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将来にらみ、本業補完で不動産投資
成長性見込める地方都市にも期待

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不動産投資

成長性見込める地方都市にも期待

2019.01.25

株式市場が世界中で軟調な推移を見せる一方で、不動産市場は安定的に推移し、2019年度も良好な環境を保つとの見方が聞かれる。売買市場では、収益用不動産に本業補完の役割を担わせる一般事業法人もみられるようになってきたという。

「ここ2〜3年、キャッシュリッチな企業や低利の資金を調達できる信用度の高い企業を中心に、一般事業法人にも不動産投資が見直されています」

 不動産市場の最近の傾向をこう指摘するのは、日本不動産研究所研究部不動産エコノミストの吉野薫氏だ。

 投資対象は、賃料収入を得られる収益用不動産。吉野氏は「注目度が高いのは、やはりオフィスです。また、利回りは高くないものの安定性の高さから、住宅も人気が高い」と明かす。

 不動産投資のメリットは何か。吉野氏は「資金調達コストが低い中、長期的・安定的に収益を得られる点です。投資のノウハウや情報源を蓄えられる点も見過ごせません」と指摘する。

 積極姿勢を見せるプレーヤーの一つは、インフラ系の事業法人。西日本旅客鉄道(JR西日本)が首都圏でも不動産事業に乗り出した例がある。

 同社では2017年2月、三菱重工業グループの不動産関連事業会社の株式を70%取得し、自社グループの傘下に収めた。18年7月には社名をJR西日本プロパティーズに改め、収益用不動産への投資も展開する。

 発表資料によれば、不動産事業を鉄道事業と親和性の高いコア事業と位置付ける。株式取得には、①首都圏で不動産事業を展開する②事業の発展と安定に向けた事業ポートフォリオを構築する③三菱重工業とのパートナーシップの下で開発事業を促進する――という3つの狙いがあるという。

 吉野氏はJR西日本が子会社を通じて首都圏でも不動産事業に乗り出す狙いをこうみる。

「長期安定的な収益源を得たいという考えがあるのではないか、と思います。また不動産事業には独特のノウハウや情報ソースが必要です。それを子会社の事業を通じて得られれば、本業エリアでの不動産事業にも生かせます」

 浮かび上がるのは、本業補完のニーズだ。人口減少を背景に国内の事業環境が厳しさを増す中で、不動産投資に乗り出し、将来の安定や発展につなげていこうという発想である。

 背景には、不動産市場の好調さもある。吉野氏は「マクロ経済の動向は好調です。企業業績が良いため、オフィスにしても店舗にしても床が埋まっています。実需が見込める一方で、金融緩和が今後も続くという見通しの中、安定収益の得られる不動産に資金が向かっています」と、市場を読み解く。

 投資用不動産向けの不正融資が問題視されたが、一般事業法人の不動産投資にとっては、大きな変化はないようだ。「ヒアリング結果や日銀統計などから、不動産融資が消極姿勢に転じて先細りになってきたという傾向は全体としてはみられません」(吉野氏)。

 市場環境は良好ながら、J-REITや不動産・建設会社など不動産投資のプロが物件を購入しにくくなっていることも、投資を後押しする要因になっている、と吉野氏はみる。

日本不動産研究所 研究部
不動産エコノミスト
吉野 薫

「不動産投資のプロはいまの低金利下、背後にいる投資家から高い利回りを求められ、購入できる不動産に一定の条件が課されている状況です。独自の戦略で投資できる一般事業法人の出番が、そこに生まれています」

 不動産投資に乗り出すには好機とも言えるいまの時期、不動産市場の先行きはどのようにみればいいのか。

 吉野氏は「短期的には2019年も良好な環境で推移すると思います」とみる。ただ不動産市場には好不況の循環があり、価格の調整・回復を伴いながら推移するのが常だ。「いまは不当な期待感や高揚感に支えられた市況ではないため、仮に調整局面に転じても秩序だった状況で調整を終えるとみています」。

 今後の不動産市場をみていくうえで吉野氏は成長性が見込める地方都市にも着目している。

「最近の不動産市場は、地方圏の拠点性の高い都市で地価上昇が顕著という点が特徴です。成長性が見込める都市では市場の持続的な発展が期待できるとみています」

 下図は、地価の対前年変動率を圏域別に示したものだ。地方圏では札幌、仙台、広島、福岡の4都市で、地価が三大都市圏を超える伸びを見せていることが分かる。「これら4都市に加え、次のクラスの金沢などの都市でも、大型投資の例がみられます」(吉野氏)。

地価変動率の推移(年間)

東京、名古屋、大阪の三大都市圏では、地価は商業地で右肩上がりに伸びているものの住宅地ではほぼ横ばい。それに対して、札幌、仙台、広島、福岡という地方圏の4つの都市では、商業地でも住宅地でも三大都市圏を超える伸びを見せる

 成長性が見込めるこれらの地方都市を、吉野氏は「街中に活力がある都市」と言い切る。

「人口減少下では、都市のコンパクト化が街中の活力維持に不可欠です。街中に人が住み、働き、遊び、消費するようになれば、にぎわいが生まれます。それは住民にとっての利便性を増進するだけではなく、国内外からの来街者に対する都市の魅力ともなります。それを実現できる地方都市なら、比較的規模が小さくても、街中の活力を維持できるはず。つまり、不動産投資の機会を創出できるということです」

 都市間競争を勝ち抜こうと地方都市がコンパクト化を進める中、不動産投資の機会はいま全国に広がりつつある。

東急リバブルVIEW

企業の成長戦略としての不動産投資
長期保有による安定収益で本業補完へ

東急リバブル
ソリューション事業本部
アセットマネジメント部
投資開発グループ(A)
グループマネージャー
小澤 祐介

 国内の不動産投資市場は、以前は短期的な売却益(キャピタルゲイン)を目的とする取引が主流でしたが、現在は長期的な賃料収入(インカムゲイン)を目的とした取引が増えています。

 一般事業法人においても、長期安定的な資産として不動産に着目する企業が増えており、実際に当社の取引においても、賃料収入の得られる不動産を取得することで将来に向けて本業を補完していこうとする企業が増えています。

 たとえば、地方に本社を置くある一般事業法人は、主力商品の売り上げ減少が懸念される中、ブランド戦略と安定収益を目的に、都心の店舗付き賃貸マンションを取得されました。店舗部分を自社ブランドのコンセプトショップとして使用し、商品の宣伝販促を図るだけでなく、上層の住居部分を収益不動産として運用し本業以外での安定収入を得る狙いです。

 優良な投資物件は都心に限りません。地方都市も見直されてきていますし、エリアに応じて市場の成長が見込める物件は注目されています。たとえば郊外の高齢者施設や物流施設、データセンターなど、賃料収入の蓋然性が高い物件にはニーズがあります。

 不動産融資が一部で出にくくなっているいま、融資を受けられる法人には、収益機会を拡大する好機と言えます。

 当社は日本全国で企業の不動産取引をサポートしており、様々な種類の不動産を取り扱っています。企業の課題に応じた不動産戦略をご提案してまいりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

※所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。