トレンド解説

的確な不動産評価で節税効果の高い「不動産M&A」をバックアップ

事業承継・M&A

税金・コスト

評価・調査

的確な不動産評価で節税効果の高い「不動産M&A」をバックアップ

東急リバブルソリューション事業本部アセットアドバイザリー部部長 伊澤 毅洋

他社に先駆け、2000年より全国で法人向け不動産ソリューション事業を展開する東急リバブル。 事業承継・M&Aにおいても、同社の豊富なリソースを活用し「不動産M&A」の仲介サービスを提供している。
総合不動産流通企業である同社がM&Aに取り組む意義や強みについて紹介する。

 通常のM&Aに対し不動産M&Aは、不動産の価値に着目して企業買収(譲渡)を行うのが特徴だ。近年不動産M&Aが注目される背景には「高い節税効果が期待できる面が大きい」と、ソリューション事業本部アセットアドバイザリー部長の伊澤毅洋氏は語る。

 「現在国内には70歳以上の経営者が約245万人いますが、その半数の企業が後継者不足と言われています。不動産を所有する企業が、事業承継がうまくいかず廃業する場合、不動産を売却したのちに会社を清算すると、不動産売却益にかかる約30%の法人税等に加え、法人税等控除後の清算配当額に最大約55%の所得税等がかかります。一方、不動産を所有したまま株式売却する不動産M&Aであれば、株式譲渡益に対する約20%の申告分離課税のみとなり、大きな節税効果が期待できます」

 つまり、不動産を所有する企業を廃業しようとする場合、不動産M&Aを活用することで、売主の手取り額が増える可能性があるということだ。

 不動産流通事業を営む同社の不動産M&Aにおける強みは3つある。

 「1点目は『不動産の査定力』です。不動産M&Aでは不動産の価値を的確に評価することが重要です。当社の不動産売買仲介件数は2万9577件(2022年度実績)で、国内トップクラスと認識しています。不動産のプロとして、エリア・種別を問わず、市場動向に即した不動産価格を査定し、適切な企業価値の算定につなげます。

 2点目は『買主の探索力』です。当社は、豊富な取引実績に基づく幅広い情報ネットワークから、日々多様な購入ニーズを収集しています。対象不動産の最有効使用が可能な買主を探索し、売主の手取り額最大化に努めます。

 3点目は『不動産の調査力』です。当社では、専門チームが通常の不動産売買時に実施する重要事項調査を、不動産M&Aにおいても同様に実施します。それによって対象不動産が抱える法的なリスクを洗い出し、譲渡後のトラブル回避に努めています。不動産に関わる煩雑な書類整理や物件資料のデータ化なども売主に代わって行い、円滑な取引を支援します」(伊澤氏)

 こうした不動産売買にまつわる様々な課題に対してワンストップで対応できることが、同社の最大の強みと言えるだろう。

 「売主・買主双方にメリットを享受いただくためには、的確な不動産評価が重要です。M&Aにおいて不動産の価値は見落とされがちですが、もし疑問があれば、私共がセカンドオピニオンとしてご相談を承ることも可能です。また、不動産M&Aのメリットを得られない場合には不動産のみの売買に切り替えるなど、幅広い提案ができるところも、他のM&A仲介会社にはない当社の強みと言えます」(伊澤氏)

 売主のS社は老舗企業で、旅館業を営んでいた先代の他界後、旅館跡地で駐車場を経営していたが、株主が高齢になり、かつ孫の代まで分散していることから、今後の相続も踏まえ資産の整理を検討。しかし、約70年前に取得した土地は繁華性のある立地にあり、取得価格(簿価)に比べて売却想定価格(時価)が高く、単純な不動産売却では含み益が多くなるため、税金の負担が大きい。そこで、不動産M&Aを活用した売却について東急リバブルが相談を受けた。

 東急リバブルは、対象不動産を様々な角度から分析・査定し、最も有効活用できる用途における有力な購入候補者を選定。徹底した情報管理のもと購入候補者への交渉を重ね、条件に合う買主を探索した。契約・譲渡に向けては専門チームが対象不動産の権利関係、法令規制、インフラなど詳細な調査を実施し、あらかじめ買主に法的リスクを理解いただいた上で取引を成立。

 本件において売主は、不動産M&Aによって不動産売却よりも手取り額を約1億3000万円増加させるとともに、今後の相続に対する心配も払拭することができた。

 同社では売主と買主をつなぐ不動産M&Aの仲介業務だけではなく、場合によっては直接企業を買収する選択肢もある。

 「仲介ではなく、直接顔の見える私共が買い取らせていただく方がよいケースもあります。不動産の数が多い、所在エリアが点在しているといった場合でも、当社なら迅速な対応が可能です。不動産を所有されている経営者で、後継者がいないなどの悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください」(伊澤氏)

※本記事は日経MOOK『M&A入門2024年版』(日本経済新聞出版)の記事からの転載です。
※会社名、所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。