自社ビルは所有すべき?
メリット・デメリットについて考える
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近年、働き方の変化に対応するためオフィスのあり方を見直す企業が増えています。また、新型コロナウイルスの影響によって非事業資産の見直しが進み、自社ビルを売却する動きもあります。今後の事業環境を見据えて自社のオフィスはどうあるべきか、検討されている経営者の方は多いことでしょう。
そこで本記事では、自社ビルを所有するメリット・デメリットについて詳しくご紹介していきます。是非、今後の自社のオフィスのあり方に活かしてみてください。
目次
1. 自社ビルとは
企業のオフィスは賃貸型と所有型のどちらかに分けられます。そのうち所有型のものが自社ビルといわれるものです。そして自社ビルには、一からビルを建設するパターンと、中古のビルを購入するパターンの2種類があげられます。
かつては、大企業や老舗企業を中心に自社ビルを持つケースが多く見られました。以前は不動産そのものが大きな資産価値を持っており、土地や建物を所有していることが企業を評価する要素の一つになっていたのです。
しかし近年は不動産の所有・管理に関する企業の外部評価が変わり、自社ビルを所有する企業は以前に比べ少なくなっています。背景には、バブル崩壊後の地価下落や、証券市場における株主の発言力の高まり、減損会計制度の導入など、さまざまな要因があります。企業経営を取り巻く環境が大きく変わり、企業には資産の効率化が求められ、不動産に関するコスト意識も高まっていきました。
そして最近では、働き方改革や、新型コロナウイルスの流行により、オフィスのあり方を見直す企業が増えています。リモートワークが促進され、今後の事業環境を見通す中で、オフィスの集約あるいは分散を検討したり、自社ビルを所有し続けた方がよいか、賃貸に切り替えた方がよいか、迷う経営者は少なくないでしょう。
自社にとって所有と賃貸どちらのパターンが良いのか、それぞれの特徴を理解したうえで検討することが重要です。
2. 自社ビルを所有するメリット
では、自社ビルを所有するメリットには具体的にどのようなことが考えられるのでしょうか。順にご紹介します。
- 対外的な信用が高まる
- ランニングコストを下げる
- 資産になる
- 設備や間取りなどの自由度が高まる
2.1. 対外的な信用が高まる
自社ビル所有のメリットとして、対外的な信用が高くなる点が挙げられます。
自社ビルを所有するには、相応の財務基盤がなくては実現しにくいものです。そのため、自社ビルを所有していれば盤石な財務基盤があると見られ、対外的な信用が高くなると考えられます。
また、金融機関が融資審査を行う場合、自社ビルを所有していれば、担保物件として融資を受けやすくなる可能性があるでしょう。
こうした点は自社ビル所有の大きなメリットといえます。
2.2. ランニングコストを下げる
自社ビル所有のメリットとして、ランニングコストを下げられる可能性があります。
自社ビルは、購入する際に相応の初期投資費用がかかりますが、ランニングコストで比較すると、毎月の賃料の支払いが不要で、賃料の値上げなどの心配をする必要がない点はポイントとなるでしょう。
2.3. 資産になる
自社ビルは資産となる点も大きなメリットです。
自社ビルを所有していれば、そのビル自体が資産となります。賃貸ビルだと毎月の賃料は費用でしかありません。一方、自社ビルであれば、融資を受けて購入したとしても借入金の返済は自社の負債を減らすことに直結します。
また、自社の資産であれば、賃貸オフィスとして活用することで賃料収入が得られたり、場合によっては売却して資金化するといった活用方法が考えられ、本業を支える収益源になり得るでしょう。
2.4. 設備や間取りなどの自由度が高まる
自社ビルであれば設備や間取りなどを自由に変更できる点も大きなメリットです。
例えば、顧客に直に自社商品を見てもらうためのショールームを設けたり、社員向けに社内託児所やレストラン、カフェなどの福利厚生施設を設置するといったことも考えられるでしょう。
自社の事業や働き方に応じて規模を問わず自由に改修できる点は、社員のエンゲージメント向上にもつながるのではないでしょうか。
3. 自社ビルを所有するデメリット
一方、自社ビルのデメリットにはどのようなものが考えられるでしょうか。ここでは、以下の通りご紹介していきます。
- 膨大な初期費用がかかる
- 柔軟性が低い
- 管理・修繕の手間がかかる
3.1. 膨大な初期費用がかかる
自社ビルを購入するには、膨大な初期投資が必要です。ビルの購入代金だけでなく、不動産取得に伴う仲介手数料や不動産取得税、火災保険料、固定資産税清算金などのさまざまな費用を伴います。
購入後、短期間で売却すると赤字になるケースも多く、事業の基盤が固まる前に無理して自社ビルを購入した場合、会社の資金繰りに影響を与えるケースも少なくありません。購入を検討する際には、購入後のキャッシュフローを含めた綿密な資金計画を立てることが重要です。
3.2. 柔軟性が低い
先ほど自社ビルのメリットとして設備や間取りなどの自由度が高まる点を前述しましたが、一方で、立地を変えるとか、床面積を広げるといったニーズに対しては柔軟性が失われてしまうデメリットが考えられるでしょう。
事業の成長度合いや社会の動向によっては、別の場所に移りたい、もっと広いビルに移りたいなど、事務所を移転した方が良いケースも考えられます。しかし、自社ビルを所有していると、その売却が必要になり、特に流通性が低い不動産の場合には買い手の探索に難航し、柔軟な対応が難しくなってしまう可能性が考えられます。
3.3. 管理・修繕の手間がかかる
自社ビルは、賃貸ビルと比べて賃料の支払いがなくなる一方、メンテナンスに伴う維持修繕費用が必要になってしまうという側面がデメリットとなるでしょう。
日常的なメンテナンスによって働きやすく、安心安全な環境を整えることは、リスク管理という面からも欠かすことはできません。また、築年数の経過による老朽化や、最近は大規模な災害も多いため、その修繕には多大な費用や手間が必要になります。
4. 自社ビルに拘らないオフィスの利用方法
最後に、自社ビルに拘らないオフィスの利用方法をご紹介します。
冒頭で触れたように、最近は働き方の変化が進み、オフィスに対する考え方が大きく変わってきました。リモートワークの浸透により、オフィスを縮小したり、集約したり、都心から離れたり、企業にはさまざまな動きが見られます。
その例として、ここでは以下の3つをご紹介したいと思います。
- リースバック
- サテライトオフィス
- シェアオフィス
4.1. リースバック
リースバックは、自社ビルを売却すると同時にビルの購入者と賃貸借契約を結び、借り手としてそのまま利用し続けることができる契約形態です。自社ビルを売却することでまとまった資金が得られるうえ、移転する必要がないためコストや労力、事業中断などのリスクを回避できます。
最近では、リースバックの際に床面積を縮小したり、それまで分散していたオフィス機能を集約したりするケースも見られます。
4.2. サテライトオフィス
サテライトオフィスは、本社や本拠地から離れた場所に設置するオフィスのことです。「都市型」や「郊外型」、「地方型」などがあり、自宅から近い場所に通えるようにすることで、通勤時間を最小限に抑えることができるといった効果があります。
一見すると、支社や支店と同じように思われがちですが、サテライトオフィスは支社や支店のように単独で事業を営むものではなく、あくまで本社・本拠地のサブオフィス的な位置付けと考えるとよいでしょう。
サテライトオフィスを導入することで社員の働きやすさアップにつながり、業務の効率化や離職防止効果が期待できます。
4.3. シェアオフィス
シェアオフィスは、オフィス空間や設備を複数の企業や個人でシェアするタイプのものです。
シェアオフィスをサテライトオフィスとして借りるといったケースも考えられるでしょう。まずは初期費用を抑えてサテライトオフィスを導入したいといった企業におすすめだといえます。
5. 自社ビル所有のメリット・デメリットを理解して検討しよう
本記事では、自社ビル所有のメリット・デメリットについてお伝えしてきました。最近は働き方の変化に対応するため、自社ビルを所有する企業においてもオフィスの見直しが進んでいます。
新たなオフィスのかたちとして、本記事でご紹介した、リースバックやサテライトオフィスなどの活用法も含め、自社の事業内容や事業規模に応じて幅広く検討することが大切です。是非、本記事を自社ビル所有の参考にしてみてはいかがでしょうか。
宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)
逆瀬川 勇造 氏
Yuzou Sakasegawa
明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事。
2018年より独立し、不動産に特化したライターとして活動している。