもここで決定するのが一般的です。
2.3. 具体的計画の策定
オーナーとすり合わせたコンセプトに基づいて、具体的なテナントミックス計画を策定していきます。地域のニーズや市場を考え、テナント候補を絞り込んでいきます。また、テナントの配置計画なども立てていくケースが多いでしょう。
2.4. 営業活動
絞り込んだテナント候補に対して、営業活動を実施していきます。
まずは電話でアポイントを取り、テナント入居の交渉を行っていきます。この際に、条件面について幅を持たせられるかどうかを、事前にオーナーとすり合わせておくことが重要です。
2.5. 契約、開店サポート
条件面などの合意ができ、交渉がまとまればテナント契約の締結となります。テナントが行う内装工事などのスケジュールの把握を行い、開店までサポートしていくのが一般的です。
3. リーシングの必要性とメリット
リーシングの具体的な業務内容と流れについてお伝えしました。では、一体なぜリーシングが必要なのでしょうか。
ここでは、リーシングが必要な理由とリーシングを実施するメリットについて解説します。
3.1. リーシングの必要性
商業用不動産を運営するにあたっては、以下の状態を保つことが重要です。
- 常にテナントが埋まっており、賃料収入による収益性を維持している
- 活気がある状態が継続している
商業用不動産は、賃料収入を確保することで事業として成立します。
また、商業用不動産において、空きテナントのある状態は利用者側のイメージが悪く、施設全体の売上に悪影響を及ぼしかねません。空きテナントの対策としては、設備メンテナンスやリフォームだけでは不十分であり、適切なテナント誘致を行い、施設全体のテナントを埋めていくことが重要です。
また、活気がある状態を継続するには、利用者がその地域に欲しいと思うテナントがそこにある必要があります。
そのためには、綿密な分析と計画に基づいたテナント誘致が必要です。
これらの業務を担うのがリーシングの役割であり、リーシングが必要とされる理由だといえるでしょう。
3.2. リーシングのメリット
リーシングのメリットとして、店舗・事務所の立地動向調査やテナントの構成を最適化し、それにより収益性を高められるということが挙げられるでしょう。
市場のニーズに合った施設へ最適化されれば、施設価値が向上し、オーナーだけでなくテナントや利用者の満足度向上にもつながるでしょう。
施設価値が向上することで、市場ニーズに合った優良なテナントも誘致しやすく、賃料未払いやマナー問題などのトラブルが避けられます。このように良質なテナントが確保できる点もメリットとして考えられるでしょう。
4. リーシング実施のポイント
リーシングを実施する場合、どのようなポイントに着目すると良いでしょうか。
ここでは、リーシング実施のポイントについて以下の通り解説します。
- リサーチの際は新鮮な情報を得る
- 実績豊富なリーシング会社を選ぶ
- テナントミックス計画が重要
4.1. リサーチの際は新鮮な情報を得る
適切なリーシングを行うには、精度の高いリサーチを行うことが重要です。リサーチする内容は先述したとおり、市場全体のニーズや顧客層などですが、精度の高いリサーチを行うには新鮮な情報を得られるかどうかが重要なポイントとなります。
競合先や顧客層、来店数など徹底した情報収集が重要といえるでしょう。
リーシングを依頼するには、こうした鮮度の高いリサーチを行える会社を選ぶことが重要です。
4.2. 実績豊富なリーシング会社を選ぶ
リーシングを依頼する場合には、実績豊富なリーシング会社を選ぶのがポイントのひとつといえます。
知名度の高いリーシング会社は比較的実績が豊富なケースが多いです。また、知名度がない場合でも、倉庫やオフィスなどの特定の施設ジャンルやエリアに強いリーシング会社もあります。
オーナーの要望が明確になったら、複数のリーシング会社で比較してみるのも良いでしょう。
4.3. テナントミックス計画が重要
リーシングを実施する場合、テナントの業種に偏りが出ないように緻密なテナントミックス計画の策定が重要となります。
空きテナントが出てしまうと、空きテナントを埋めることを優先しがちです。しかし、テナントミックス計画に沿った魅力的なテナント誘致を優先する方が、将来的な施設価値の向上につながりやすくなります。
たとえ入居希望があったとしても、テナントミックス計画に合わない場合には断る勇気も必要といえるでしょう。
5. リーシングは不動産経営のために重要な業務
リーシングについて、具体的な業務内容やその必要性、メリットや実施する際のポイントをお伝えしてきました。
空きテナントの発生は収益に直結する問題です。しかし、やみくもにテナントを誘致しても施設の質の低下につながりかねません。適正なテナント誘致ができれば、質の高い施設運営ができ、施設価値の向上につながります。
マーケティング計画に沿った不動産経営を行っていくためにも、リーシングは重要な業務です。精度の高いリーシングが実施できるよう、本記事でご紹介した内容をぜひ参考にしてください。
宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)
逆瀬川 勇造 氏
Yuzou Sakasegawa
明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事。
2018年より独立し、不動産に特化したライターとして活動している。