不動産調査にITを活用し企業の不動産売買・管理を支援
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2018.11.12
不動産仲介会社の販売力を見極めるポイントの一つが調査力といわれる。東急リバブルのソリューション事業本部の調査力は精度が高いと定評がある。しかも、その調査力をITなどの活用で、さらに強力無比なものにしつつある。
調査に専念できる独立した組織
2016年7月、東急リバブル・ソリューション事業本部の審査部内で「すごい重説」と名付けられたプロジェクトが発足した。重説とは、重要事項説明書のことだ。
不動産仲介会社は、不動産の売買や賃貸契約を結ぶとき、買主や借主に対して重説に基づく説明をしなければならない。その不動産の権利関係や法令規制、ガス・電気などの設備状況などについて、宅地建物取引士の資格を持った人がきちんと説明することが法律で義務づけられているのである。
この重説を作成するために、不動産仲介会社はインスペクション(不動産状況調査)を行う。建物の欠陥や劣化度などを詳細に調べるので、買主側から見れば、不動産の購入に伴うリスクを判断するための重要な材料になる。調査の精度が高いほど、売主と買主の双方が納得して売買契約を結ぶ確率が高くなる。
多くの不動産仲介会社は、こうした調査を営業担当が行っている。しかし東急リバブルのソリューション事業本部は、営業部隊とインスペクション部隊を完全に独立させている。営業、調査がそれぞれ本来業務に専念するためだ。しかも調査を専門に行う社員は40名以上。オフィスビルから一棟マンション、工場などの特殊な物件まで日本全国多様な物件に対応できる。これほど大規模な調査部隊がある不動産仲介会社は、おそらく東急リバブルくらいだろう。
同社がいかに調査業務を重視しているか、この事実が端的に示している。実際、顧客などから不動産の仲介とは別に、調査だけを依頼されるケースも少なくない。調査力の精度が高いと定評があるゆえんだ。
部全体でノウハウを共有
東急リバブル
ソリューション事業本部
審査部長
橋本 明浩
だが、2016年にソリューション事業本部の審査部長に着任した橋本明浩氏は、調査部門の改革の必要性を痛感し、「すごい重説」プロジェクトを発足させた。いったいなぜか、その理由を橋本氏はこう説明する。
「確かにソリューション事業本部の調査力は優れていました。しかし、調査も重説の作成も個々人の能力に依存していたのです。調査や重説の作成には、不動産に関する幅広い知識が必要で、1人の人間がすべての領域を完全にカバーするのは限界があります。しかも、人間がやることにはヒューマンエラーがつきもの。そのうえ、重説は専門用語が多く、一般の方が理解しにくいのも課題でした」
そこで橋本氏はITの活用を決めた。現場調査で、社員はスマホで物件を撮影し、その画像をオフィスに送信する。オフィスには大型のモニターがあり、調査グループのベテラン社員などが画像を見ながら現場の社員に指示を出すという仕組みだ。モニターは4K画像の最新のもので、地面に落ちている小さなゴミまで鮮明に映し出す。
これにより経験の浅い社員でも調査ができるようになっただけでなく、複数の目を介すことで精度の高い調査ができるようになった。画像は保存できるため、オフィスに戻って見落としに気がつき、再度現場に赴くような無駄もなくなった。調査のノウハウを部門の全員が共有できるようにもなった。
「現場の画像を見ながらオフィスのスタッフが重説の作成を開始できるため、スピードも大幅に向上しました。残業時間も1割以上削減できました」と橋本氏はIT化による成果を語る。
重要事項説明書もデジタル化
一方で橋本氏は、紙ベースの重説に加えて電子ブック化を導入。そうすれば、画像をふんだんに使うことができる。古い建物が建つ土地を更地にしたら景観はどうなるのか、オフィスを店舗にリノベーションしたらどうなるのか、画像を簡単に変換できるソフトも独自に考案した。
「調査にドローンを使うこともあります。これで大型施設も全体を俯瞰できるようになりました。もちろん、その画像も電子ブックの重説に掲載します。電子ブックの重説は、お客様も強い関心を示されますし、画像を多用することで、よりリアルに物件の状況が理解できると好評です」
不動産取引のトラブルの約3割は、重説にかかわるものといわれる。同社では、IT化を核にした改革で重説にかかわるトラブル発生の懸念がほぼゼロになったという。生産性の向上で、これまで以上に調査依頼を引き受けることも可能になった。現在、こうしたITを用いた調査や重説の電子ブック化などを、ビジネスモデル特許として申請することも検討しているという。
東急リバブルの調査力がすごい。そんな評判が、業界で着実に広がり始めている。
※所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。