CRE専門部署が中長期に支援
セカンドオピニオンの役割も
#事業用不動産
#有効活用
#老朽化・遊休資産
東急リバブルは、業界に先んじて2000年に法人向けの専門部署(現:ソリューション事業本部)を立ち上げ、企業不動産支援に取り組んでいる。現在、本部要員は400名超にのぼり、CRE推進部 情報開発グループが中心となって企業への中長期的な支援を行っている。
400名超の要員を分業化
多様な専門機能を確立
近年、CREへの注目度が高まっている。その背景の一つが、東京証券取引所が上場企業に対して行った「PBR(株価純資産倍率)改善要請」だ。これは、自社株買いや増配など一過性の対応ではなく、継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取り組みを期待するものであり、企業には経営資源の適切な配分が求められている。企業の経営資源として、不動産、つまりCREの活用・見直しは大きなポイントになる。そのほか、コロナ禍を経験したことや昨今の物価高により「オフィスをはじめとする資産の持ち方を見直したい」「本業を補完する不動産収益を確保したい」といった不動産への価値観・考え方の変化もCREへの関心を高めている要因だ。
東急リバブルソリューション事業本部CRE推進部長の武藤誠氏は「東証のPBR改善要請やコロナ禍を経て、企業からお問い合わせをいただく内容は変わってきました。ひと昔前までは『不動産の処分』に関する相談が多かったのですが、今は『不動産をどのように有効活用するか』という内容のご相談を受けることが多くなっています」と語る。
こうしたCREへの関心の高まりを背景に、同社では企業のCRE戦略を中長期的にサポートする専門部門・CRE推進部情報開発グループが中心となり、企業の課題解決に取り組んでいる。総勢400名を超える本部要員を機能別に編制した高い専門性を強みに、不動産の売買仲介だけでなく、買取、調査・査定、不動産M&A*などの独立したサービスを提供。総合不動産流通企業としての幅広い事業領域や東急不動産ホールディングスグループのネットワークも活用し、建築・建て替え、改修、用途変更、リーシングなど、多様なメニューを用意している。
「ご提案にあたっては顧客企業の経営戦略や事業計画はもちろん、各組織の役割や不動産に対する考え方・価値観などもよく把握し、顧客目線で一緒に取り組んでいくCRE活用をご提案しています」
*不動産の売却を目的に、株式売買により保有不動産を会社ごと移動させる方法。
地方テレビ局のニーズを
踏まえ底地運用を提案
武藤氏はCRE活用事例として、地方テレビ局A社の事例を挙げた。テレビ離れを背景に、広告収入に頼らない新たな収益源を模索していたA社。そこでA社が着目したのが、ポテンシャルの高い東京都心での不動産運用だ。ただ、その際に懸念となったのが不動産管理の手間だ。地方を拠点とするA社と東京都心には物理的な距離があり、目が行き届かない部分が多く、何か起こった際にすぐに対処できないリスクもある。A社としては「なるべく管理の手間はかけたくない」という意向を持っていた。そこで同社が提案したのが底地の運用だ。
「底地であれば建物管理の手間がなく、地代(賃料)を得ることができます。長期の事業用定期借地権契約であればテナントの入れ替わりリスクも少なく、支出は固定資産税のみで、長期安定収益が望めます」
こうした同社の提案をA社も快諾し、今では安定的な収益を得ている。
高値追求と同時に売れ残りを回避し、不要不動産をまとめて売却
都内に本社を構えるB社は、これまでM&Aで事業を拡大してきたが、譲渡企業が所有していた遊休不動産が地方に複数あり、管理の手間に悩んでいた。また、一部事業の縮小により、都内にも工場跡地を所有していた。同社は、PBR上昇に向けた資産効率の最大化のため、それら遊休資産を縮減し、売却資金による成長投資を望んでいた。
都内の工場跡地は買い手がつきやすく(=流動性が高い)売りやすい不動産だが、その他の遊休不動産は買い手がつきにくく(=流動性が低い)、売れ残りが懸念された。そこで東急リバブルは、まずはすべての不動産について入札方式による高値売却を図り、売れ残った不動産はまとめて自社が買い取ることを提案した。B社は高値を追求しながら遊休資産を手元に残さないこの手法を歓迎し、売却を進めることとなった。
売却活動は3段階に分けて進めた。①流動性の低い遊休不動産を入札方式で売却し、できるだけ高値を追求、②流動性の高い都内の工場跡地も入札方式で売却し、価格を引き上げた。③年度内の売却が決まらなかった3物件は東急リバブルがまとめて買い取った。
流動性の低い不動産であっても自社で買い取りができるのは、長年にわたり築き上げた全国の売買ネットワークがあればこそだ。このような手法は一朝一夕に真似できるものではなく、これによりB社は長年の課題であった遊休資産の縮減を叶えることができた。
セカンドオピニオンとして
相談が寄せられる
武藤氏によれば「これまで借入先の金融機関や付き合いの長い不動産会社にしか相談していなかった企業から相談を寄せられるケースが増えている」という。
「現在、企業にはガバナンス強化に取り組む流れがあります。そのため『決裁を進めるにあたり売買価格の妥当性を知りたい』というニーズがあるようです。不動産の売却は企業にとって大きな経営判断です。株主からも、なぜこの価格で売却したのか、客観的な根拠はあるのか、問われかねませんからね」
また、現在は不動産を保有するリスクにますます目を向けなければならない時代だ。大規模な自然災害の増加や、環境への関心の高まりなどにより、企業が不動産の所有者責任を問われるケースは増えている。
このように企業は、さまざまなリスクを踏まえた上でCRE戦略を練らなければならない。武藤氏によれば「従来の相談先は不動産の売却価格によって担当部門が変わって困る」「短期的な売買でなく、中長期的な活用も視野に相談できる先を探している」という相談先に関する悩みを抱える企業も少なくないそうだ。
「当社は不動産の価格はもちろん、所在エリアも問わず対応しています。相談先によっては売れやすい不動産だけ売ってしまって、地方などの買い手がつきにくい不動産を手元に残してしまうというケースもあるようですが、当社は売れにくい不動産も含めてポートフォリオ全体の最適化をご提案します。セカンドオピニオンとしても、ぜひお気軽に相談していただければと思います」
※日経MOOK『CRE 社会的価値を創出する企業不動産戦略』(日本経済新聞出版)より転載。
※会社名、所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。