東急リバブルのリーシングで「ホテルアベスト札幌」が開業
パンデミックで諦めかけるも北海道初進出
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#対談
2021年7月、札幌市内の中心部、「狸小路商店街」に面した立地に「ホテルアベスト札幌」が開業した。リーシングを手掛けたのは、総合不動産流通業の東急リバブル㈱。同ホテル開業までの経緯について、㈱アベストコーポレーション取締役副社長の桝一隆治氏と、東急リバブル㈱でホテル専門チームを率いるソリューション事業本部営業推進部長の森雅章氏に聞いた。
幅広いネットワークと調整力で出店戦略を支援
――この度の協業が実現した経緯をお聞かせください。
桝一 当社はもともとウィークリーマンション事業を展開していましたが、リーマンショックで長期出張などによる需要が減り、2008年にホテル事業に本格参入しました。全国展開を目指して出店を増やしていく中、2015年頃に東急リバブルさんの新聞広告を目にしてこちらからコンタクトを取ったのが始まりです。全国の不動産を扱っている東急リバブルさんと長いお付き合いができればと考えました。それ以来、出店先候補になりそうな物件情報をご紹介いただいたり、マーケットに関する情報交換や相談ごとなど、気兼ねなく連絡できる間柄になっています。
森 東急リバブルというと個人向け住宅仲介のイメージが強いと思いますが、私が所属するソリューション事業本部は法人向け不動産を扱っていて、全国で取引しています。ホテルに関しては2013年から専門チームを設置し、取り組みを強化していました。アベストさんから初めてご連絡いただいた2015年頃はちょうどインバウンド需要が高まっていた時期でした。当時、私たちもホテルの取引が拡大していく中で運営会社とのリレーションを深めていく必要があると考えていて、桝一さんには色々と教えていただきました。
――アベスト札幌出店までの経緯を教えてください。
森 本件のオーナーからリテナントに伴うリーシングのお話をいただき、アベストさんをはじめ複数の運営会社にご紹介しました。2020年1月末のとりまとめ時には複数社から出店意向をいただきましたが、ほどなく新型コロナウイルスの感染拡大があり、各社から辞退が相次ぎました。アベストさんも例外ではなく、一時は出店を断念しようとお考えでした。
桝一 全国展開を目指す中で、札幌への出店は悲願でした。特に本件は、札幌市内の中心部、狸小路商店街のアーケード内にあり、天候を気にすることなくチェックインできる立地が魅力で、ぜひとも出店したいと考えていました。
しかし、突然のパンデミックで新規出店の判断が難しくなり、東急リバブルさんにご相談しました。すると東急リバブルさんがオーナーに掛け合い、条件交渉してくださって、そのおかげで私も社内を説得し、出店の手はずを整えることができました。オーナーが複数いたので調整は難しかったと思いますが、東急リバブルさんが現地に何度も足を運んでオーナー間を調整してくださり、スピード感を持ちながら高いマネジメント力を発揮し、成約を後押ししてくださいました。
森 コロナ禍で、以前は長期固定賃料を条件としていたオーナーも変動賃料を取り入れるなど、契約条件を見直すケースが増えています。本件も、少しでも運営会社の負担を減らせればとオーナーに掛け合いました。アベストさんとはそれまでの継続的なコミュニケーションの中で信頼関係ができていましたから、オーナーにも自信をもって交渉することができました。
――ほかにも苦労された場面はありましたか。
桝一 それまでアベストでは300室を超えるホテルの運営経験がなく、さらにコロナ禍もあって、OTA比率や団体比率、インバウンド客の予測が課題でした。また、寒冷地で且つ年数が経った既存ホテルということもあって、光熱費や省エネ設備などの運営状況も気になっていました。
市場リサーチなら当社でもできますが、個々のホテルの実情までは分かりませんので、それらの情報はオーナーから提供いただく必要があり、東急リバブルさんに助けていただきました。たくさんのスタッフの方々が今回の取引に関わり、情報収集してくださったのだと思います。改めて組織力の高さを実感しました。
森 オーナーとは以前から多数の不動産取引を重ねていて、社内に専属のチームがありましたので、チーム間で連携して情報を収集しました。ホテルは所有者と運営会社が異なるケースが多いですが、その間に入ってそれぞれの意向をくみ取り調整するのが私たちの役割です。特に当社はホテルに限らずさまざまな不動産事業者・投資家と関係が築けていますし、ときには他部門や東急不動産ホールディングスグループのつながりも生かして交渉します。それらのネットワークは私たちの強みのひとつです。
互いに付加価値の高いサービスでホテル業界の転換期に挑む
――今回の取り組みで良かったこと、今後期待することをお聞かせください。
桝一 契約に至るまでの手厚いサポートにはもちろん感謝していますが、東急リバブルさんとお仕事ができて良かったのは、契約に至ればそこで終わりではない親身な対応です。ホテル開業後も頻繁に「何かお困りごとやご協力できることはありませんか」とお電話をいただいています。厳しい時期だからこそ、相手の立場で物事を考え行動してくださる姿勢は本当にありがたいです。
森 開業後のサポートも重要だと考えています。実は、出張で札幌に行った際に「ホテルアベスト札幌」に宿泊したことがあるのですが、朝食がとてもおいしいんですよね。バイキング形式の中にもこだわりが感じられて。宿泊客が「あのホテルは良かった」と評価する要素で朝食が占める割合は大きいですから、アベストさんの差別化につながっていると思って感服しました。
桝一 朝食は、既存ホテルのリテナントでも大きく設備を変更せずに特色が出せる貴重なサービスです。アベストは、札幌に限らずすべてのホテルで地元の食材などを使いながら、地域でいちばん朝食のおいしいホテルを目指しています。
私たちはお客様の心と身体を癒す空間を創造し提供させていただく「お客様に心から寄り添ったサービス」を使命としていて、東急リバブルさんにも同じ姿勢を感じています。これからも信頼できるパートナーとして共に歩みながら、運営面での新しいご提案にも期待しています。
森 コロナ禍を経て、ホテル業界は大きく変わりました。今、オーナーや投資家は、変動賃料やMC契約が主流になったことで、運営会社の収支内容やコンセプトなどに強い関心を持つようになりました。一方で、入国制限の緩和により日本のホテル市場への期待は高まっていて、これから海外投資家の参入も増えると思います。
今後も私たちは、オーナーと運営会社それぞれの立場や状況を考えながら、収益向上や集客力強化につながる付加価値の高いソリューションの提案に努めてまいります。
ホテルアベスト札幌
- 総支配人
- 難波 修一
- 所在地
(住所) - 札幌市中央区南二条西6丁目1-1
- 所有会社
- 非公開
- 経営会社
- 非公開
- 運営会社
- 株式会社アベストコーポレーション
- 運営形態
- 定期建物賃貸借契約
- 客室構成
- 全306室(シングル75室、ツイン91室、ダブル85室、和室7室、その他48室)
- 付帯施設
- 宴会場4室・コンビニエンスストアー・デンタルクリニック
- 敷地面積
- 1954.3㎡
- 延床面積
- 12239.21㎡
- 客室料金
- 8,500円〜
※本記事は週刊ホテルレストラン2023年3月17日号掲載の記事からの転載です。
※会社名、所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。