不動産を会社ごと譲渡する「不動産M&A」により税務メリットを享受。売主様の手取り額増加に寄与
#事業承継・M&A
#税金・コスト
相続に備えて、資産整理や不動産の現金化を検討する方が増えています。一方で、好調な不動産市場の影響を受け、不動産価格が値上がりしているため、売却益に大きな税金が課せられるケースも少なくありません。そこで、不動産を現金化する際の選択肢として「不動産M&A」が注目されています。
今回ご紹介するのは、不動産M&Aを用いた不動産売却で節税効果を発揮した取引事例です。相続対策として、所有する不動産を現金化しておきたいと考えていた売主様に、不動産M&Aをご提案することで大きな節税につながった今回のお取引について、東急リバブル アセットアドバイザリー部 M&Aグループ 大久保 淳がインタビュー形式で回答します。
目次
【取引概要】
- 取引対象:株式
- 所在地:関東地方
- 物件規模:ビル1棟
- 売主様:資産管理法人の株主
- 売却背景:高齢化に伴い、相続対策として資産の現金化のために不動産売却を希望
1. 税務メリットが大きい不動産M&Aを用いて、不動産を所有している会社ごと売却することに
――今回のお取引の経緯は?
今回の取引対象となったのは資産管理会社の株式です。この会社の筆頭株主である売主A様は高齢になり、将来的な資産相続を見据えて所有する不動産の現金化を希望されていました。
A様と同じく、株主である奥様と二人のお子様に資産を相続するにあたり、不動産現物より現金の方が円滑に配分できると考えてのことです。
しかしこの会社が所有する物件は資産性の高い立地に所在することもあり、好調な不動産市場の影響を受け、15年以上前の取得時から大幅に値上がりしていました。
そのような状況で不動産を売却した場合、売却益に対して多額の税金が課されてしまいます。そこで売主様は、売却手段に税務メリットを享受しやすい不動産M&Aを用いることで、売却後に手元に残る現金を多くしたいと考えていました。
お取引の成立までに紆余曲折がありましたが、最終的にはFA(ファイナンシャルアドバイザー)である当社がご紹介した買主様と条件合意に至り、不動産M&Aが成立いたしました。
2. 不動産M&Aによる売却で、不動産単体での売却よりも手取り額が倍増
――資産整理に不動産M&Aを用いる効果は?
不動産だけを売却し、その後会社を清算する場合と、株式売買により不動産を会社ごと売却する「不動産M&A」を比較し手取り額を算出すると、後者の方が税務メリットの享受を期待できます。
通常の不動産売却の場合、売却益に対し約33%の法人税等が課税されます。対象物件は価格が高騰しており大きな売却益が見込まれていたため、法人税だけでも約2億円になります。
さらに不動産売却後、会社清算時にも配当所得税等が最大で約55%課されるため、株主であるご家族が会社清算による残余財産の配分を受け取る際に所得税の約10億円が差し引かれ、手残り額は約8億円になる試算です。
一方、不動産M&Aで会社の株式ごと売却する場合、株式譲渡所得税約20%のみの課税です。株式譲渡所得は分離課税のため、株式売却代金から資本金を引いた金額に一律20%を乗じた分の課税のみで、手残り額は約15億円となります。
取引金額が大きいほど売主様の手残り額に対する税率の影響も大きくなってしまうため、今回のお取引では不動産売却より不動産M&Aの手残り額の方が約7億円多く残る試算となりました。
3. 条件に合致する買主様を地道に探索し、市場相場より高い金額で不動産M&Aが成立
――今回の不動産M&Aを成立させた要因は?
売主様が提示した条件に合意できる買主様を地道に探索し、今回の物件の購入が大きなメリットとなる買主様を見つけられたことが不動産M&A成立の決め手となりました。
売主様は相場より高い金額での売却を希望されていたため、買い手探しが難航し通常より長い期間買い手候補を探すことになりましたが、当社の不動産M&Aの専門部門と法人営業部門とで連携を図り、定期的に情報共有しながらの探索が成果につながったと思います。
また、今回の買主様は「どうしてもこのビルを購入したい」という強い希望がありました。資産性が高く収益を見込める物件だったこと、さらに不動産事業の利益で別事業の赤字を補填したいという事情もあったようです。
当社はFAとして打合せや交渉のため遠方の売主様のお住まいまで何度も通い、信頼関係を構築していきました。そして、売主様、買主様、双方と密なコミュニケーションをとり、それぞれの課題を把握することができたことも今回の不動産M&A成立の要因です。
今回のお取引は、売主様、買主様の間で条件合意に至るまで1年半ほど交渉を重ねました。交渉開始当初は、明確な意思表示をされない売主様に対して売却条件の調整に難航した場面もあったのですが、買主様と共に売主様のもとに何度も足を運んでお会いする機会を重ね、売主様が譲歩しがたい部分、お取引において優先したいことなどご要望をはっきりとお話しいただけるようになったと感じます。
その結果、最終的には売主様、買主様双方にご納得いただける条件で、無事に不動産M&Aを成立させることができました。
4. 不動産M&A増加の背景には、中小企業が抱える後継者問題が
――不動産M&Aが増えている背景は?
今の日本では、経営者の高齢化が年々進んでいます。中小企業の経営者において70代以上が占める割合は、2005年では13.1%でしたが、2010年には15.8%、2015年は19.1%、2020年は26.8%と右肩上がりで増加しており、総務省では2025年に約245万人の経営者が70歳以上になると試算しました。
このうち半数に相当する約127万人が後継者未定の状態であると考えられています。これは日本企業全体の約1/3に相当し、中小企業の後継者不足はもはや企業単位の問題ではなく、日本経済全体が直面している問題と捉えてよい状況でしょう。
高齢化による事業承継の必要性の高まりとともに、現代では家業を親族が継ぐという親族経営の形式は必ずしも当たり前ではなくなりました。事業承継をM&Aの形(第三者への承継)で行うことも選択肢の一つとして考えられるようになったのではないでしょうか。
不動産賃貸業も他業種と同様に後継者問題を抱えている法人は多く、「税務メリットの享受」と「後継者問題」を同時に解決する不動産M&Aは今後も増えることが予想されます。
5. 適切な企業価値算定でお客様の不動産M&Aをサポート
――不動産M&Aを成功させるために大切なことは?
不動産M&Aでは、不動産の資産評価を的確に反映し適切な企業価値を算出することが大切です。不動産だけの売却であれば物件を見て評価すれば良いですが、不動産M&Aは所有する不動産の価値も含めた企業そのものをしっかり見極める必要があります。
また、買い手、売り手双方のメリットが合致して初めて不動産M&Aが成立するため、地道な情報収集や交渉が欠かせません。
東急リバブルでは、豊富な取引実績に基づいた不動産評価はもちろん、幅広い買い手ネットワークや専門チームとの連携体制が整っているので、物件調査から必要書類の作成、取引におけるコンサルティングまでワンストップで対応させていただきます。
お客様のご状況に合わせて最適なご提案をさせていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。
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